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高齢者は6時間以上離床すると、全身の筋肉量が保たれ、摂食嚥下も良好に 離床が要介護高齢者へのアプローチに

 東京医科歯科大学は、65歳以上の要介護高齢者に対する摂食嚥下リハビリテーションとして、離床が有効であることを明らかにした。

 少なくとも4時間、可能であれば6時間以上離床すると、全身の筋肉量が保たれ、摂食嚥下機能が良い傾向にあることがはじめて分かった。

離床時間が長いと高齢者の摂食嚥下は良くなる

 高齢者は、その介護状態に関わらず、4時間離床すると、四肢骨格筋量と摂食嚥下機能が保たれていることが、東京医科歯科大学の研究で明らかになった。要介護高齢者を対象に、離床時間と全身の筋肉量および摂食嚥下機能との関連を調べた。

 さらに6時間離床する高齢者は、四肢骨格筋に加え、体幹の筋肉量も保たれ、常食に近い食事を摂っていた。全身の筋肉量や摂食嚥下機能を保つための、離床時間の目安がはじめて示された。

 研究グループはこれまでも、要介護高齢者へのアプローチの1つとして、離床が摂食嚥下機能と関係することを示している。離床とはベッドから離れて過ごすこと。

 摂食嚥下機能は、口腔周囲の摂食嚥下関連筋群だけでなく、背筋などの体幹の筋肉量や筋力と関連することが知られている。健常高齢者では、摂食嚥下機能を維持するための運動を行い、体幹の筋肉や摂食嚥下関連筋群の機能低下を防ぐことが、嚥下障害の予防と改善に寄与する。

 しかし、日常生活動作(ADL)が低下した高齢者は、身体能力の低下により、摂食嚥下機能を維持するための運動を行うことが困難だ。看護師、リハビリ職、介護職の介助により身体を動かす機会も限られている。そのような高齢者に対するアプローチを考えることは、臨床的に大変重要となる。

要介護高齢者の離床時間と筋肉量の関連を調査

 要介護高齢者の離床時間と全身の筋肉量の関連や、全身の筋肉量および摂食嚥下機能を維持する具体的な離床時間についてはよく分かっていない。

 そこで研究グループは、要介護高齢者の離床時間と全身の筋肉量および摂食嚥下機能の関係を明らかにすることを目的に研究を行った。

 対象者は、首都圏在住で同大学摂食嚥下リハビリテーション科から訪問診療を行った、ADLが自立していない要介護高齢者。年齢、性別、BMI(体格指数)、ADL、併存疾患(CCI)、服薬種類数、離床時間を調査した。

 ADLは要介護認定の基準を参考に、「Group1:介助がなければ歩行や立ち上がりができない人(要介護3相当)」、「Group2:介助があっても歩行や立ち上がりが困難な人(要介護4相当)」、「Group3:ほとんど寝たきりの人(要介護5相当)」に分類した。

 離床時間は、先行研究を参考に、離床時間が0~4時間、4~6時間、6時間以上の3段階とした。「InBodyS10」を用いて、生体インピーダンス法により、四肢骨格筋および体幹の筋肉量を測定し、四肢骨格筋指数(ASMI)と体幹筋指数(TMI)を算出した。

 ASMIは、上肢と下肢の合計の筋肉量を身長の2乗で補正した値で、TMIは、体幹の筋肉量を身長の2乗で補正した値。さらに、摂食嚥下機能を、FOISを用いて評価した。FOISは、「Level.1:経口摂取なし」から「Level.7:正常(制限なく通常の食事ができる状態)」の7段階で評価する方法。

 データの解析は、全身の筋肉量(ASMI、TMI)および摂食嚥下機能(FOIS)について、離床時間別の群間で差があるかどうか、1元配置分散分析およびKruskal-Wallis検定を用いて検討した。

高齢者の全身の筋肉量は、離床により保たれ、摂食嚥下も良くなる

 その結果、離床時間が0~4時間の高齢者に比べ、4時間以上の高齢者は、四肢骨格筋量と摂食嚥下機能が保たれていた。6時間以上の高齢者は、四肢骨格筋に加えて、体幹の筋肉量が多く、常食に近い食事を摂っていた。

 要介護高齢者の全身の筋肉量は、離床により保たれ、摂食嚥下機能は、離床時間と体幹の筋肉量と関連することが分かった。

 重力負荷を除いたモデルマウスの研究では、特別な運動をさせなくても、自分の体重を支えるという負荷を毎日、1日複数回与えると、筋肉量およびタイプ1筋線維の割合が維持されることが報告されている。タイプ1筋線維は、筋線維の一種で、抗重力筋に高い割合で含まれ、持久力に優れている。

 つまり、筋肉を働かせて自分の体重を支えることにより、廃用による筋委縮を防ぐことが可能になることが示された。ヒトでも同様に、離床して車椅子などに座り、重力に抵抗する時間を設けたことで、全身の筋肉量が維持された可能性がある。

 また、食事の形態が常食に近づくにつれ、咀嚼が必要だが、咀嚼するためには覚醒と体幹機能が重要となる。6時間以上の離床で、覚醒状態が安定しやすいことが分かっており、6時間以上の離床で体幹の筋肉量が保たれていることから、離床時間によって摂食嚥下機能に差が生じたと考えられる。

要介護高齢者は、少なくとも4時間、可能であれば6時間以上の離床を

 これまでに報告されている、離床時間と全身の筋肉量および摂食嚥下機能についての研究は、ADLが自立した高齢者を対象とした研究が多数だった。ADLが自立していない要介護高齢者で、離床時間が異なる群を比較し、全身の筋肉量や摂食嚥下機能との関連を調査したのは今回の研究がはじめて。

 「要介護高齢者の摂食嚥下リハビリテーションとして離床を勧める際に、これまでは科学的根拠をもって離床時間の目安を伝えることができませんでした。本研究で、少なくとも4時間、可能であれば6時間以上離床すると全身の筋肉量が保たれ、摂食嚥下機能が良い傾向にあることが示されました」と、研究グループでは述べている。

 「この知見により、要介護高齢者に対して訓練指導の代わりに、日常生活の中に離床を取り入れる指導をする際、具体的な目標を設定することができるようになります」。

 「たとえば、離床時間が0~4時間の人は、車椅子上で食事を摂ることを目標に、4~6時間の人は食事などの生活動作以外の余暇時間(テレビを見るなど)も、車椅子上で過ごすことを目標に、環境を整えると良いでしょう。今後は、要介護高齢者がより効果的に体幹の機能を維持する方法の検討や、離床時間と摂食嚥下機能の因果関係を検証する予定です」としている。

 研究は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野の戸原玄教授、中川量晴准教授、石井美紀医員の研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Gerontology」にオンライン公開された。

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野
Time Spent Away from Bed to Maintain Swallowing Function in Older Adults (Gerontology 2022年4月13日)
[Terahata]

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