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ウォーキングなどの運動は「魔法の薬」 運動を増やして、座りがちの時間は少なく 運動不足を15%減少
2021年12月21日
運動は「マジック ピル(魔法の薬)」とも呼ばれる。糖尿病や肥満、高血圧、脂質異常症などを予防・改善するのに効果的だ。
1日に座ったままの時間が長い人は、死亡リスクが上昇することが明らかになった。座位時間の一部を、運動の時間に置き換えただけで、健康増進をはかれる。
運動が脳の能力を高め、認知症を予防する効果もあることが分かってきた。
座ったままの時間が1日10時間以上は危険
世界保健機関(WHO)は、2030年までに運動不足を15%減少することを目標に、「身体活動に関する世界行動計画2018-2030」を推進している。2020年には「運動・身体活動と座りがちな行動に関するWHOガイドライン」を発表した。 シドニー大学などが、4ヵ国の4万4,000人以上を対象に、活動量計を装着してもらい活動量を測定する研究を行ったところ、座ったままの時間が1日に10時間以上ある人は、死亡リスクが上昇することが明らかになった。 しかし、ウォーキングなどの活発な運動や身体活動を1日に30~40分行うと、座りがちな時間がもたらすリスクを大幅に減らせることが明らかになった。 運動をすることで経済的な恩恵も得られる。運動ガイドラインで推奨されている量の運動をすると、世界の国内総生産(GDP)を2050年までに年間0.15%~0.24%増やせると推定されている。運動不足を解消するために できることはたくさんある
運動が糖尿病リスクを減少 糖尿病大国の中国でも運動を奨励
太極拳・ヨガ・ピラティスも運動になる
運動が認知能力を高める 年齢がいくつになっても運動は効果がある
運動の効果はそれだけでない。運動が認知能力を高め、認知症を予防する効果もあることが分かってきた。 京都大学の研究によると、高齢者が3ヵ月間の運動に取り組むことで、認知機能が向上し、脳の構造(皮質容積や皮質厚)も変わってくる。年齢が高い人でも、また短期間の運動であっても、運動で得られる恩恵は明らかだという。 研究グループは、平均年齢73歳の高齢者50人を体操教室に週1回通う介入群と、通わない待機群にランダムに分け、認知テストの成績や脳の変化にどのような違いがあらわれるかを調べた。 その結果、3ヵ月後に介入群は認知成績が向上し、前頭前野(中前頭溝)の皮質容積が増えている高齢者ほど、認知テストの成績も向上した。一方、運動をしなかった待機群では、認知テストの成績や前頭前野の皮質容積や皮質厚の変化はなく、海馬の容積は減少した。 「高齢の人は、運動をふだんから続けることで、脳や認知機能の変化が促され、日常生活の質を維持できる可能性があります。年齢がいくつになっても、多様な認知機能に関わる前頭前野をもとに戻すのは可能です」と、研究者は述べている。
3ヵ月間という短期間であっても、運動には高齢者の脳や認知機能を高める効果がある
出典:京都大学、2021年
座ったまま過ごす時間を減らして、運動不足を解消
世界保健機関(WHO)がまとめた「運動・身体活動と座りがちな行動に関するWHOガイドライン」では、運動不足を解消するために、次のことを勧めている。
2型糖尿病や高血圧、がんなどの慢性疾患のある人も、ウォーキングなどの運動や身体活動を習慣として行うべきであり、「運動をすることで、それぞれの病状の改善も期待できます」としている。
- ウォーキングなどの中強度の運動を週に150~300分、高強度の運動なら75~150分行うことを目標とする。
- ウォーキングなどの有酸素運動に加えて、筋力トレーニングなど筋肉を強化する運動も週に2日以上行うのが望ましい。
- 上記の運動ができない人も、長時間座ったまま過ごす時間をなるべく減らし、体を動かすことを意識するだけでも、健康への害を減らせる。
- 散歩程度の低強度の身体活動であっても、心肺機能の低下を防ぐのにつながるので、なるべく行うようにする。
- 適度な強度の運動は、心拍数が増え、息がはずむが、会話ができる程度のもの。たとえば、活発なウォーキング、ダンス、庭の掃除など。一方、高強度の運動は、心拍数と呼吸数を大幅に増加させる。たとえば、ジョギング、サイクリング、水泳、重い物を運ぶ、階段を昇降する、テニスをするなど。
- 65歳以上の高齢者にとって、運動には機能的能力を高め、転倒を防ぐ効果を期待できる。中強度の運動を週に3日以上行うと、機能的バランスと筋力の改善を期待できる。
- 妊娠中および出産後の女性も、有酸素運動と筋トレを含む運動や身体活動を習慣として行うことが勧められる。ゆるやかなストレッチも効果がある。
World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour (British Journal of Sports Medicine 2020年11月25日)
Physical exercise reduces risk of developing diabetes, study shows (バーミンガム大学 2018年2月20日)
Increased leisure-time physical activity associated with lower onset of diabetes in 44 828 adults with impaired fasting glucose: a population-based prospective cohort study (British Journal of Sports Medicine 2018年2月20日)
京都大学大学院総合生存学館
Prefrontal Plasticity after a 3-Month Exercise Intervention in Older Adults Relates to Enhanced Cognitive Performance(Cerebral Cortex 2021年5月3日)
運動・身体活動と座りがちな行動に関するWHOガイドライン(世界保健機関)
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