ニュース
医療費の6割を占める高額医療費 メタボ予防の重要性が浮き彫りに 高血圧・糖尿病・脂質異常症を併発したメタボが32%
2023年10月23日

協会けんぽの高額医療費集団169万人超の健診・レセプトデータを解析した調査で、医療費が上位10%の集団では、95%超が、2つ以上の慢性疾患が併存する「マルチモビディティ」であることが明らかになった。
高血圧・糖尿病・脂質異常症を同時に併発したメタボリックシンドロームが、全体の31.8%を占めており、医療費でも28.6%を占め、腎臓病がもっとも高額であることも分かった。
「患者数・医療費ともに多いメタボリックシンドロームの重症化を予防することの重要性があらためて示唆されました」と、研究者は述べている。
協会けんぽの高額医療費集団169万人超のデータを解析
日本の医療保険制度では、被保険者と事業者が折半して保険料を支払っているが、近年では医療費が年々増加しており、各医療保険者の財政を圧迫している状況にある。 そのため、医療保険制度を持続させるために、医療費が高額となる疾病を予防する対策が必要となっている。 医療費を増加させる原因のひとつとして、個人に2つ以上の慢性疾患が併存している状態を示す「マルチモビディティ」が近年注目されている。 そこで、慶應義塾大学・東京医科歯科大学・川崎医科大学・全国健康保険協会(協会けんぽ)は、日本の就労世代の高額医療費集団に特徴的なマルチモビディティのパターンの解明に取り組んだ。 協会けんぽは、約4,000万人が加入している日本最大の医療保険者で、加入者の匿名化された健診・レセプトデータを分析できる環境を、外部有識者に提供する委託研究事業を、2020年度より実施している。 研究グループは今回、協会けんぽの18歳以上65歳未満の高額医療費集団169万人超のデータにもとづき、マルチモビディティのパターンを明らかにした。協会けんぽの全国規模のデータを用いた解析は今回がはじめてとなる。高血圧・糖尿病・脂質異常症を同時に併発したメタボが3分の1近くを占める

7種類のメタボリックシンドロームのパターンでの各疾病の有病率
高血圧・糖尿病・脂質異常症を同時に併発した広義のメタボリックシンドロームが、全集団の31.8%を占める

出典:慶應義塾大学、2023年
患者数・医療費ともに多いメタボの重症化予防の重要性が浮き彫りに
研究グループは今回、2015年度に協会けんぽに加入していた18歳以上65歳未満の被保険者1,698万9,029人のうち、医療費が上位10%にあたる169万8,902人(高額医療費集団:医療費全体の約6割を占める)を解析対象とした。 高額医療費集団に特徴的なマルチモビディティのパターンの検討には、潜在クラス分析という手法を用い、出現頻度の高い疾病コード(68病名)にもとづき、30パターンに分類した。 その結果、医療費が上位10%の集団では、95.6%の人がマルチモビディティに該当していた。 マルチモビディティ・パターン別の年間総医療費(円)と1人当たりの年間医療費(円)を確認。 その結果、糖尿病・高血圧・脂質異常症を合併した広義のメタボリックシンドロームを含むパターンは7種類に分類され、それらの合計医療費は全体の約3割を占めた。1人当たりの医療費でみると、腎臓病のパターンがもっとも高額だった。 性別・年代別に30パターンの内訳を確認したところ、男性では、30代でメタボリックシンドロームのパターンに分類される者の割合が20%を超え、その割合は50代以降では半数以上に上昇した。 女性では、40代までは周産期の病名や月経前症候群などを中心とする女性特有のパターンに分類される人が半数近くを占めたが、50代以降ではメタボリックシンドロームや運動器疾患のパターンに分類される人が増えた。
性別・年代別にみたマルチモビディティ・パターンの内訳
男性では、メタボリックシンドロームのパターンに分類される割合が高く、50代以降では半数以上に上昇する
女性でも、50代以降ではメタボリックシンドロームや運動器疾患のパターンに分類される人が増える
女性でも、50代以降ではメタボリックシンドロームや運動器疾患のパターンに分類される人が増える

出典:慶應義塾大学、2023年
「今回解析に用いたレセプト病名は必ずしも実際の病態を反映しないケースもあるため、結果の解釈については注意が必要ですが、将来的な医療費を抑制する観点では就労世代であっても、マルチモビディティの予防が重要であることが示唆されました」と、研究者は述べている。
「本研究成果は、複雑な病態であるマルチモビディティを理解する一助となり、今後の健康施策やプライマリ・ケアにおける治療方針を検討する上で役立つ知見となります」としている。
慶應義塾大学スポーツ医学研究センター全国健康保険協会 (協会けんぽ)
Multimorbidity patterns in the working age population with the top 10% medical cost from exhaustive insurance claims data of Japan Health Insurance Association (PLOS ONE 2023年9月28日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月25日
- ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
- 2025年02月25日
- 緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月17日
- 肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
- 2025年02月17日
- 中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる
- 2025年02月17日
- 高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」