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インターバル速歩が血糖値を下げる インスリン抵抗性を改善

 速歩きとゆっくり歩きを数分間で交互に繰り返す「インターバル速歩」が、2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善する運動法として注目されている。
速歩きとゆっくり歩きを繰り返す運動法
 「インターバル速歩」は、信州大学の能勢博教授(スポーツ医科学)らが、中高年者の健康増進の目的で開発した歩行法だ。高齢者や体力に自信のない人が安全・効果的に行える運動として考案された。

 インターバル速歩は、下半身を中心に軽いストレッチをした後、普通のウォーキングから始める。
(1) 散歩するときと同じくらいの、会話ができるくらいの普通の速度で、3分間歩く。
(2) 次に、「きつい」と感じる程度の速歩を3分間行う。足を大きく開き、腕を勢いよく後ろに振り、息が上がるほど速度で歩く。
(3) (1)と(2)を交互に繰り返す。

インターバル速歩は運動量を調整しやすい
 インターバル速歩には、一律のノルマが課されていない。1人ひとりの体力にあった回数をこなすよう指導が行われる。ふだん運動していない人であれば、5回(30分)も続けたら、心地良い疲労感を感じられるようになる。

 最大酸素摂取量(VO2max)70%以上の運動を3分間継続すると、血中の乳酸レベルが上昇し、「きつい」と感じるようになる。

 そこで、インターバル速歩では、3分間の速歩の後、3分間の普通歩きを挟むことで、尿酸レベルが低下し、ふたたび速歩が可能になる。結果的に長時間の歩行を達成できるようになる。

 糖尿病の運動療法では、運動習慣のない人や、筋力が落ちている人に、強度の高い運動が勧められることは少ない。筋力が弱いと腰や膝に負担がかかりやすいからだ。

 しかし、ある程度の負荷を体に与えないと、運動の効果は得られにくい。インターバル速歩は、安全に運動の強度を高められる運動法として注目されている。

週に5回のインターバル速歩で効果を得られる
 デンマークのコペンハーゲン大学のトーマス ソロモン准教授(生物医学)は、インターバル速歩が通常のウォーキングに比べ、よりインスリン抵抗性を改善し、血糖コントロールを向上させることを実験で確かめた。

 この研究は、欧州糖尿病学会(EASD)が発行する医学誌「ダイアベトロジア」に発表された。

 研究チームは、薬物療法で治療を受けている57~61歳の2型糖尿病患者を、無作為に次の3つの群に割り当てた――(1)運動をしない群(8人)、(2)通常のウォーキングをする群(12人)、(3)インターバル速歩をする群(12人)。

 運動をする群は、1時間の運動を週に5回行うよう指導された。脈拍測定計と活動量計で運動量が測定された。

 運動強度を知るためには、最高に酸素を取り込む運動(最大限の運動)の何%にあたるかを計測する方法がある。インターバル速歩を行った群では、普通の速度のときは40%、速歩のときは70%の運動強度を持続するよう調整した。

インターバル速歩がインスリン抵抗性を改善
 その結果、インターバル速歩に取り組んだ群では、インスリンが筋肉や肝臓、脂肪細胞で正常に働かなくなる「インスリン抵抗性」が改善されたことが明らかになった。

 インスリン感受性の指数(insulin sensitivity index)は平均49.8%改善していた。この変化はインターバル速歩を行った群のみでみられ、通常のウォーキングを行った群では認められなかった。

 ソロモン氏らは以前の研究で、インターバル速歩を行うと、最大酸素摂取量(VO2max)が16%上昇し、体格指数(BMI)と体脂肪が減少し、体重が4kg減少することを確かめている。

 インターバル速歩を続ければ、平均血糖値は14mg/dL、最高血糖値が50mg/dLそれぞれ低下するという。

 「今回の実験では、強度の高い運動と低い運動を交互に繰り返すインターバル速歩は、安全に行えて、インスリン抵抗性を改善することが確かめられました。長期的な影響を調べるために、さらに研究が必要ですが、インターバル速歩は新しい運動療法の指導方法のひとつとして期待されます」と、ソロモン氏は話している。

Research explores why interval walking training is better than continuous walking training(ダイアベトロジア 2014年8月4日)

[Terahata]
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