ニュース
口腔機能が低下する「オーラルフレイル」 健診でチェックすると転倒防止につながる可能性が 5項⽬で簡単にチェック
2024年06月03日

口の機能が健常である状態と、口の機能が低下した状態の中間にあるのが「オーラルフレイル」。咬みにくさ・食べこぼし・むせ・滑舌の低下など、「口の衰え」の症状がある人は注意が必要になる。
オーラルフレイルがあることは、その後の1年間の転倒の増加とも関係していることが明らかになった。
日本老年医学会などは、新たなオーラルフレイルのチェック項⽬を提唱。5項⽬のうち2項⽬以上に該当する人は、オーラルフレイルに該当するという。3学会は合同ステートメントを発表した。
オーラルフレイルのある人は転倒事故の発生率が1.6倍
大阪公立大学は、噛む力や飲み込む力が衰えるオーラルフレイルがあることは、その後の1年間の転倒の増加と関係していることを明らかにした。 これまでに、全身の筋量・筋力低下とオーラルフレイルは関連することが報告されているが、オーラルフレイルと転倒リスクの関連についてはよく分かっていなかった。 口の機能が健常である状態と、口の機能が低下した状態の中間にあるのが「オーラルフレイル」。咬みにくさ・食べこぼし・むせ・滑舌の低下など、「口の衰え」の症状がある人は注意が必要になる。 オーラルフレイルの兆候を早期に評価して、適切な対策を⾏うと、口の機能低下を緩やかにし、改善できると考えられている。 研究グループは今回、大阪府民の健康をサポートするために開発されたアプリ「おおさか健活マイレージ アスマイル」の利用者を対象に、2020年と2021年に実施したWebアンケートに2年連続で答えた50歳以上の計7,591人の回答結果を分析した。 その結果、2020年の調査では、全体の17%がオーラルフレイルに該当し、年齢が高いほど該当者の割合が大きいことが判明。2021年の調査では、全体の19%が過去1年間に転倒を経験したと回答した。 分析したところ、その後1年間の転倒事故の発生率は、身体的フレイルがあることや、フレイルの認知度が低いことに加え、オーラルフレイルのある人で1.6倍と高いことが分かった。健診でオーラルフレイルをチェックすると転倒防止につながる可能性
転倒事故は、骨折や長期入院による体力および生活の質の低下をまねき、要介護状態にいたる主な原因のひとつで、とくに高齢者にとって健康上の大きな懸念となっている。 健康診断などで、オーラルフレイルについてもチェックリストを適用し、受診者に結果をフィードバックすることで、転倒防止への意識を高められる可能性がある。 研究は、大阪公立大学都市健康・スポーツ研究センターの横山久代教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Geriatrics」にオンライン掲載された。 「健康への関心が高く、日ごろから体を動かすことを心がけている方でも、"しっかりと噛め、何でも食べられる"ことに十分意識が向けられているとは限りません」と、横山教授は述べている。 「オーラルフレイルの人は転倒リスクが高いということを周知することで、転倒の予防や介護の取り組みの強化につながると考えられます」としている。「オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント」を発表
新たなオーラルフレイルのチェック項⽬を提唱
日本老年医学会、日本サルコペニア・フレイル学会、日本老年歯科医学会は、「オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント」を発表した。
3学会は、新たなオーラルフレイルのチェック項⽬「OF-5」(Oral frailty 5-item Checklist)を提唱している。5項⽬のうち2項⽬以上に該当する人は、オーラルフレイルに該当する。
検査機器がなくてもセルフチェックが可能で、リスクのある個人や、歯科職種以外の多職種が評価できるのが特徴だ。
新たなオーラルフレイルのチェック項⽬を提唱
オーラルフレイル チェック項⽬「OF-5」
2つ以上があてはまる場合は「オーラルフレイル」
2つ以上があてはまる場合は「オーラルフレイル」
- 自身の歯は何本ありますか?
- 半年前と比べて固いものが食べにくくなりましたか?
- お茶や汁物などでむせることはありますか?
- 口の渇きが気になりますか?
- ふだんの会話で、言葉をはっきりと発音できないことがありますか?


出典:日本老年医学会、日本サルコペニア・フレイル学会、日本老年歯科医学会、2024年
「この合同ステートメントの目的は、オーラルフレイルの概念と定義をより理解しやすく、かつ評価しやすくすることで、とくに口腔機能に関するフレイルの啓発、および多職種連携の推進することです」と、研究者は述べている。
今後は、歯科の医療専⾨職が中心となり、多職種の協働により対応し、食べる・飲み込む・話すなどさまざまな「口の機能の障害」、および身体的フレイル・社会的フレイル・サルコペニア・低栄養といった次のレベルの障害の発症や重症化を食い止めることにつなげたいとしている。
Oral Frailty as a Risk Factor for Fall Incidents among Community-Dwelling People (Geriatrics 2024年4月22日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月25日
- ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
- 2025年02月25日
- 緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月17日
- 肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
- 2025年02月17日
- 中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる
- 2025年02月17日
- 高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」