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高齢妊娠リスクの原因を特定 加齢に伴い「コヒーシン」が減少

 妊娠時の年齢が上がると染色体数の異常による流産や先天性疾患の頻度が増すのは、卵子内の染色体同士を結びつけるタンパク質「コヒーシン」の減少し、染色体が早期分離することが主な原因と考えられると、理化学研究所などの研究チームが発表した。

 理化学研究所などの研究チームは、卵子の染色体が誤って分配される様子を観察するのに世界ではじめて成功した。「コヒーシンが減少する原因を解明し、染色体の分離を抑える方法の開発につなげたい」と述べており、不妊治療にも生かしていきたい考えを示した。
高齢出産による"流産"の原因解明
 体を構成する膨大な細胞の中で、唯一次世代を形成するのが卵子と精子、すなわち生殖細胞だ。生殖細胞を介して全ての遺伝情報が次世代に継承され、種が維持される。生命にとって根本的に重要な細胞だが、卵子の形成過程では、母体の加齢に伴って染色体の分配異常が高頻度に起こることが知られている。

 染色体数が異常となった卵子は、受精してもほとんどが出産に至らないが、出産に至るとダウン症などの先天性疾患を引き起こす。このような染色体の分配異常は、卵母細胞の減数第一分裂に伴って起こることが知られているが、その原因や詳細は明らかでなかった。

 生殖細胞は、減数分裂を経て染色体数を半減させ、受精によってその数を回復する。減数分裂は第一分裂と第二分裂からなり、第一分裂では母方と父方に由来する相同染色体が対合して二価染色体を形成する。二価染色体は分裂時に一価染色体に分離し、2つの娘細胞に分配される。続く第二分裂では、一価染色体が姉妹染色分体に分離し、娘細胞に分配される。

 研究チームは、多数の卵母細胞を用いて高解像度3Dライブイメージングを行い、減数第一分裂における全染色体の動きをコンピューター上で追跡することに成功した。まず、自然加齢したマウス(16月齢)から得た275の卵母細胞を解析したところ、20の卵母細胞で染色体分配の誤りがみられ、これらの誤りは3つのパターンに分類することができた。

 1つ目は、母方と父方の両方の染色体が第二分裂を待たずに姉妹染色分体を分配してしまう「均等早期分配」(45%)、2つ目は、母方または父方の染色体のどちらか一方が姉妹染色分体を分配してしまう「不均等早期分配」(35%)、3つ目が、母方と父方の染色体が分離しない「不分離」(20%)だった。
卵子の染色体分配異常のメカニズムを解明
 研究チームは次に、分配異常が生じた原因をさかのぼって調べた。すると、分配異常に至った卵母細胞の80%では、第一分裂で二価染色体が形成される時期に、一価染色体が生じていることが明らかになった。一価染色体は微小管によって両方向に引っ張られ、多くの場合、姉妹染色分体を誤って分配していた。

 ではなぜこの時期に一価染色体が生じてしまうのか。より詳しく解析すると、二価染色体は本来分裂するその時まで維持されている必要があるが、一部の二価染色体が微小管に両側から引っ張られた際に、その力に耐えきれずに過剰に伸長し、ついには一価染色体に分離してバラバラに振動する様子がみられた。このことは、二価染色体の接着が緩んでいることを示唆しており、加齢した卵母細胞では染色体を結びつける因子である「コヒーシン」が減少しているという最近の知見とも一致していた。

 研究チームはヒト卵母細胞の解析も行った。不妊治療で廃棄予定となった卵母細胞の提供を受けて解析した結果、マウスでの解析結果と同様に、比較的加齢した母体由来の卵母細胞では、減数第一分裂時に二価染色体の早期分離が起きていることが示された。その結果生じた一価染色体が微小管によって両方向に引っ張られている様子も観察されたことから、マウスの場合と同様に、二価染色体の一価染色体への早期分離が染色体分配異常の原因であることが強く示唆された。

 今回の結果は、加齢に伴う卵子の染色体分配異常のメカニズムを直接的に明らかにした点で意義深い。研究チームは、今後は二価染色体の早期分離について、より分子的に理解するための研究を行うという。「特に加齢に伴ってコヒーシンが減少するメカニズムを明らかにしたい」と述べている。

 今回の研究は、理化学研究所 多細胞システム形成研究センターの榊原揚悟基礎科学特別研究員(染色体分配研究チーム、北島智也チームリーダー)らによるもので、オンライン科学誌「ネイチャー コミュニケーションズ」に発表された。

卵子の加齢に伴う染色体分配異常のメカニズム(理化学研究所 多細胞システム形成研究センター 2015年7月1日)
[Terahata]

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