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知っておきたい「花粉症」対策 花粉症にはこんな症状も こうして予防・治療

 例年、春先に飛び始めるスギ花粉。花粉症の人にとっては、つらいシーズンだ。

 日本気象協会は、2022年の花粉の飛び始めは、早いところでは2月上旬から始まり、飛散量は東海から北海道では前年よりも多くなると予測している。

 花粉症などのアレルギー疾患の治療に、国をあげて取り組む「10ヵ年戦略」も進められている。

ご存知ですか? 花粉症にはこんな症状も

 スギ花粉症の有病率は全国で20%を超えるという報告があり、花粉症は日本人でもっとも多いアレルギー疾患であり、今後も増加するとみられている。

 体内に入った花粉(異物)を排除しようとして、身体が起こすアレルギー反応の一種が花粉症だ。主な症状は、「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」「目のかゆみ」などだ。

 さらに、厚生労働省の研究班の調査では、スギ花粉症では発熱などの全身症状は少ないものの、口の渇き、咽の違和感、皮膚のかゆみなど、鼻や眼以外の症状を訴える人も多いことが分かっている。

 花粉の飛散量が増えたことが、花粉症患者が急増している原因のひとつだが、近年は食生活の変化や腸内細菌の変化、大気汚染、喫煙、ストレスなどの影響も指摘されている。

症状が悪化する前に治療を開始

 ヒトの体では細菌や微生物などから体を守るために抗体という成分が作られている。花粉が体内に入り込むと、体は花粉を異物と認識して免疫機能が働きはじめて「IgE抗体」がつくられる。

 「IgE」は鼻や眼の粘膜にある肥満細胞と結合し、吸い込んだ花粉が粘膜に到達すると反応を起こす。その結果、肥満細胞からヒスタミンなどの炎症を引き起こす物質が放出され、これらの物質が鼻や目の粘膜を刺激してアレルギー反応を引き起こす。

 くしゃみ中枢が刺激されると「くしゃみ」が、分泌腺が刺激されると「鼻水」が、血管が刺激されると「鼻づまり」などの症状が出てくる。

 本来は排除する必要がない花粉に対して身体の防御機能が過剰に反応してしまい、逆に体の負担が生じてしまうのが花粉症だ。花粉症は自然に治ることはまれで、症状が悪化してしまうと治療を行ってもなかなか症状がおさまらないという特徴がある。

花粉症にともなう副鼻腔炎は慢性化しやすい 早めの治療を

 副鼻腔炎とは、鼻の奥にある空洞である副鼻腔に炎症ができた状態のこと。花粉をはじめ、風邪、カビなどが原因で起こる。

 のりのような粘り気のある鼻水が出るのが特徴で、においを感じる細胞がある場所の近くにある副鼻腔を中心に炎症が出るので、しばしば嗅覚障害を起こすこともある。

 予防するためには、花粉を吸いこまないようにする、花粉を家の中に入れない、ストレスをためないよう健康的な身体づくりをするなどが重要となる。花粉症対策は花粉症にともなう副鼻腔炎の予防にもつながる。

 ユーグレナが20~60代の成人を対象に実施した調査によると、花粉対策として行っていることは、「マスクの使用」(78%)、「サングラス・眼鏡をする」(22%)、「部屋で空気清浄機・エアコンの花粉対策機能を使う」(20%)が多かった。

 予防のための習慣としては、「手洗い・うがい」(55%)、「自宅に入る前に衣服をはたく」(22%)、「よく眠る」(19%)、「顔を洗う」(16%)といったことを行っている人が多かった。

 調査について、医師でイシハラクリニック副院長の石原新菜氏は「花粉症の症状をなるべく和らげるには、粘膜に付着する花粉の量をいかに減らすかが重要。アレルギー反応が起こるマスト細胞が皮膚や粘膜に多く分布しているため、花粉症の症状は目や鼻、気道、皮膚に出やすいです。アレルギー症状を防ぐには、マスクや衣服、メガネなどを活用してなるべく皮膚や粘膜に花粉を付着させないこと、付着した花粉をすぐに洗い流すこと、目薬をするようにしましょう」とコメントしている。

花粉症の治療の基本を知って乗り切ろう

 花粉症を治療するために、日常生活で浴びる花粉の量をなるべく少なくする工夫が大切となる。

 「マスクは隙間から花粉が侵入してこないよう、顔にフィットするものをつける」「帰宅したらうがい・手洗い・洗顔を行う」「花粉対策用眼鏡、帽子、マスクを着用する」「衣服はツルツルした素材を選び、帰宅時外で衣服などをはたく」などの対策は効果的だ。

 薬物療法では、少しでも症状が出たらすぐに治療を始める初期療法が有効だ。

 薬には、くしゃみ、鼻水に効果がある「抗ヒスタミン薬」(内服薬)、ヒスタミンなどが放出(遊離)されるのを抑制する「遊離抑制薬」(点眼薬・点鼻薬)、鼻づまりに効果がある「抗ロイコトリエン薬」(内服薬)のほか、「血管収縮薬」(点鼻薬)や「鼻噴霧用ステロイド薬」などがある。薬物治療では、最近は眠気などの副作用の少ないものが出てきている。

 手術には鼻閉を改善する手術、鼻汁を減らす手術、レーザーを用いてアレルギー反応を起こす粘膜を減らす手術がある。また最近では舌下免疫療法なども根本的な治療法として注目されている。

 花粉症の症状のタイプや重症度によって、薬の組み合わせや治療法は変わる。医師に相談し、自分の症状を具体的に伝えられるようにしておくことが大切だ。

アレルギー疾患は増えている 厚労省は10ヵ年戦略を推進

 花粉症などのアレルギー疾患は増えており、いまや国民の2人に1人が罹病している。

 患者数が多く、日常生活に大きな支障を及ぼすにもかかわらず、日本のアレルギー疾患に対する取り組みは遅れている。専門的な知識や技術のある医師が偏在しており、地域間で医療提供体制に差があり、患者が適切な治療を受けられず、重症化する例が多いことが問題になっている。

 そこで厚生労働省は、アレルギー疾患の疫学研究や治療開発、臨床研究を長期的に推進するため、「免疫アレルギー疾患研究10ヵ年戦略」を2019年に発表した。

 10ヵ年戦略には、日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会、日本皮膚科学会、日本眼科学会、日本呼吸器学会、日本耳鼻咽喉科学会、日本免疫学会といった関連学会が連携して協力している。

 アレルギー疾患のある人は、長期にわたり生活の質が低下し、社会的、経済的にも影響を受ける。発症、重症化要因の解明、治療の有効性の評価や薬剤の長期投与の効果や副作用などを、明らかにしていく方針だ。

スギ花粉症の治療に対する満足度は低い 改善が必要

 スギ花粉症などのアレルギー疾患は、長期の疾患管理が必要であることが多いが、治療や生活に対する患者の満足度が低いことが課題になっている。

 スギ花粉症の治療として、抗ヒスタミン薬を利用している患者の満足度は35%で、その効果や眠気に対して不満があるという報告がある。

 治療に対する、アンメットメディカルニーズ(いまだに解決されていない医療に求められるニーズ)があることが明らかになっている。

 その他にも、花粉飛散開始日の正確な予測、合併症を含めた疾患管理、チーム医療の確立なども求められている。

 10ヵ年戦略では、国民に参加してもらい疫学研究を行い、遺伝学的要因・環境要因に関する情報と、患者ニーズの両者を包括的に調査・評価し、そのうえで患者のニーズを充足するために、重要な基礎研究や臨床研究を実施することが目指されている。

 産学官民の連携により、患者のニーズを包括的に収集できるアプリなどのICTツールを開発・活用し、研究成果を社会実装することで、患者満足度の高い医療を提供できるようにすることが考えられている。

花粉症特集(厚生労働省)
「免疫アレルギー疾患研究10ヵ年戦略」について(厚生労働省 2019年1月23日)

[Terahata]
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