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幹細胞を使い毛髪細胞の再生に成功 抜け毛や脱毛で悩む人に朗報
2015年02月03日

あらゆる種類の細胞に分化する能力を持つヒトの「多能性幹細胞」を使って、ヒトの毛髪の成長を促す方法が開発された。実用化されれば、髪の悩みをもつ世界中の人々を救える可能性がある。
幹細胞でヒトの毛髪の成長を誘発するのに成功
ヒトの多能性幹細胞を使って毛髪を再生する新たな治療法を、米国のサンフォード・バーナム医学研究所などの研究チームが開発した。研究は科学誌「PLOS ONE」に発表された。
抜け毛や脱毛について悩んでいる人の数は、世界に15億人とされており、米国だけでも男性で4,000万人以上、女性で2,100万人に上る。今回の研究成果は、頭髪の悩みをもつ人にとって根本的な解決策となる可能性のあるものだ。
脱毛や薄毛の原因として遺伝や性ホルモンが挙げられ、毛乳頭細胞を刺激する治療や、毛周期を早める酵素を阻害する治療法が開発されている。しかし、脱毛の進行を遅らせたり、現状を維持する程度の効果しか得られていないのが現状だ。
頭髪を増やす方法として、頭部にある毛髪を作りだす毛包を移植する方法も試みられているが、頭髪の毛乳頭細胞は必要な量を得られにくく、体外で培養すると毛包の形成を誘導する能力を急速に失ってしまうという欠点があった。
頭髪の細胞は無限に作り出せる
同研究所のアレクセイ タースキック准教授らが試みたのは、人体のあらゆる器官に分化する能力を持ち、再生医療に使われる多能性幹細胞を利用する方法だ。
「ヒトの多能性幹細胞を用い、髪の成長のもととなる新たな細胞の作成に成功した。この方法は、毛包を移植する方法に比べて非常に効果がある」と、タースキック准教授は話す。
毛包は立体的な組織であり、複雑な構造をしているので再生は難しいと考えられていた。研究チームは、ヒトの多能性幹細胞を乳頭細胞に分化させるプロトコルを開発し、再生した毛包の成長周期を調節するのに成功した。この細胞をマウスに移植したところ、ヒトの毛髪の成長を誘発することが確認できた。
幹細胞は患者の細胞をどこからでも採取でき移植も可能だ。この方法であれば、頭髪の毛乳頭細胞を実験室で無限に作り出すことができるという。
「次のステップは、ヒト毛乳頭細胞から作られた多能性幹細胞をヒトに移植することです。現在、この最後のステップとなる研究を実施するためにパートナーシップを募っています」と、タースキック准教授は述べている。
Using stem cells to grow new hair(サンフォード・バーナム医学研究所 2015年1月27日)Derivation of Hair-Inducing Cell from Human Pluripotent Stem Cells(PLOS ONE 2015年1月21日)
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