ニュース

通勤時のウォーキングが肥満や高血圧のリスクを減少 「アクティブ通勤」は運動不足の人に大きなプラス効果

 徒歩や自転車で通勤している人は、車を使い通勤している人に比べて、中年期の体脂肪率と体格指数(BMI)が低く、肥満が少ないことが明らかになっている。

 歩いて通勤している人は、糖尿病のリスクが35%低いことも分かった。

 「アクティブ通勤によって身体活動を増やすことは、取り組みやすく続けやすいので、運動不足を気にしている人の身体活動量を増やすための、重要な戦略になります」と、専門家は指摘している。

徒歩や自転車で通勤している人は体脂肪が少なくBMIが低い

 徒歩や自転車で通勤している人は、車を使い通勤している人に比べて、中年期の体脂肪率と体格指数(BMI)が低く、肥満が少ないことが、英国の15万人以上を対象とした大規模な調査でも明らかになっている。

 たとえば、自転車を使い通勤している男性は、自動車を使い通勤している男性に比べ、体重が平均して5kg少なく、BMIにも1.71の差があり、肥満が少ないことが示された。女性でも、体重は4.4kg少なく、BMIは1.65の差があった。

 徒歩で通勤している人も、BMIは男性で0.98、女性で0.80の差がそれぞれあり、とくに体脂肪率の減少が大きいことが分かった。

 「ウォーキングや公共交通機関を利用した移動にともなう身体活動は効果が高いことが示されました」と、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院で人口健康学を研究しているエレン フリント氏は言う。

 「英国のイングランドとウェールズでは、通勤者の数は2,370万人に上り、うち67%が自動車を利用して通勤しています。そのため運動不足は深刻で、健康障害や早期死亡の主な原因のひとつになっています」。

 「とくに肥満が深刻化する中年期に、アクティブな通勤や公共交通機関の利用を奨励することは、肥満を予防し対策するための重要な政策になる可能性があります」としている。

 研究グループは、英国の40~69歳の成人50万人を対象とした大規模な研究である「UKバイオバンク」に参加した15万人以上のデータを調査した。研究成果は、「ランセット 糖尿病・内分泌学」に発表された。

歩いて通勤している人は糖尿病や高血圧のリスクも減少

 歩いて通勤している人は、車を使い通勤している人に比べて、2型糖尿病のリスクが35%低いことは、インド在住の3,902人を対象とした調査でも明らかになっている。

 徒歩・自転車・公共交通機関を利用している人は、自動車やタクシーを利用することが多い人に比べ、高血圧のリスクも49%低いことも分かった。

 糖尿病・高血圧・肥満・過体重はすべて、世界中で最大の死因となっている心臓・循環器疾患の主な危険因子だ。

 研究は、英国のインペリアル カレッジ ロンドンが発表したもの。「ウォーキングや自転車、公共交通機関の利用による通勤を、日常生活に運動や身体活動を取り入れる絶好の機会としてお勧めします」と、同大学公衆衛生学部のアンソニー ラバティ氏は述べている。

アクティブ通勤のプラス効果は大きい 取り組みやすく続けやすい

 余暇時間に行うレクリエーションやスポーツなどの身体活動は、健康に良いことが実証されているものの、毎日の仕事や家事、育児などで忙しく、魅力をあまり感じないという人も多い。

 その点で通勤は、多くの労働者が毎日行う必要のある活動であり、アクティブ通勤のプラス効果は重要だ。

 研究について、ノルウェーのソグンダル フィヨルド大学のラース ボー アンダーセン氏は、「アクティブ通勤によって身体活動を増やすことは、取り組みやすく続けやすいので、運動ガイドラインで推奨されている身体活動量を達成する人を増やす、重要な選択肢となる可能性があります」とコメントしている。

 「通勤中の身体活動は、その強度が中程度で、通勤によって心拍数が上がったり、汗をかくことは少ないかもしれませんが、そうした運動でも毎日続けていれば、健康に良い効果をもたらします」。

 「人口統計学や社会経済的な要因を考慮しても、徒歩・自転車・公共交通機関、あるいはこれら3つを組み合わせた通勤は、体重と体脂肪率の減少につながることが示されています」。

 「徒歩や自転車による通勤が現実的でないほど、職場から遠く離れて住んでいる人も多くいますが、なるべく公共交通機関を利用し、ウォーキングなどの身体活動を増やす工夫をすることをお勧めします」としている。

Walking and cycling to work linked with lower body fat and BMI in mid-life (ロンドン大学衛生熱帯医学大学院 2016年3月17日)
Active commuting and obesity in mid-life: cross-sectional, observational evidence from UK Biobank (Lancet Diabetes & Endocrinology 2016年5月)
Walking or cycling to work linked to health benefits in India (インペリアル カレッジ ロンドン 2013年6月11日)
Associations between Active Travel to Work and Overweight, Hypertension, and Diabetes in India: A Cross-Sectional Study (PLOS Medicine 2013年6月11日)
Walking when you have diabetes (英国糖尿病学会)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年06月10日
【アプリ活用で運動不足を解消】1日の歩数を増やすのに効果的 大阪府健康アプリの効果を8万人超で検証
2025年06月09日
【睡眠改善の最新情報】大人も子供も睡眠不足 スマホと専用アプリで睡眠を改善 良い睡眠をとるためのポイントは?
2025年06月09日
健康状態が良好で職場で働きがいがあると仕事のパフォーマンスが向上 労働者の健康を良好に維持する取り組みが必要
2025年06月09日
ヨガは肥満・メタボのある人の体重管理に役立つ ヨガは暑い夏にも涼しい部屋でできる ひざの痛みも軽減
2025年06月05日
【専門職向けアンケート】飲酒量低減・減酒に向けた酒類メーカーの取り組みについての意識調査(第2回)
2025年06月02日
【熱中症予防の最新情報】職場の熱中症対策に取り組む企業が増加 全国の熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
2025年06月02日
【勤労者の長期病休を調査】長期病休の年齢にともなう変化は男女で異なる 産業保健では性差や年齢差を考慮した支援が必要
2025年06月02日
女性の月経不順リスクに職場の心身ストレスが影響 ストレスチェック活用により女性の健康を支援
2025年06月02日
自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善 森が人間の健康とウェルビーイングを高める
2025年05月30日
都民の健康意識は高まるも特定健診の受診率は66% 「都民の健康と医療に関する実態と意識」調査
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶