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医薬品がネットで買える 利便とリスクを抱える「薬のネット販売解禁」

 医師が患者一人ひとりの症状などに合わせて出す処方箋にもとづき、薬剤師が調剤して提供する医療用医薬品(処方薬)に対して、薬局などで誰もが入手できる一般用医薬品(市販薬)。この一般用医薬品が2014年6月12日、改正薬事法の施行により、インターネットでも販売・購入できるようになった。
すべての一般用医薬品がネットで購入可能に
 一般用医薬品は、副作用などのリスクの度合いによって「第1類医薬品」「第2類医薬品」「第3類医薬品」に分類されている。リスクの低い第3類医薬品は従来から薬剤師または登録販売者のいるコンビニやインターネットなどでも販売されていた。改正薬事法では医薬品の区分を見直し、第1類、第2類を含むすべての一般用医薬品を、インターネットや電話などで購入できるようになった。
 ただし、使用に特に注意が必要な一部の医薬品は、「要指導医薬品」という新たな区分に位置づけて対面販売に限定される。要指導医薬品は主に、劇薬や、医療用医薬品から一般用医薬品に移行して間もない、一般用医薬品としての使用経験が少ない「スイッチ直後品目」だ。
ネット通販は消費者にとって危険度が高い
 そもそも一般用医薬品に対面販売が求められたのは、医薬品の不適切な使用によるリスクを避けるためだ。医薬品を適切に使うには、量はもとより、病気やけがの具合に適した薬を選んでいるか、1日に何回、どのように飲むのか、他に使っている薬との相性はどうかなど、さまざまなことを考慮して、対面形式できちんと説明を受けたほうが使用者の理解が深まる。ネット通販ではそこに限界があると考えられる。

 ただでさえ、ネット通販は消費者にとって危険度が高い。一般用医薬品をインターネットで販売する300業者に今年1月、覆面調査員が薬の用法などをメールで問い合わせたところ、45%にあたる136業者から返信がなかったことが、厚生労働省の調査でわかった。

 返信のあった164業者で、文面などから返信者が薬剤師と判別できたのは2.4%で、大部分の97.6%が不明だったという。このほか、購入履歴の確認があったのは8.3%との結果も出ている。

 これを受けて、厚労省はネット販売業者を含む薬局や薬店などにルールを徹底させるよう、自治体や業界団体に通知した。今後は、都道府県に監視させる予定だが、既に1,000を超える業者が参入予定で、多すぎてチェックが大変だと、自治体の担当官が声を上げているとの報道もされている。

販売許可を得ていない違法サイトに注意
 そこで、今回のネット販売解禁にあたっても、多くの条件やルールが示されている。たとえば、薬事法により、薬局または店舗販売業の許可を受けている実店舗を持つ薬局・薬店が開設する販売サイトであること、実店舗は週30時間以上開店していること、薬剤師または登録販売者が常時、配置されていることなどが条件付けられている。

 販売サイトでのおもなルールとしては、▽トップページに店舗の名称を表示する、▽実店舗の写真を掲載する、▽現在勤務中の薬剤師・登録販売者の氏名などを掲載する、▽許可証の内容(開設者名、所在地、所管自治体など)を掲載する、▽営業時間外を含めた連絡先(電話番号、メールアドレスなど)を掲載する、といったことが挙げられている。

 逆に言えば、こうした条件やルールに従っていない販売サイトは、一般用医薬品の販売許可を得ていない違法な販売サイトであることや、薬事法による安全性が確認されていない海外医薬品や偽造医薬品を販売しているサイトであることが疑われるということだ。

 また、医薬品は健康や生命にかかわるものなので、薬事法により誇大広告は禁止されている。価格の安さや薬の効果などを強調する広告に惑わされず、安全な医薬品を、安心できる販売サイトから購入するようにしたい。

 今回の薬事法の改正では、医療用医薬品の販売については、対面販売のみにすることも明記された。インターネットでは販売できないことが従来より決められていたが、あくまでも厚労省の省令によるものだった。医療用の医薬品の売り上げ規模は一般用医薬品の約9倍だ。

 さらに、医薬品の承認や安全対策などに関する情報は、独立行政法人「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」が公開している。PMDAのホームページでは、全ての医薬品の使用上の注意や副作用が書かれた添付文書を見ることができ、薬に関するさまざまな安全性に関する最新情報や、副作用が起こった際の「副作用被害救済制度」の申請の仕方についても書かれている。

一般用医薬品の販売サイト一覧(厚生労働省)
医薬品医療機器総合機構(PMDA)
一般用医薬品販売制度の定着状況の調査結果(厚生労働省)

[Terahata]
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