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「健康社会宣言」を発表 5つのアクションプランで超高齢社会に対策
2015年04月16日

京都を主会場に4月に開催された「第29回日本医学会総会2015関西」で、5つのアクションプランを盛り込んだ「健康社会宣言2015関西」が提言された。
「治療から予防への転換」と「個の医療の推進」
「健康社会宣言2015関西」の背景にあるのは「超高齢社会」「少子化」「医療関連産業の発展への貢献」の3つの問題。宣言には病気の予防に力を入れていくことや、遺伝的要因や生活環境といった個人の特徴に対応した「個の医療」の推進などが盛り込まれた。
主催者によると、「第29回日本医学会総会2015関西」の参加者はプレイベントの一般市民も併せて、合計約37万人、医療職は約2万5000人。
「わが国の医学・医療を革新し、新しい未来を開くために、医療者が政府、自治体、企業、国民などともに協力し、健康長寿社会を実現する必要がある。そのきずなを構築していく第一歩が、今回の総会だった」と、井村裕夫会頭は強調する。
日本医学会は医学と医療の革新に向け、▽治療から予防への転換、▽遺伝情報の解析に基づく「個の医療」の推進、▽基礎研究の成果の臨床応用への促進、▽少子化対策として、出産・子育て支援の充実、▽地域医療、みとり医療の推進――の5つのアクションプランを示した。
女性がキャリアを形成し安心して子育てできる環境整備が必要
総会が開催された2015年は、戦後のベビーブームに生まれた人がすべて65歳以上になった年で、世界でも類を見ない急速なペースで超高齢社会を迎えた年でもある。
日本は1961年に皆保険制度を確立し、高い医療水準と、世界でもトップを争う長寿を達成し、妊産婦および乳幼児死亡率も低い。また、医療機関への完全なフリー・アクセスが維持されており、世界でもっとも優れた医療制度であるとの評価を得てきた。
しかし、世界に類を見ない早さで少子高齢化が進む中、日本は世界のどの国も経験したことのない人口構成をもつ国となり、従来の医療制度の維持が困難となりつつある。
加えて、医学の進歩に伴う医療の専門化、高度化により、医療は極めて複雑なものとなった。しかも都市、特に首都圏に人口が集中し、医療の地域格差が大きな問題となっている。
宣言では、「少子化対策として、女性がキャリア形成を行いつつ安心して子どもを産み育てることのできる環境を整備し、男女共同参画を実現し、若い女性のヘルスケアを向上させることが必要」と指摘。
また、2000年に発足した介護保険制度は、大都市への人口移動と核家族化が進む日本で一定の役割を果たしてきたが、今後、高齢者の増加にどう対応するかが困難な課題として提起されている。
さらに、社会の高度化、複雑化に伴って増加傾向にある精神疾患や発達障害も深刻な問題となっている。加えて地球環境の変化の健康への影響、自然災害への対処など、医学・医療に課せられた課題は多い。
健康社会宣言2015関西 5つのアクションプラン
1. 治療から予防へのパラダイム・シフト少子高齢社会にあっては、病気の予防がなによりも重要となる。そのために胎生期から死に至るまでの終生にわたるヘルスケアを推進する。
特に加齢に伴う慢性疾患(いわゆる生活習慣病を含む)においては、臨床症状などの異常が現れる前に予測し、発症前に介入する先制医療を目指すべきだ。
すなわち、治療から予防へのパラダイム・シフトを行っていく。それとともに高齢者が寝たきりにならないように、筋力の維持、リハビリテーションなどの対策を進める。 2. 個の医療の推進
個人の特徴に対応した医療、個の医療(精密医療)を推進する。従来の画一的な医療と異なり、個人の遺伝素因、環境に基づいて最適の治療法を選択することにより、個人や医療制度への負担を軽減する。
それを実現するためにゲノム、エピゲノムなどの研究を推進するとともに、臨床疫学的研究や大規模データの活用を進めていく。 3. トランスレーショナル・リサーチと臨床研究の促進
基礎医学の研究を一層推進するとともに、得られた成果の臨床への橋渡し研究(トランスレーショナル・リサーチ)を促進し、医療関連産業の発展に貢献する。 4. 出産、子育ての支援
少子化への対策として、妊娠、出産、子育ての正確な知識の普及、出産、子育ての支援体制の整備などに貢献する。また子供の心身の健全な発達のための研究を推進するとともに、小児期の疾患の移行医療にも配慮する。 5. 地域医療、看取り医療の推進
病院と地域医療の連携体制の整備、基本領域専門医の育成、かかりつけ医を中心とした地域包括ケアの推進などを、政府や自治体と協力して推進する。また高齢者の看取りの医療の在り方についての国民的合意が得られるよう努力する。 第29回日本医学会総会2015関西
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