ニュース

『血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012』発表。GA20%を推奨

 日本透析医学会は、『血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012』を発表した。血糖管理の指標としてグリコアルブミン20.0%未満と随時血糖180~200mg/dLを推奨し、HbA1cは「血糖状態を正しく反映しないために参考程度に用いる」とするほか、透析前後の低血糖への対応、動脈硬化などの合併症対策などについて、ステートメントとその解説をまとめている。

 近年、透析患者に占める糖尿病性腎症の割合が増加し(2011年末で36.6%)、透析医療従事者による血糖管理の重要性が増している。また、維持血液透析では週に約3回、患者が受診することから、透析医療の従事者は1カ月に十数回、同一患者と接することになり、血糖管理に介入可能な機会は糖尿病医療者以上に多いと考えられる。このような状況から、透析医療の現場に則した血糖管理に関する診療指針が求められていた。

 同ガイドラインは『日本透析医学会雑誌』(日本透析医学会発行)の46巻3号に発表された。主なポイントは以下のとおり。

血糖コントロール指標はグリコアルブミン(GA)と随時血糖
 糖尿病の血糖コントロール指標として一般的にはHbA1cが用いられる。しかし維持透析下では、赤血球寿命の短縮、透析による失血、腎性貧血治療のためのESA製剤(赤血球造血刺激因子製剤)投与等の影響により幼若赤血球の割合が増えることで、HbA1cが実際の血糖コントロール状態より低値となる。このためガイドラインでは「HbA1cは参考程度に用いる」としている。

 一方、グリコアルブミン(GA)は透析下でも血糖コントロール状態を正しく反映するため、ガイドラインはGAを指標とすることを推奨、GA20.0%未満を管理目標とした。ただし、心血管イベントの既往歴があり低血糖傾向のある患者では、GA24.0%未満を暫的目標値とし、今後のエビデンスの蓄積を待ち確定値を設定するとしている。

 また血糖値に関しては、透析医療では空腹時血糖はあまり測定する機会がなく、透析開始前(食後であることが多い)に血糖を測定するため、随時血糖(透析前血糖)を用いることとし、180~200mg/dLを目標値とした。

 なお、血糖管理指標の測定頻度として、インスリン使用中であれば透析開始前と透析後の随時血糖の測定を推奨、経口薬使用中であれば透析前血糖値を週1回、GAを月1回測定することが望ましいとし、非糖尿病患者でも最低1年に1回のGA測定を推奨している。

透析前後の血糖管理について
 透析開始時500mg/dl以上の高血糖の場合は、2~4単位の超速効型インスリンの皮下注射を検討、2時間後に再度血糖値を測定して透析中は100~249mg/dLを目標とするとし、過度の血糖低下(100mg/dL未満)を起こさないように注意を促している。

 透析開始時60mg/dL未満、または明らかな低血糖症状がある場合は緊急処置の後、30分~1時間おきに血糖測定し、血糖の上昇を確認後に透析回路を離脱するとしている。また、このような処置がしばしばみられる場合は「糖尿病治療の根本的な見直しが必要」と述べている。

動脈硬化対策や足の触診の必要性も盛り込む
 これらのほかに、合併しやすい動脈硬化の対策としてIMTやPWVを利用し動脈硬化進展度を把握すること、PAD(末梢動脈疾患)による足病変の有無や足背動脈の触診を最低6カ月に1回は行う必要性などについて言及している。

『血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012』の目次
 
I.血糖管理
(1) 血糖コントロールの意義と指標・目標値
(2) 血糖値管理指標の測定頻度
(3) 透析液ブドウ糖濃度
(4) 血液透析施行中の高血糖、低血糖への対処
(5) 経口血糖降下薬
(6) インスリン療法
(7) インスリン以外の注射薬:GLP-1受容体作動薬
II.食事エネルギー量
III.合併症管理
(1) 糖尿病網膜症
(2) 起立性低血圧
(3) 動脈硬化症
(4) 骨 症

関連ページ:

グリコアルブミン情報ファイル

3週間前から採血時までの平均的な血糖状態がわかるグリコアルブミン検査の詳細。基礎知識と臨床現場における活用例。

[保健指導リソースガイド編集部]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2025年08月21日
歯の本数が働き世代の栄養摂取に影響 広島大学が新知見を報告
2025年07月07日
子供や若者の生活習慣行動とウェルビーイングの関連を調査 小学校の独自の取り組みを通じた共同研究を開始 立教大学と東京都昭島市
2025年06月27日
2023年度 特定健診の実施率は59.9%、保健指導は27.6%
過去最高を更新するが、目標値と依然大きく乖離【厚労省調査】
2025年06月17日
【厚労省】職域がん検診も市町村が一体管理へ
対策型検診の新項目はモデル事業で導入判断
2025年06月02日
肺がん検診ガイドライン19年ぶり改訂 重喫煙者に年1回の低線量CTを推奨【国立がん研究センター】
2025年05月20日
【調査報告】国民健康保険の保健事業を見直すロジックモデルを構築
―特定健診・特定保健指導を起点にアウトカムを可視化
2025年05月16日
高齢者がスマホなどのデジタル技術を利用すると認知症予防に 高齢者がネットを使うと健診の受診率も改善
2025年05月16日
【高血圧の日】運輸業はとく高血圧や肥満が多い 健康増進を推進し検査値が改善 二次健診者数も減少
2025年05月12日
メタボとロコモの深い関係を3万人超の健診データで解明 運動機能の低下は50代から進行 メタボとロコモの同時健診が必要
2025年05月01日
ホルモン分泌は年齢とともに変化 バランスが乱れると不調や病気が 肥満を引き起こすホルモンも【ホルモンを健康にする10の方法】
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶