ニュース
肥満の原因のタンパク質を解明 肥満治療薬の開発に期待
2015年05月13日
脂肪分の多い食事を続けても、体内にある特定のタンパク質をなくすと肥満にならないことを、京都大学などの研究グループがマウスを使った実験で確かめた。このタンパク質「ニューデシン」は人間の体にもあり、新たな肥満治療薬の開発につながる成果としている。
脂肪から分泌される「ニューデシン」が肥満の発症に関わる
肥満の大きな原因は、エネルギーの過剰摂取と消費不足、つまり食べ過ぎと運動不足だが、このバランスを逆転すれば、肥満を抑えられることになる。研究成果を人間に応用すれば、肥満対策につながる可能性がある。
このタンパク質は「ニューデシン」と呼ばれ、脂肪組織などから分泌される。研究グループは10年前にニューデシンを確認していたが、体内での働きは不明だった。人間でもこのタンパク質が作られているという。
「分泌性因子」は細胞や組織の間で情報を伝達し、体の恒常性を維持するのに不可欠な働きをする。研究グループはヒトcNDAデータベースからシグナル配列を目印にして新規分泌性因子をみつけ、その機能を調べてきた。
今回の研究では、分泌性因子のひとつであるニューデシンに着目し、その役割を調べるためにニューデシン遺伝子を欠損させたマウス(ノックアウトマウス)を作成し、実験を行った。
肥満に伴いインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が起こりやすいが、ノックアウトマウスは高脂肪食を与えても太りにくく、インスリン抵抗性や脂肪肝の発症にも耐性があることが分かった。
詳しく調べると、運動量や食べる量は正常なマウスと変わらないが、ノックアウトマウスではエネルギーを貯める白色脂肪が分解されやすくなっており、エネルギーを消費する褐色脂肪組織で熱産生や脂肪酸酸化が高まっており、エネルギー消費が向上していた。
肥満治療の開発が世界中で行われているが、確実に成功する治療法は見つかっていない。研究グループは「肥満に関わるニューデシンの役割を明らかにすることで、新たな抗肥満薬を開発できる可能性がある」と述べている。
この研究は、京都大学の伊藤信行・名誉教授、木村郁夫・東京農工大学テニュアトラック特任教授、太田紘也・神戸薬科大学研究員らの研究グループが、中尾一和・医学研究科メディカルイノベーションセンター特任教授、伏木亨・龍谷大学教授、小西守周・神戸薬科大学教授らが共同で行ったもので、英科学誌「Scientific Reports」オンライン版に発表された。
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「特定保健指導」に関するニュース
- 2023年08月28日
- 極端な「糖質制限」や「脂質制限」は危険? 日本人に適した食事スタイルは? 8万人超を調査
- 2023年08月28日
- カラフルな野菜を食べている人は認知症の発症が少ない ホウレンソウやブロッコリーを食べて認知症を予防
- 2023年08月28日
- わずか5分の運動でも「がんリスク」を32%減少 無理なく続けられる「新しい運動法」を開発
- 2023年08月28日
- 週末の「寝だめ」では平日の睡眠不足のダメージを回復できない 寝不足が心臓の健康に悪影響
- 2023年08月28日
- 高齢者の「フレイル」の発生リスクを40%低減 「要支援」の高齢者が通所系サービスを利用すると効果
- 2023年08月21日
- 肥満やメタボが「腰痛」を引き起こす コロナ禍でさらに増加 「腰痛」を改善する運動は?
- 2023年08月21日
- 朝食欠食が肥満やメタボのリスクを上昇 朝食を食べない人に共通する生活スタイルは?
- 2023年08月21日
- アルコールが高血圧の原因に 飲酒量が少ない人も血圧が上昇 2万人弱を調査
- 2023年08月21日
- ストレスを解消する簡単で効果的な方法 「みんなと楽しく食べる」「睡眠を改善する」
- 2023年08月21日
- 「運動アプリ」がメンタルヘルスも改善 スマホアプリの導入は運動指導で障壁の低い介入に