ニュース

肥満の原因のタンパク質を解明 肥満治療薬の開発に期待

 脂肪分の多い食事を続けても、体内にある特定のタンパク質をなくすと肥満にならないことを、京都大学などの研究グループがマウスを使った実験で確かめた。このタンパク質「ニューデシン」は人間の体にもあり、新たな肥満治療薬の開発につながる成果としている。
脂肪から分泌される「ニューデシン」が肥満の発症に関わる
 肥満の大きな原因は、エネルギーの過剰摂取と消費不足、つまり食べ過ぎと運動不足だが、このバランスを逆転すれば、肥満を抑えられることになる。研究成果を人間に応用すれば、肥満対策につながる可能性がある。

 このタンパク質は「ニューデシン」と呼ばれ、脂肪組織などから分泌される。研究グループは10年前にニューデシンを確認していたが、体内での働きは不明だった。人間でもこのタンパク質が作られているという。

 「分泌性因子」は細胞や組織の間で情報を伝達し、体の恒常性を維持するのに不可欠な働きをする。研究グループはヒトcNDAデータベースからシグナル配列を目印にして新規分泌性因子をみつけ、その機能を調べてきた。

 今回の研究では、分泌性因子のひとつであるニューデシンに着目し、その役割を調べるためにニューデシン遺伝子を欠損させたマウス(ノックアウトマウス)を作成し、実験を行った。

 肥満に伴いインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が起こりやすいが、ノックアウトマウスは高脂肪食を与えても太りにくく、インスリン抵抗性や脂肪肝の発症にも耐性があることが分かった。

 詳しく調べると、運動量や食べる量は正常なマウスと変わらないが、ノックアウトマウスではエネルギーを貯める白色脂肪が分解されやすくなっており、エネルギーを消費する褐色脂肪組織で熱産生や脂肪酸酸化が高まっており、エネルギー消費が向上していた。

 肥満治療の開発が世界中で行われているが、確実に成功する治療法は見つかっていない。研究グループは「肥満に関わるニューデシンの役割を明らかにすることで、新たな抗肥満薬を開発できる可能性がある」と述べている。

 この研究は、京都大学の伊藤信行・名誉教授、木村郁夫・東京農工大学テニュアトラック特任教授、太田紘也・神戸薬科大学研究員らの研究グループが、中尾一和・医学研究科メディカルイノベーションセンター特任教授、伏木亨・龍谷大学教授、小西守周・神戸薬科大学教授らが共同で行ったもので、英科学誌「Scientific Reports」オンライン版に発表された。
食事性肥満の鍵因子neudesinの同定(京都大学 2015年05月08日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年07月28日
日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
2025年07月28日
肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
2025年07月28日
1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由
2025年07月28日
【妊産婦を支援】妊娠時に頼れる人の数が産後うつを軽減 妊婦を支える社会環境とメンタルヘルスを調査
2025年07月22日
【大人の食育】企業や食品事業者などの取り組み事例を紹介 官民の連携・協働も必要 大人の食育プラットフォームを立ち上げ
2025年07月22日
高齢者の社会参加を促すには「得より損」 ナッジを活用し関心を2倍に引き上げ 低コストで広く展開でき効果も高い 健康長寿医療センター
2025年07月18日
日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
2025年07月18日
「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
2025年07月14日
適度なアルコール摂取は健康的? 大量飲酒の習慣は悪影響をもたらす お酒との良い関係
2025年07月14日
暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に ウォーキングなどの運動を夜に行うと睡眠の質は低下?
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶