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アルコールを飲み過ぎている男性は腎臓病のリスクが上昇 特定健診受診者30万人強を調査 適度な飲酒だと予防効果も

 大量の飲酒は腎機能低下のリスクを高めることが、特定健診受診者30万人強を対象にしたコホート研究で明らかになった。

 1日あたり「純アルコール換算で60g(ビールロング缶3本、日本酒3合に相当)以上」を飲んでいる男性は、腎機能が低下していた。

 一方、適度の飲酒であると、腎機能低下を予防する可能性も示された。純アルコールで約20g(日本酒1合相当)の適度の飲酒をしている男性は、腎機能の低下のリスクはむしろ低かった。

 「適度な飲酒を推奨することによって、さまざまな生活習慣病のみならず、腎臓病の予防、さらには増加の一途を辿る透析患者数の減少につながります」と、研究者は述べている。

お酒を飲み過ぎている男性は腎機能が低下

 大阪大学は、1日あたり「純アルコール換算で60g(ビールロング缶3本、日本酒3合に相当)以上」の大量飲酒は、男性の腎機能低下のリスク因子となることを、特定健診受診者30万人強を対象にしたコホート研究で明らかにした。

 研究グループは今回、18都道府県の40~74歳の特定健診受診者30万4,929人の腎機能(推算糸球体濾過量)の変遷を中央値2.9年間追跡した。

 40~74歳の男性・特定健診受診者12万5698人を中央値2.9年間追跡した結果、「ときどき飲酒」している男性に比べて、「1日あたり純アルコール約60g以上飲酒」している男性と、「ほとんど飲まない」男性は、1年あたりの腎機能(糸球体濾過量、mL/分/1.73m²)の低下速度が速いことが明らかになった。30%以上の腎機能低下のリスクでも同様の傾向がみられた。一方、女性では明らかな関連はみられなかった。

 日本人の「適度な飲酒」は、男性で純アルコール量が1日に20~25gぐらいまでだと考えられている。

 純アルコール量20gは、▼ビール(ロング缶) 1本 (500mL)、▼チューハイ(レギュラー缶) 1本 (350mL)、▼日本酒 1合(180mL)、▼焼酎 1杯 (100mL)、▼ワイン 2杯 (120mL)、▼ウイスキー 2杯 (60mL)に相当する。

 なお、女性は男性に比べて、アルコール分解速度が遅いことが多いので、女性は男性の半分から3分の2くらいの量が適当とされている。

 これまで1日あたりビールロング缶1本、日本酒1合相当(各アルコール約20g)の飲酒者は、腎機能の低下リスクが低いことが報告されているが、大量の飲酒が腎機能に及ぼす影響については、これまで小規模な研究の報告しかなく、一定の見解が得られていなかった。今回の研究は、大量の飲酒が腎機能低下のリスクとなることをはじめて明らかにした大規模疫学調査となる。

 研究は、大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターの山本陵平教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載された。

糖尿病は透析の原因となる疾患でもっとも多い

 慢性腎臓病は、腎臓の働きが低下した状態や、尿の中にタンパクが漏れ出る状態(タンパク尿)の総称で、日本には1,000万人を超える慢性腎臓病の有病者がいるとみられている。

 腎臓は、老廃物をろ過して、尿として体外に排出している。腎臓病の原因となる疾患でもっとも多いのは糖尿病だ。近年では、糖尿病によって起こる糖尿病腎症が圧倒的に多い

 腎臓病になっても、腎臓の働きがかなり低下するまで自覚症状がないことが多く、気付かないうちに進行し、進行すると腎臓が機能しなくなる。

 そうなると、機能しなくなった腎臓に代わって、人工的に血液中の余分な水分や老廃物を取り除き、血液をきれいにする透析療法が必要になる。

 腎臓病は、「脳卒中」や「心筋梗塞」などの原因にもなり、「認知症」のリスクを高めることも分かってきた。

 だるさ・頭痛・吐き気・むくみなどの自覚症状があらわれると、腎臓病がかなり進行してしまっていることが多い。そうならないうちに、検査を定期的に受け、腎臓病を早期発見し、異常がみつかったら予防・治療をはじめることが重要となる。

適度な飲酒をしている男性は腎機能の低下はむしろ少ない

 大阪大学の今回の研究では、1日あたり「純アルコール量60g程度(日本酒3合相当)」以上の大量の飲酒が、男性での腎機能低下のリスクとなることが示された。

 一方、ビールロング缶1本、日本酒1合相当(各純アルコール約20g)の適度の飲酒をしていると、むしろ腎機能の低下を予防につながる可能性も示された。

 ただし、アルコールを少しでも飲み過ぎると、この効果は打ち消されてしまう。アルコールを毎日20gを超えて飲み過ぎている人では、腎機能は低下し、さらには30%以上の腎機能低下のリスクも上昇した。

 「今回の研究で、特定健診受診者約30万人の大規模疫学研究のデータを活用することで、大量の飲酒が腎機能に及ぼす影響を明らかにしました。アルコールの飲み過ぎを抑制し、適度な飲酒を推奨することによって、腎臓病の予防、さらには増加の一途を辿る透析患者数の抑制に繋がることが期待されます」と、研究者は述べている。

アルコールを大量に飲む習慣は腎機能の低下につながる

出典:大阪大学、2023年

大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター
Alcohol Consumption and a Decline in Glomerular Filtration Rate: The Japan Specific Health Checkups Study (Nutrients 2023年3月22日)
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