ニュース

くるみが心疾患を防ぐ メタボリックシンドロームに対策

 メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満を共通の要因として高血糖、脂質異常、高血圧が引き起こされる状態を指す。食べすぎや運動不足など、不健康な生活習慣の積み重ねが原因となって起こると言われている。それぞれの危険因子が組み合わさると、心疾患など命にかかわる病気を招く危険性にもつながるので、注意が必要だ。

メタボリックシンドローム対策に何を食べればいいか
くるみ
 食べ過ぎや欠食などの乱れた食生活は、内臓脂肪をためる原因になる。これを防ぐためには、食生活の改善が欠かせない。バランスのとれた適切な量の食事を心がけるとともに、食事をする時間や食べ方などにも注意し、1日3食規則正しく食べることが基本である。

 また、昔から長寿の人が多いことで知られる地中海沿岸地域の食生活を研究し考案された「地中海食」も、メタボ対策に有用な食事として注目されている。イタリア、ポルトガル、スペイン、ギリシャなど、地中海食を日常的にとっている地域では心疾患の発症が少なかったという研究は有名だ。

 地中海食は、オリーブオイルをベースとして、旬の野菜や魚介類をふんだんに使うのが地中海食の特徴だ。食材の新鮮さを大切にし、素材はできるだけまるごと使い、野菜と果物を中心として、それに豆類、魚、くるみなどのナッツ類を必ず加える。

 一般に高脂肪食は太りやすく、心臓に悪いというイメージがあるが、ことオリーブ油やナッツ類に関しては、これは当てはまらない。

くるみで「よい脂肪」を取り入れる
 ひとくちに脂肪といっても、「飽和脂肪酸」「n-3系脂肪酸」「n-6系脂肪酸」「コレステロール」などさまざまな種類の脂肪がある。脂肪を構成している要素である脂肪酸は、分子の構造的な違いから飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられるが、そのうちくるみなどオリーブ油やナッツ類、青魚に多く含まれるものを不飽和脂肪酸という。

 くるみは、コレステロール0(ゼロ)であるだけでなく、不飽和脂肪酸の中でも健康効果の高い多価不飽和脂肪酸のn-3系(オメガ3)脂肪酸が豊富に含まれる代表的な食品だ。オメガ3脂肪酸には、血栓(血のかたまり)ができるのを防いだり、血圧を下げたり、中性脂肪を下げるといった、動脈硬化予防の働きがある。心臓病の一因となる動脈硬化は、「血液がドロドロ」になるだけでなく、血管の内壁に血球などが付着して、血管が細くなることで血液が流れにくくなったり、血管自体が硬くなってしまうことが原因。

くるみ
 スペイン保健省の支援を受けて行われた多施設共同試験「PREDIMED研究」では、心血管疾患のリスクの高い参加者9,000名に対し、低脂肪食、オリーブ油を加えた地中海食、くるみを中心とするナッツを加えた地中海食のいずれかを摂取してもらった。参加者は4年間にわたり追跡調査を受けている。

 米国内科学会の学術誌「Annals of Internal Medicine」にて発表された研究の第1段階の試験結果で、オリーブ油かくるみを基本とするナッツ類を加えた地中海食では、摂取カロリーが多くても心臓病リスクが約50% 抑制できることが分かった。

 さらに、くるみを含む地中海食を摂取したグループで、肥満または2型糖尿病の参加者は、開始3ヶ月で体重が0.5kg前後減少した。中性脂肪が下がったのは、くるみを加えた地中海食を摂取したグループだけだった。

 これらの結果は、くるみに含まれるオメガ3脂肪酸によるものとみられ、これには「血液をサラサラ」にするだけでなく、血管の弾力性を向上させ、血球などが血管に付着するのを防ぐ働きがあり、心疾患を防ぐ可能性があることを示唆している。

1日にひとつかみのくるみが心疾患を防ぐ
 健康に良いとされるナッツ類のなかでも、植物性オメガ脂肪酸のαリノレン酸を大量に含んでいるのはくるみだけで、100グラムの実にオメガ3脂肪酸が9グラム含まれている。オメガ3脂肪酸は心臓と血管を保護し、メタボリックシンドロームの影響を防ぐためにきわめて重要な役割を果たすと言われている。しかも、血中脂質と血圧によい影響を与え、血液の流れを改善し、組織の炎症反応を防ぐ。

 また、オメガ3脂肪酸以外にも、貴重なタンパク質、ビタミン、マグネシウムや銅などのミネラル、食物繊維、そして抗酸化作用をもつさまざまな生理活性物質など、健康に役立つ栄養素がたっぷり含まれる。くるみはバランスのとれた適切な食生活を実現するのにとても役立つのだ。

 英国王立化学会の「Food & Function」誌に発表された米スクラントン大学の最新の研究によると、くるみには豊富な「抗酸化物質」が含まれていることが明らかになったという。研究者で論文の著者であるJoe Vinson博士は、くるみに含まれる抗酸化物質の含有量と質、すなわち効力は、ナッツの中で最高であることを発見し、「ひとつかみのくるみは、他のひとつかみのナッツに比べてほぼ2倍の抗酸化物質量がある」と述べている。

くるみ
 くるみは、抗酸化物質に加えて、食物繊維が豊富で高タンパク質、αリノレン酸の供給源にもなり、1オンス(28 g)のくるみには通常人が1日に食べるフルーツと野菜から得る抗酸化物質より多くの抗酸化物質が含まれるというから驚きだ。Vinson博士は、くるみをもっと手軽に食生活にとり入れるようアドバイスしている。

[保健指導リソースガイド編集部]
side_メルマガバナー

「栄養」に関するニュース

2025年08月21日
歯の本数が働き世代の栄養摂取に影響 広島大学が新知見を報告
2025年07月28日
肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
2025年07月22日
【大人の食育】企業や食品事業者などの取り組み事例を紹介 官民の連携・協働も必要 大人の食育プラットフォームを立ち上げ
2025年07月18日
日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
2025年07月18日
「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
2025年07月14日
適度なアルコール摂取は健康的? 大量飲酒の習慣は悪影響をもたらす お酒との良い関係
2025年07月14日
【コーヒーと健康の最新情報】コーヒーを飲んでいる人はフレイルや死亡のリスクが低い 女性では健康的な老化につながる
2025年07月08日
「大人の食育」を強化 人生100年時代の食育には地域や職場との連携も必要-令和6年度「食育白書」より
2025年07月07日
日本の働く人のメンタルヘルス不調による経済的な損失は年間7.6兆円に 企業や行政による働く人への健康支援が必要
2025年07月07日
子供や若者の生活習慣行動とウェルビーイングの関連を調査 小学校の独自の取り組みを通じた共同研究を開始 立教大学と東京都昭島市
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶