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睡眠の質や不眠症状をオンラインで改善 自宅で指導を受けられる「セルフヘルプ認知行動療法」
2022年02月21日
千葉大学は、不眠の問題を抱える成人は、インターネットを利用し自宅で認知行動療法の指導を受けられる「インターネット・セルフヘルプ認知行動療法」プログラムにより、睡眠を改善できることを明らかにした。
「この療法は、利用者が自分の好きな時間に、好きな場所で治療を受けられるため、面談による認知行動療法に比べ、通院の負担が少なく治療を継続することができるという利点があります。不眠症に悩む患者さんにとって、薬物療法以外の治療の選択肢になると期待しています」と、研究者は述べている。
ネットで不眠改善プログラムを提供
不眠症には、「寝つくのに時間がかかる」「夜中に目が覚めて再び寝つくのに時間がかかる」「予定より朝早く目が覚める」などの症状があり、日本人の5人に1人が睡眠の問題で悩み、10人に1人の成人が不眠症を抱えているとみられている。 そのため日本の成人の20人に1人(5%)は、睡眠薬を服用している。しかし、睡眠薬による治療は必ずしも睡眠の改善につながらず、副作用の問題や、医療費を含む経済損失などが課題になっている。 そこで研究グループは、利用しやすいインターネットによる生活指導として、不眠改善プログラムを提供することが、睡眠の質の向上や医療費の適正化につながると考えた。千葉大学認知行動生理学教室が開発した「セルフヘルプ認知行動療法」プログラムを使い、臨床試験を実施した。自宅にいながら自分で認知行動療法を実践できる
このプログラムの中心となっている認知行動療法とは、自分の「感情(気分)」や「考え方(認知)」や「行動」を見直して、問題の解決を目指す、セラピストと対面で行う精神・心理療法。 いま抱えている問題に対して、悲観的になり過ぎず、かといって楽観的にもなり過ぎず、現実的でしなやかな考え方をすることで、対処していけるよう手助けをするのが認知行動療法の基本的な考え方だ。 不眠症の認知行動療法は、日本では薬物療法が⼗分に奏功しない場合の第2選択の位置づけだが、欧米では治療の第1選択に位置づけられている。 今回の試験で使われた「セルフヘルプ認知行動療法」プログラムは、セラピストがいるクリニックなどに行かなくても、自宅にいながら自分で認知行動療法を実践することを可能としたもの。 参加者は、毎日20分程度、インターネットで睡眠日誌をつけ、思考や行動を見直す認知行動療法(ICBT)、あるいは毎日「3つの良いこと」を書くというエクササイズ(TGT)を4週間実践した。 その結果、何も行わない待機群に比べ、ICBT群、TGT群の方が、睡眠の質や不眠症状に改善がみられた。セルフヘルプ認知行動療法/「3つの良いこと」エクササイズを4週間実施
試験の目的は、不眠の問題を抱えた成人に対し、インターネット認知行動療法(ICBT)あるいは「3つの良いこと」を書くというエクササイズ(TGT)を4週間行うことが、不眠の問題に対して効果があるかどうかを調べること。 ICBTは、患者と治療者が対面で行う通常の認知行動療法セッション(カウンセリング)を模して、オンライン上のコンピュータプログラムで利用者が認知行動療法に取り組むもの。 研究グループは、成人2万1,394人に研究参加を依頼し、うち不眠の問題を抱え適格性を満たした312人を対象に試験を行った。 3群[インターネット認知行動療法(ICBT)群106人、「3つの良いこと」エクササイズ(TGT)群103人、待機(WLC)群103人]に無作為に割り付け、4週間の介入を経た4週、8週時点の睡眠の質や睡眠症状を、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いて分析した。 ICBT群は、睡眠習慣分析(睡眠日誌を記録し睡眠習慣の特徴を分析する)、行動療法(不眠を維持する行動習慣を見直し改善する)、認知療法(極端な認知の歪みを修正する)、睡眠制限法(睡眠の効率を算出し睡眠時間を調整する)の4つのテーマから成る認知行動療法に4週間取り組んだ。 一方、TGT群は、毎晩寝る前に、今日起きた良いことを3つ挙げるとともに、それがなぜ起きたかを書くエクササイズに4週間取り組み、WLC群は何もせず待機した。 4週間の介入を経た270人(ICBT群79人、TGT群88人、WLC群103人)を分析した結果、4週時で、ICBT群、TGT群ともにWLC群より、睡眠の質や不眠症状(PSQI)が有意に改善した。 さらに、8週時では、ICBT群は睡眠の質や不眠症状(PSQI)の有意な改善が維持された。両群において、重篤な有害事象は報告されなかった。
ICBT群、TGT群、WLC群の睡眠の質や睡眠症状(PSQI)の経過
セルフヘルプ認知行動療法/「3つの良いこと」エクササイズにより
睡眠の質や不眠症状(PSQI)が有意に改善
介入期間は0週から4週、経過観察期間は5週から8週
セルフヘルプ認知行動療法/「3つの良いこと」エクササイズにより
睡眠の質や不眠症状(PSQI)が有意に改善
介入期間は0週から4週、経過観察期間は5週から8週
出典:千葉大学病院認知行動療法センター、2022年
好きな時間に好きな場所で治療を受けられる
これらの結果から、不眠の問題を抱えた成人に、ガイドなしのインターネット・セルフヘルプ認知行動療法、および「3つの良いこと」エクササイズを4週間実施することで、睡眠の質や不眠症状に有意な改善を期待できることが明らかになった。 研究は、千葉大学病院認知行動療法センターの清水栄司教授、佐藤大介特任助教、経済産業研究所の関沢洋一上席研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、国際医学誌「Journal of Medical Internet Research」にオンライン掲載された。 「インターネット・セルフヘルプ認知行動療法は、利用者が自分の好きな時間に、好きな場所で治療を受けられるため、面談による認知行動療法に比べ、通院の負担が少なく治療を継続することができるという利点があります。不眠症に悩む患者さんにとって、このプログラムが薬物療法以外の治療の選択肢になると期待しています」と、清水氏はコメントしている。 千葉大学病院認知行動療法センター認知行動療法とは(国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター)
Effectiveness of Unguided Internet-based Cognitive Behavioral Therapy and the Three Good Things Exercise for Insomnia: A Three-arm Randomized Controlled Trial (Journal of Medical Internet Research 2022年2月9日)
Effectiveness of Internet-Delivered Computerized Cognitive Behavioral Therapy for Patients With Insomnia Who Remain Symptomatic Following Pharmacotherapy: Randomized Controlled Exploratory Trial (Journal of Medical Internet Research 2019年4月11日)
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