オピニオン/保健指導あれこれ
ここまで解明された喫煙・受動喫煙の害!
No.1 4大死因すべてを増やすタバコ!もう指導せずにはいられません!
中央内科クリニック 院長
2014年04月14日
喫煙は日本人の4大死因(がん、心疾患、肺炎、脳血管疾患)すべてを増やします。これにより多くの命と医療費が失われているのです。メタボ指導も良いですが、禁煙指導がいかに重要であるかを知って下さい。もう「吸わせてあげれば?」ではダメですよ!
(1) 喫煙は全身すべてのがんを増やす
タバコの煙からは、がん抑制遺伝子p53の発現を阻害する1)といった、細胞レベルで発がん性が確認されている物質が70種類以上も検出されています2)。(2)がんは受動喫煙(2次喫煙、3次喫煙)でも生じる
副流煙には主流煙の100倍以上も多く含まれる発がん物質まで存在するため3)、喫煙は周囲にいる、タバコを吸わない人たちの発がんリスクまで上昇させてしまいます。多くの人は「煙は空気中で薄まるから、隣にいる私は大丈夫」と勘違いしていますが、副流煙は100倍以上に薄まって、やっと吸っている人の煙(主流煙)と同じなのです。最近では、衣服やソファなどに付着した煙の成分(サードハンドスモーク:3次喫煙)でも人間の細胞のDNAが傷つくことが確認され4)、タバコの害は、もはや吸う人だけの問題ではないことが明らかにされているのです。
(3)喫煙は高血圧や動脈硬化の原因
ニコチンには強力な血管収縮作用があるため、喫煙により血圧は上昇します5)。また、煙に含まれる活性酸素は肺から吸収され、血中脂質と結合して酸化脂質を形成します。酸化変性を来たした脂質は、マクロファージに容易に異物として認識されやすくなるため、マクロファージによる貪食が進み、泡沫細胞やプラーク形成が促進され動脈の粥状硬化が進行するのです。
(4)喫煙は「ドロドロ血」の原因
喫煙者では、しばしば健康診断で白血球増多や赤血球増多(多血症)を認めることがあります。煙に含まれる有害化学物質や活性酸素は、気道上皮を障害するだけでなく、血液中に吸収され血管内皮や全身の細胞で炎症を惹起するため、高感度CRPの上昇や白血球増多を来します。また一酸化炭素は、酸素の約250倍もヘモグロビンに結合しやすく、喫煙するとヘモグロビンが一酸化炭素に占拠され、全身組織への酸素供給が阻害されます。組織の酸素欠乏が二次性の多血症を惹起し、「ドロドロ血」の状態となるのです。
(5)喫煙は心筋梗塞、脳梗塞を増やす
喫煙が心血管病変の risk factor であることは、古くから知られている事実ですが、血液粘調度が増大した「ドロドロ血」の状態では、血栓が形成されやすくなります。また、煙に含まれる活性酸素が血管内皮を障害し、血栓が付着しやすい状態となるため、血栓・塞栓症が発生しやすくなるのです。実際、喫煙の心筋梗塞死・脳梗塞死に対する相対リスクは the lower the better と言われる血圧やコレステロール値をも凌駕しているのです6)。
(6)喫煙は動脈瘤、脳卒中、認知症も増やす
活性酸素による弾性線維や膠原線維の断裂は、肺ではCOPD、皮膚ではシワを形成するほか、大血管では中膜の損傷を来たして、解離性大動脈瘤を形成することも明らかとなっています7)。脳血管に生じた動脈瘤は、脳出血やくも膜下出血の原因にもなり、喫煙が脳卒中の大きな原因となっていることも分かっています8)。脳卒中に至らなくても、微小循環が障害されることで認知症が増加することも知られており、最近では受動喫煙でも、認知症が増加することが分かってきました。
(7)喫煙は肺炎による死亡リスクを増やす
煙の有害成分で傷ついた気道上皮からは病原体が侵入しやすくなるため、肺炎球菌は喫煙者に多く感染することが分かっています9)。特にCOPDとなり、予備能力のない肺で肺炎を起こすと、すぐに呼吸不全を来たして命を落とすことになるのです。
以上のように、喫煙は4大死因すべてを増やす生活習慣です!
まわりの人にも有害です。もう指導せずにはいられませんね!
<参考文献>まわりの人にも有害です。もう指導せずにはいられませんね!
1) Mao L et al: J Natl Cancer Inst 89; 857-862, 1997.
2) IARC Monographs: Tobacco smoking, 43-44, 2012.
3) US Department of Health and Human Service. Cigar, 1998.
4) Hang B, et al : Mutagenesis. 2013 Jul;28(4):381-91.
5) Minami, J. et al. Hypertension 1999;33:586-590
6) Murakami Y et al: J Epidemiol 17; 31-37, 2007.
7) Brady AR et al: Circulation 110; 16-21, 2004.
8) Goldstein LB et al. Stroke. 2011 Feb;42(2):517-84
9) Nuorti JP et al: N Engl J Med ; 342:681-689, 2000.
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