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健診で脂質異常を指摘されても医療機関を受診しない人の特徴は? ふだん医療機関と接点がない人が未受診の可能性 筑波大学
2024年10月21日
筑波大学は、健診で脂質異常を指摘された人は、その後の医療機関の受診率が18.1%と非常に低い現状を、茨城県の国民健康保険の加入者の特定健診・医療保険レセプトデータの解析により明らかにした。
LDLコレステロールの異常値が比較的軽度だった人は、受診率が15.7%とさらに低かった。「自覚症状がない」「健診で他の異常を指摘されなかった」「健診前に医療機関の受診や薬の処方がなかった」といった人が受診率は低かった。
「ふだん医療機関と接点があまりない人や、他の健診異常がない人が未受診になっている可能性があります。たとえば健診結果を送る際に、居住地の近隣で受診できる医療機関のリストも案内するなどの工夫が考えられます」と、研究者は指摘している。
健診で異常を指摘されても医療機関を受診する人は15〜20%
脂質異常症(とくに悪玉のLDLコレステロールの高値)を放置していると、心筋梗塞、脳梗塞、認知症などのリスクが高まる。そのため、健診で異常を指摘された場合は、医療機関を受診し対処し、必要な治療を受けることが重要になるが、日本の企業の健康保険加入者を対象とした報告では、健診で脂質異常を指摘された人のうち、半年以内に医療機関を受診した人は15〜20%程度にとどまる。 健診で異常を指摘された後の受診率の向上は課題となっているが、どのような人が、健診で指摘されても受診せずに放置しやすいのか、その特徴は明らかになっていない。 そこで研究グループは、茨城県の国民健康保険加入者のうち、特定健診と医療保険レセプトのデータから、特定健診で脂質異常を指摘された人の追跡データを解析し、健診後半年以内に脂質異常症に関して医療機関を受診した人の割合を算出し、医療機関を受診しない集団の特徴を明らかにした。 その結果、脂質異常症について、健診後半年以内に医療機関を受診していた人の割合はわずか18.1%だった。 医療機関を受診していない人の特徴として、▼若年、▼男性、▼飲酒習慣がときどきある、▼公共施設で健診を受けた、▼自覚症状がなかった、▼健診で他の異常を指摘されなかった、▼健診前に医療機関の受診や薬の処方がなかった――などを挙げている。 また、LDLコレステロールの異常値の程度別にみると、異常が比較的軽度だった人(LDLコレステロール値が140〜160mg/dL)は、受診率が15.7%とさらに低かった。さらに、異常値の度合いが大きかった人(180mg/dL以上)は、受診率が23.6%とやや向上したものの、やはり8割近くの人は受診していないことも分かった。 関連情報どんな人が医療機関を受診しにくいのか特徴を明らかに
研究は、筑波大学医学医療系/ヘルスサービス開発研究センターの田宮菜奈子教授らによるもの。研究成果は、「JMA Journal」に掲載された。 医療機関未受診者について、これまで糖尿病や高血圧を対象とした研究はあったが、脂質異常については検討されていなかった。 「受診率向上に向けた取り組みでは、どのような人々が医療機関を受診しにくいのか、その特徴を明らかにすることが重要になります。本研究で明らかになった未受診の可能性が高い人の特徴は、健診を担う市町村などの現場において受診勧奨方法を検討する際の参考となることが期待されます」と、研究者は述べている。 「たとえば、本研究で未受診の可能性が高いと明らかになった"健診前に医療機関を受診していなかった人"や、"健診を(医療機関ではなく)公共施設で受けた人"は、ふだん医療機関と接点があまりない可能性があります。そのため、健診結果を送る際に、居住地の近隣で受診できる医療機関のリストも案内するなどの工夫が考えられます」。 「今後は、実際にどのように受診勧奨の方法を工夫すれば医療機関の未受診を減らすことができ、さらには心筋梗塞、脳梗塞、認知症などを発症する人を減らせるかという点について、研究を進めていく必要があります」としている。特定健診を受けた40〜74歳の20万人超を調査
研究グループは今回、茨城県の国民健康保険の加入者の特定健診・医療保険レセプトデータを使用し、健診で脂質異常を指摘されたにもかかわらず医療機関を受診しない集団の特徴を解析した。 2018年度に特定健診を受けた40〜74歳の20万2,369人のうち、脂質異常の受診勧奨基準である[LDLコレステロール≧140mg/dL、中性脂肪≧300mg/dL、HDLコレステロール≦34mg/dLのいずれか]を満たした3万3,503人を解析の対象にした。健診前からすでに脂質異常症の治療や検査を受けていた人を除いた。 このうち、180日以内に脂質異常症について医療機関を受診した人の割合は18.1%(6,052人)だった、 また、高LDLコレステロール血症を指摘された3万1,084人について、異常値の程度別に医療機関を受診した割合をみたところ、LDLコレステロール値が140~160mg/dLの群で15.7%、160~180mg/dLの群で18.6%、180mg/dL以上の群で23.6%であり、異常の程度が大きいほど受診しておらず、もっとも異常の程度が大きい180md/dL以上の群でも約8割は受診していないことが明らかになった。 次に、医療機関の受診をアウトカムとした多変量ロジスティック回帰分析を用いて、医療機関の未受診に関連する要因を分析した。説明変数として、年齢、性別、飲酒頻度、喫煙の有無、健診場所(公共施設または医療機関)、自覚症状の有無、BMI、脂質以外の健診異常(血圧、血糖値、肝機能、尿タンパク、尿糖)の有無、前年度の健診結果(脂質異常あり、なし、健診受診なし)、健診前1年間の医療機関の受診頻度、薬の処方の有無(降圧薬、血糖降下薬、尿酸降下薬、抗うつ薬)、脂質異常の種類と程度、居住市町村の医療機関数を用いた。 筑波大学 医学医療系 ヘルスサービス開発研究センターFactors associated with non-attendance at a follow-up visit for dyslipidemia identified at health checkups: a retrospective cohort study in a Japanese prefecture (JMA Journal 2024年10月15日)
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