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梅雨が明けた後の暑さにご注意 「熱中症」リスクが上昇 気候変動で梅雨明けにいきなり猛暑に

 梅雨明け後1ヵ月間ほどは、気温が高いほど熱中症のリスクが高くなり、とくに高齢者は心筋梗塞などの心血管疾患による救急搬送のリスクが上昇することが、岡山大学の調査で明らかになった。

 梅雨明けの期間は、まだ暑さに体が慣れていないことや、気候変動で梅雨明けにいきなり猛暑になる日が増えていることも影響しているとみられる。

梅雨明け1ヵ月は熱中症のリスクが高い

 とくに高齢者は、梅雨明け後1ヵ月間は、暑さにより心血管疾患にかかりやすいことが、岡山大学の調査で明らかになった。梅雨明けの期間は、まだ暑さに体が慣れていないことが影響しているとみられる。

 心筋梗塞や狭心症などの心血管疾患は、暑さによってもリスクが上昇することが報告されている。しかし、梅雨が明けた後の暑さが、高齢者の心血管疾患に及ぼす時間的影響についてはよく分かっていない。

 そこで研究グループは、岡山市の救急搬送データと気象庁のデータを用いて、気温上昇と心血管救急搬送の関連を調査した。

 対象となったのは、2012年~2019年の梅雨入りから梅雨明け3ヵ月までのあいだに、心血管疾患で救急搬送された65歳以上の高齢者6,527人。

 梅雨時、梅雨明け1ヵ月後、2ヵ月後、3ヵ月後でそれぞれ評価したところ、気温と心血管救急の関連は、梅雨明け1ヵ月後にもっとも高くなった。

 結果に影響を与える条件として、「相対湿度」「気圧」「PM2.5濃度」を調整して、線形に分析したところ、気温が1℃上昇するごとに、熱中症のリスクは34%高くなった。

 「水分補給の促進、断熱住宅やエアコンなどの予防措置を行い、周囲の人々によって高齢者が暑さから身を守り、安全に過ごせるよう社会全体でサポートすることが大切です」と、研究者は述べている。

 研究は、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)の藤本竜平氏(津山中央病院 循環器内科医長)、鈴木越治研究准教授、中村一文准教授、内藤宏道准教授、中尾篤典教授、伊藤浩教授、頼藤貴志教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国心臓協会が発行する「Journal of the American Heart Association (JAHA)」に掲載された。

出典:岡山大学、2023年

熱中症を予防するための4つの対策

 日本救急医学会によると、高齢者や持病のある人は、自律神経の機能が低下していることがあり、体温調節機能が弱い場合があり、とくに熱中症に対し注意が必要になる。

 とくに高齢者は、全身に占める水分の割合が低く、容易に脱水になりやすい。脱水になると発汗の機能が低下し、体温調整が難しくなる。

 小児もまた、汗腺の発達や自律神経が未熟なことがあり、また身長が低いため、地面からの輻射熱の影響を受けやすいため、熱中症に注意する必要がある。

 近年、猛暑日が増えており、熱中症に対し注意が必要になっている。日本救急医学会によると、熱中症を予防するために必要なことは、次の4点だ。

熱中症を予防するための4つの対策

(1) 暑さ指数を意識した生活を心がけ、必要に応じて運動や作業を中止する適切な判断が必要。

(2) 水分をこまめにとることも大切。おかしいなと思ったら、すぐに涼しい場所に誘導する。

(3) 適切な重症度判断と応急処置が重要。見守りつつ、症状に改善がみられなければ、すぐに医療機関へ。

(4) 周囲にいる者同士が、お互いに注意をし合うことも大切。

梅雨後の極端な暑さは心血管疾患のリスクに影響する

 近年、国際的に問題視されている気候変動と地球温暖化により、世界中で異常気象が発生し、各国が健康を守るための気候変動対策を策定している。

 東アジアでは梅雨明け後に、張り出してくる太平洋高気圧の影響により、連日の猛暑日が記録され、高齢者の健康への影響が懸念されている。

 心血管疾患は日本人でも死因の第2位になっているが、東アジア特有の梅雨明け後の異常な暑さが、高齢者の心血管による救急搬送にも影響をもたらしていると考えられる。

 岡山大学の研究グループによる今回の研究では、気温と心血管疾患の関連は、梅雨明け1ヵ月後にもっとも高くなることが分かった。

 時間ごとの相対湿度、気圧、PM2.5濃度を調整したところ、全体の心血管救急搬送リスクは34%高くなった(調整オッズ比1.34、95%信頼区間 1.29~1.39)。搬送リスクを疾患別にみると、心不全が37%、虚血性心疾患が37%、不整脈が44%、それぞれ上昇した。

 さらに、その期間内で発症前の時間ごとの影響をみたところ、発症1時間前が33%(調整オッズ比1.33、95%信頼区間 1.28〜1.39)、より長い期間では1日前が40%(調整オッズ比1.40、95%信頼区間 1.34~1.46)、それぞれリスクが高く、さらに、気温が高いほどリスクは上昇することも明らかになった。

 「梅雨後の極端な暑さは、心血管疾患に影響を及ぼします。とくに高齢者を健康面で支えるため、梅雨明け1ヵ月間は、できる限り外出を控えたり、水分摂取をこまめに行い、涼しい室内で過ごすなど、環境整備を重点的に行うことが、心血管救急の予防につながります。救急搬送データを提供いただいた岡山市救急課の方々に改めて感謝申し上げます」と、藤本氏は述べている。

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 疫学・衛生学分野
Heat Exposure Following the Rainy Season Is Associated With an Increased Risk of Cardiovascular Emergency Among the Elderly in Japan (Journal of the American Heart Association 2023年3月9日)

熱中症および低体温症に関する委員会 (一般社団法人 日本緊急医学会)
[Terahata]
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