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魚のEPAが心筋細胞の機能を正常化 高脂肪食による酸化ストレスを除去 不整脈を食事で予防
2024年09月09日
近畿大学・大分大学・徳島大学の研究グループは、魚油に豊富に含まれる多価不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)が、心筋細胞の機能を正常化させることを発見した。
EPAには、高脂肪食などに含まれる飽和脂肪酸により心筋細胞に生じた酸化ストレスを除去する作用があることを明らかにした。EPAは、心筋の電気活動をになう因子の発現を正常化させることも分かった。
「研究成果は、高脂肪食の過剰摂取などにより誘発される不整脈を、食事により予防する方法の開発につながると期待されます」としている。
魚油に含まれる不飽和脂肪酸が循環器機能を改善
肉、乳製品、卵黄、パーム油などに含まれる飽和脂肪酸は、摂取量が多いほど、心不全や脳梗塞などの循環器疾患による突然死のリスクが高くなることが知られている。 循環器疾患を引き起こす要因として、心房が規則的に収縮できずに細かく震えることで脈が不規則になる「心房細動」が挙げられる。 心房細動は、年間に約100万人が発症し、日本ではもっとも患者数が多い不整脈のひとつであり、予防法の確立が急務となっている。 一方、魚油に含まれる不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)は、これまでに血管機能改善作用と抗血小板作用により循環器機能を改善し、心房細動などの不整脈を予防することが報告されている。 EPAは、市販のサプリメントとして手軽に購入することができるが、心筋細胞への直接作用やその機序については十分には解明されていなかった。 厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、EPAの適正な摂取量は提示されておらず、多価不飽和脂肪酸として1日に摂取する「目安量」のみが示されている。 EPAの適正量を提示するために、これまで経験的に得られていた有効性を、科学的根拠にもとづき解明する必要がある。高脂肪の食事をしている人の心筋細胞をEPAが保護
そこで研究グループは、マウスの心臓から心筋細胞を取り出し、心房細動が誘発される際と同程度の飽和脂肪酸を添加することで、心房細動患者の心房筋でみられる現象と類似した状態を再現する実験を行った。 その培養細胞にEPAを添加したところ、飽和脂肪酸により生じる酸化ストレスを除去し、心筋細胞の拍動を正常化させることが分かった。またEPAは、細胞内の心筋の電気活動の制御に関わる因子の発現を、遺伝子・タンパク質ともに正常化させることも示された。 「研究の成果から、飽和脂肪酸とEPAの同時摂取は、高脂肪食など飽和脂肪酸を過剰に含む食事の摂取により生じた異常を正常化し、心筋細胞に対し保護的な作用を示す可能性が示唆されました」と、研究グループでは述べている。 「これまで不整脈をコントロールする技術や薬剤はありましたが、不整脈を予防する方法は確立されておらず、本研究成果は、食事により不整脈を予防する方法の開発につながると期待されます」としている。 栄養素の作用や疾患の一次予防のための研究は、結果を得るまでに長い時間を要するが、今回の研究のように機能性をもつ栄養素の作用についての基礎研究は、将来的に日々の食事や生活習慣に無理なく取り入れられる栄養介入方法の創出につながる。 「健康寿命の延伸のためには、食事から病気にかかりにくい臓器環境を構築し、栄養素の組み合わせ摂取方法を確立させる必要があるため、これからも食品素材による疾患の一次予防の研究を続けていきたいと思います」と、研究者は述べている。 研究は、近畿大学農学部食品栄養学科の森島真幸准教授、農学研究科の堀井鴻佑氏、大分大学の小野克重名誉教授、徳島大学先端研究推進センターの堀川一樹教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Molecular Sciences」に掲載された。
EPAは遊離脂肪酸受容体(FFAR4)を介する経路で、細胞内Ca2+濃度の制御に関わるL型Ca2+チャネルの発現を正常化させる
出典:近畿大学、2024年
近畿大学農学部食品栄養学科Eicosapentaenoic Acid Rescues Cav1.2-L-Type Ca2+ Channel Decline Caused by Saturated Fatty Acids via Both Free Fatty Acid Receptor 4-Dependent and -Independent Pathways in Cardiomyocytes (International Journal of Molecular Sciences 2024年7月10日)
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