急増する「梅毒」 母子感染のリスクがある妊娠中の症例を調査 前年の1.4倍に増加(国立感染症研究所)

国立感染症研究所はこのほど、妊娠中の女性による「梅毒」の届出状況について、2022年から23年の報告をまとめ、公表した。
梅毒は若い人を中心に感染が増えているのに伴い、妊娠中の女性の症例も増加。母子感染のリスクがあることから、その実態を取りまとめたもの。
国立感染症研究所のHPよると、梅毒は梅毒トレポネ−マによる細菌性の性感染症。適切な抗菌薬治療が必要で、妊娠中の女性が感染した場合は流産や死産、先天梅毒を起こす可能性がある。
日本では1960年代後半に大規模な流行があったが、その後は減少し、2000年代には500〜900例程度になっていた。
しかし2011年ごろから、主に異性間の性的接触を感染源として増加傾向となり、2019・2020年にいったん減少したものの、2021年以降は再度、増加。2022年の梅毒年間総症例数は、感染症法施行以降初めて1万例を上回り、爆発的に増えている。
そのような中、妊娠した女性の症例数は2021年に187例だったものが、22年には267例、23年には383例と前年比1.4倍程度で増加。2023年は女性症例に占める妊娠症例の割合が7.2%となり、数と割合のいずれも増えた。

妊娠症例が最も多かった都道府県は東京都で2022年は62例、2023年は76例。次いで多かったのが大阪府で、2022年は36例、2023年は64例だった。
2022年、23年ともに、妊娠症例数が前年を上回っていた都道府県は25に上り、全国的な増加が認められている。
一方、女性の人口100万人あたりの妊娠症例数は、2022年については沖縄県が9.4、宮崎県が9.0、東京都が8.7。2023年については大阪府が14.0、宮崎県が12.6、東京都が10.6という順に高かった。また年齢別では、20代が妊娠症例の約7割を占めている。
妊娠初期に適切な治療を受ければ胎児への感染リスクを下げられるが、梅毒の診断を受けたときの妊娠週数が中期以降であった症例の割合は、2022年以降減少したものの、依然として4割を超えている。
日本では、妊娠初期の妊婦健診で梅毒のスクリーニング検査が実施され、早期の発見につなげようとしている。しかし妊婦健診を受けない妊婦もいることから、別の機会で妊娠初期に検査を受けられる機会を提供することも重要だと考えられている。
母子感染による先天梅毒は2019年から2022年には年間20例前後の報告だったが、23年には37例に急増している。
また妊娠している女性で梅毒と診断された後、流産(2022年3例・2023年2例)や死産(同11例・9例)、人工妊娠中絶(同43例・28例)に至ったケースが報告されている。しかし感染症発生動向調査では届出が義務化されていないことから、正確に把握できていない可能性がある。また梅毒との関連も定かではない。
厚生労働省も梅毒の感染拡大をふまえ、啓発意識を高めるポスターやリーフレットを配布。先天梅毒について説明し、検査を受けるため妊婦健診の受診を呼びかけるパターンも用意している。ポスターなどはHPからもダウンロードできる。



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