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肥満でEDの中年男性は生活習慣病未発症でも内皮機能が有意に低下

 内臓肥満がありながらMet-S構成疾患(糖尿病、脂質異常症、高血圧)に罹患していない、40歳代男性の約1割はEDであり、血管内皮機能や遊離テストステロンが有意に低下していることが、第34回日本肥満学会(10月11~12日・東京)において報告された。まるやまファミリークリニック(長野県飯田市)の丸山哲弘氏の発表。

 勃起不全(ED)は近年、単に男性性機能障害の主要原因としてだけではなく、動脈硬化性疾患の早期マーカーでもあることが注目されている。一方、メタボリックシンドローム(Met-S)は動脈硬化性疾患の高リスク病態として位置付けられているが、内臓肥満であってもMet-S構成因子である血糖、脂質、血圧の異常を認めないこともあり、そのような状態での血管障害リスクは十分に検討されていない。

 丸山氏は、動脈硬化進展過程の最も早い段階に位置するとされる血管内皮機能に着目し、内臓肥満のみを呈する中年男性のED発症率と血管内皮機能との関係を検討した。

40歳代で内臓肥満があり、生活習慣病のない男性の1割がED
 検討対象は、特定検診のために同院を受診した40~49歳の男性のうち、腹囲85cm以上で内臓脂肪型肥満に該当しながら、糖尿病や脂質異常症、高血圧のいずれでもない67名で、平均年齢は46.5歳。

 同意を得た上で、国際勃起機能スコア5(IIEF5)を用いてEDをスクリーニングするとともに、%FMDによる血管内皮機能、遊離テストステロン、および、抑うつ状態の自己評価(self depression scale,SDS)を計測した。IIEF5スコア21点以下をEDと判定すると、対象の約1割に該当する8名がEDに該当した。

ED群は%FMDと遊離テストステロンが有意に低下
 次に、ED群(平均IIEFスコア15.4±5.8)と、非ED群(同23.8±3.1。60名)の2群で、各種パラメータを比較検討した。

 まず、%FMDの比較では、ED群3.5±2.8%、非ED群6.4±3.78%で、ED群では有意に血管内皮機能が低下していることが確認された(p<0.021)。また、遊離テストステロンも、ED群7.4±5.8pg/mL、非ED群12.5±8.4pg/mLで、ED群において有意に低値だった(p<0.024)。

 一方、年齢、BMI、抑うつ尺度のSDSについては、2群間に有意な差はなかった。このことから、内臓脂肪型肥満はEDの危険因子の一つと考えられる。

IIEFスコアと遊離テストステロンが相関し、性腺機能低下との関連も示唆される
図1 %FMDと遊離テストステロン


図2 IIEFスコアと遊離テストステロン
 続いてED群における検討で、%FMDと遊離テストステロンの相関をみると、%FMDが低下しているほど遊離テストステロンも低いという正の相関が認められた(図1)。肥満におけるEDが、生活習慣病未発症段階の男性における動脈硬化性疾患の早期マーカーとなり得ることを示唆している。

 同様にED群における検討で、遊離テストステロンはIIEFスコアとも正の相関が認められた(図2)。

 この結果より、丸山氏は「内臓脂肪型肥満に伴うEDは動脈硬化の危険因子であり、加齢男性性腺機能低下症候群の危険因子でもある」と結論をまとめた。

◇FMD関連情報(糖尿病ネットワーク):
[保健指導リソースガイド編集部]
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