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肥満や糖尿病の人ではFGF21の抗肥満作用が低下 朝食抜き・毎日飲酒・喫煙といった生活スタイルが影響
2021年12月21日

大阪大学は、「朝食をあまり食べない」「毎日飲酒する」「喫煙習慣がある」といった不健康な生活習慣により、抗肥満因子として知られている、線維芽細胞増殖因子(FGF)21の血中濃度が変化することを発見したと発表した。
これまでFGF21は、肥満・加齢などで血中濃度が上昇することは知られていたが、生活習慣との関連についてはは明らかでなかった。生活習慣改善が肥満症の予防につながるメカニズムの一端が明らかになった。
肥満や糖尿病の人ではFGF21の抗肥満作用が低下
「FGF21」はホルモンに近い働きをするホルモン様作用物質で、細胞の増殖に関わる繊維芽細胞増殖因子のひとつ。 FGF21には、膵臓β細胞や脂肪細胞に働きかける抗肥満・抗糖尿病の作用がある。▼インスリン感受性の改善、▼糖代謝の改善、▼脂質代謝の改善、▼エネルギー産生能の向上といった作用をすると考えられている。 FGF21は、2型糖尿病や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などの肥満関連疾患の新しい治療戦略として期待されている。一方、肥満症や2型糖尿病の患者では血清FGF21値が上昇していることも報告されている。この機序として、肥満や2型糖尿病では「FGF21抵抗性」の状態となっており、FGF21の抗肥満作用が低下していると考えられている。 そこで大阪大学の研究グループは、FGF21血中濃度に影響を与える生活習慣について調査を実施。健康診断を受診した基礎疾患のない男性398人を対象とし、身体計測、血液検査、問診による生活習慣調査と血清FGF21値との関連について解析した。
朝食抜き、毎日飲酒、喫煙などの生活習慣により血清FGF21値は変化する

出典:大阪大学、2021年
朝食抜き、毎日飲酒、喫煙などの不健康な習慣で「FGF21抵抗性」に
その結果、血清FGF21値は年齢、肝機能に影響されるだけでなく、朝食摂取頻度、飲酒頻度、喫煙習慣などの生活習慣でも変化することを発見した。朝食を食べる頻度が「週0~2日」、飲酒の頻度が「毎日」と回答した群で、また喫煙者は非喫煙者と比較して血清FGF21値が有意に上昇していた。 血清FGF21値は、朝食の消費頻度(τ=-0.12、p<0.0001)、アルコール消費頻度(τ=0.15、p<0.0001)、毎日のアルコール摂取(τ=0.08、p=0.0237)と、それぞれ有意に負の相関があることが示された。 肥満症や2型糖尿病と同様に、こうした不健康な生活習慣により「FGF21抵抗性」状態となり、FGF21のもつ抗肥満作用が低下する可能性があることが示唆された。
朝食摂取頻度、飲酒頻度、喫煙習慣による血清FGF21値の変化

出典:大阪大学、2021年
研究は、大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターの中西香織講師、瀧原圭子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載された。
「血清FGF21値は、いくつかの要因の影響を受けます。朝食抜き、毎日飲酒、喫煙などといった生活習慣はFGF21の血中濃度を変化させ、FGF21のもつ抗肥満作用にも影響を及ぼしている可能性が示されました。FGF21の機能を評価するには、肥満症や2型糖尿病だけでなく、そうした要因を考慮し、被験者間の状態を一致させることが不可欠です」、と研究グループは述べている。
大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターSerum FGF21 levels are altered by various factors including lifestyle behaviors in male subjects(Scientific Reports 2021年11月19日)
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