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労働時間の短縮が幸福をもたらす? 仕事と生活のバランスに課題

 労働時間の短縮は、健康増進・管理の面から必要とされているが、「現状では、時短によって必ずしも幸福にはなれるわけではないと感じている人も多い。労働時間の短縮を実現するために、時間をかけて調整する必要がありそうだ」という研究が発表された。

 このごろ、よく耳にするワークライフバランスには、「仕事と生活の調和」という意味がある。仕事と生活が相乗的に良い影響をもたらす働き方を求めることが、労働者の生活の質の向上につながると考えられている。

 ワークライフバランスのメリットとして
・長時間労働を改善し、労働者の健康が守られる、
・限られた時間で仕事を遂行しようとするため、仕事の効率化がはかられる、
・仕事以外の生活を充実させることで、労働者の満足度や仕事への意欲が高まる、
・仕事以外の生活の経験を通じ、生活者としての視点や創造性が養われたり、資格を取得したりするなど、従業員の能力向上につながる、
といった効果がもたらされると考えられている。

 労働時間の短縮は、健康管理の面からも必要とされているが、「現状をみると、労働時間を短縮しても、必ずしも幸福になれるわけではないと感じている人も多い」という研究が発表された。

 韓国の高麗大学のロバート ルドルフ准教授(経済学)は、韓国の都市部で働く約5,000人の労働者を対象に、1998年から2008年にかけて調査を行った。

 韓国政府は2004年に、土曜日を仕事を休む休養日とすることを公式に決め、労働時間を週44時間から40時間に短縮する政策を打ち出した。その影響で、韓国では週に60時間以上働く労働者は、男性では7.9%、女性では4.8%に減ったという。

 しかし、韓国の労働者の年間の労働時間の平均は2,163時間で、米国の1,792時間に比べると依然として長い。「労働者の生活の満足度に関する調査を行ったところ、驚くことに労働時間の長い人の方が仕事に対する満足感が高く、結果として自分が幸福だと感じている人が増える傾向がみられました」と、ルドルフ氏は話す。

 労働時間の上限を決められると、限られた時間で仕事を遂行しなければならなくなり、労働者のストレスがかえって増すおそれがあるという。

 「労働時間の短縮による恩恵が行き届くまでに時間がかかりそうです。仕事以外の生活では、家事、介護、子育て、趣味、地域活動などさまざまな活動があります。"仕事に追われ、心身の疲労から健康を害しかねない"、"仕事と、子育てや親の介護との両立が難しい"とった問題を抱える労働者も少なくなく、時短がもたらす恩恵は確実にあるといえます」と、ルドルフ氏は説明する。

 例えば女性では、労働時間の短縮によって生活を楽しむ余裕が出てきたという意見が多くみられた。韓国の男女の家庭での役割分担に対する考え方は保守的だ。家事や介護などの仕事は女性がするべきものだとの認識が浸透しており、そうした伝統的な考え方が男女共同参画社会を妨げる一因になっているという。

 また、長時間労働を行っている労働者では、健康の自己管理に対する自信をもっている人の割合が少ない傾向もみられた。「企業や社会において、健康で豊かな生活ができるための時間を確保することは重要です。健康を害するような長時間労働をやめて、十分な休暇をとることで生活の質は向上します。ワークライフバランスを実現するためには、長期的な調整が必要となりそうです」と、ルドルフ氏は結論を述べている。

Shorter working hours do not guarantee happier workers(ジャーナル オブ ハッピネス スタディ 2013年8月21日)

[Terahata]
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