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食後脂質異常が、食後高血糖よりも血管内皮機能低下に強く影響
2014年04月22日
食後の一過性の高血糖と脂質異常はいずれも動脈硬化の危険因子であることが知られているが、その両者のうち血管内皮機能の低下により強い影響を及ぼすのは、食後脂質異常である可能性が示された。第78回日本循環器学会学術集会(3月21~23日・東京)における、兵庫県立姫路循環器病センター循環器内科 津端英雄氏らの発表。
慢性的に持続する高血糖や脂質異常症が動脈硬化の危険因子であることは明らかだが、近年は食後の一過性の高血糖や脂質異常も動脈硬化を加速する要因であることが明らかになってきている。例えば食後高血糖については、IDF(国際糖尿病連合)が『食後血糖値の管理に関するガイドライン』を2007年に発行し(2011年に改訂)、食後高血糖が動脈硬化の独立した危険因子であることを強調している。脂質異常に関しても、食事負荷により変動するTGやRLP-C(レムナント様リポ蛋白コレステロール)が、LDL-C低下療法後に存在する残余リスクの主要原因として注目されつつある。 しかし、食後高血糖と食後脂質異常の催動脈硬化作用の比較検討はこれまで行われていない。津端氏らの研究は、動脈硬化の早期指標として血管内皮機能(FMD)を測定し、クッキー食負荷後の高血糖と脂質異常の影響を検討したもの。 対象は、糖代謝異常のある冠動脈疾患患者45名。組み入れ基準は、OGTT2時間値が140mg/dL以上、かつ、HbA1c6.5%未満とした。 主な患者背景は、年齢67.4±9.3歳、男性75.6%、体重67.6±10.4kg、BMI25.4±2.9、高血圧86.7%、脂質異常症84.4%、冠動脈疾患100%、喫煙歴あり55.6%、収縮期血圧129.1±15.4mmHg、拡張期血圧76.1±11.8mmHgで、77.8%がアスピリン、40.0%がクロピドグレル、66.7%がスタチン、44.4%がカルシウム拮抗薬、62.2%がARBまたはACE阻害薬、24.4%がβ遮断薬を投与されていた。
クッキーテストで食後代謝異常を把握し、血管内皮機能(FMD)の変化と比較
検査前夜からの絶食後、75gの炭水化物と28.5gの脂質を含むクッキーを摂取させ、摂取前と摂取1時間後、2時間後に採血。糖代謝異常の程度と食後代謝異常の有無を下表の基準で判定したところ、対象の73.3%が耐糖能障害(IGT)、27.7%が糖尿病(DM)で、全体の4割が食後脂質異常に該当した。
血管内皮機能はFMD(Flow Mediated Dilation)で評価し、クッキー摂取前と摂取2時間後にFMDを測定した。血管内皮機能に影響を与える可能性のある降圧薬の服用や喫煙、飲酒、カフェイン、抗酸化ビタミンの摂取は、クッキー摂取12時間以上前に中止した。
なお、クッキー摂取前の各検査値は、血糖値が105.6±12.5mg/dL、インスリン値6.5±3.6μU/mL、TG128.6±53.4mg/dL、RLP-C10.1±6.4mg/dL、%FMD4.78±
1.98%だった。
糖代謝異常の分類と食後脂質異常の定義 | |||||||||||||||||||||||||
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クッキー摂取後の血管内皮機能低下は、食後脂質異常の有無で有意差を認め、
IGT群とDM群の差はなし
IGT群とDM群の差はなし
クッキー摂取前後のFMDの変化量と、 血糖値・TGの変化量の相関 |
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ΔTGのみがΔ%FMDの有意な予測因子
クッキー摂取による%FMDの低下と関連する因子として、単変量解析では、LDL-C、インスリン値のAUC、摂取2時間後のインスリン値、ΔRLP-C、ΔTGが挙げられ、HbA1cや1,5-AG、ΔPGなど血糖関連の指標は有意でなかった。
また多変量解析では、ΔTGのみがΔ%FMDの予測因子として抽出された。
以上の結果から、糖代謝異常のある冠動脈疾患患者において食後の血管内皮機能低下には、食後脂質異常が食後高血糖よりも強く影響している可能性が示唆される。
◇FMD関連情報(糖尿病ネットワーク):
- ■食後脂質異常が、食後高血糖よりも血管内皮機能低下に強く影響
- ■肥満でEDの中年男性は生活習慣病未発症でも内皮機能が有意に低下
- ■ACS後の心リハによる運動耐容能向上は血管内皮機能の改善と相関
- ■DPP-4I追加と併用OHA別にみた内皮機能改善効果 FMDでの検討
- ■CADでは非糖尿病でも微量アルブミン尿出現率が高く、FMD低下と関連
- ■上腕動脈IMT・FMDの同時計測で、冠動脈疾患リスクの層別化が可能
- ■DPP-4阻害薬の食後高脂血症改善を介した血管内皮保護作用
- ■禁煙により酸化ストレスが低下し、血管内皮機能が有意に改善
- ■糖尿病細小血管障害とFMD値が相関。短期加療による改善も評価可能
- ■血管内皮機能は体温日内変動と相関するが、糖尿病ではその関係が破綻
- ■心不全患者の心リハ。急性期のADL改善にも血管内皮機能が関与
- ■糖尿病患者の冠疾患スクリーニングにFMDが有用
- ■食事由来コレステロールよりはTGとアポB48が血管内皮機能に影響
- ■直接レニン阻害薬の多面的効果 透析患者での血管内皮機能を改善
- ■DPP-4阻害薬の変更による血管内皮機能改善の上乗せ効果
- ■塩分の多い食事は、食直後から血管内皮機能(FMD)を低下させる
- ■血管内皮機能は血糖変動と逆相関し鋭敏に変化する
- ■大豆イソフラボンがTGを低下させ、FMDを改善
- ■「血管内皮機能検査」が診療報酬改定で新設される(厚生労働省)
- ■ミグリトールは冠動脈疾患併発糖尿病患者の血管内皮機能を改善する
- ■FMD低値は糖尿病発症の予測因子。ドックなどでは精密検査を
- ■肥満2型糖尿病では、精神的ストレス軽減が血管内皮機能改善につながる
- ■網膜症のある女性糖尿病患者は血管内皮機能(FMD)低下ハイリスク
- ■HDL-Cの血管内皮機能(FMD)保護作用は糖尿病で相殺される
- ■仮面高血圧合併2型糖尿病では血管障害(FMDやPWV)が高度に進展
- ■DPP-4阻害薬は血管内皮機能(FMD)を改善する
- ■脳や心臓の血管が詰まる前に。血管の若返りがわかる検査指標「FMD」
- ■動脈硬化が早期にわかるFMD検査装置
- ■血管内皮機能、FMD検査のユネクス
- ■一般向けサイト 動脈硬化の進展を知る「FMD検査.JP」
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