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ビフィズス菌の生理機能を解明 腸内細菌に作用し酪酸などを生成

 整腸作用があることが知られるビフィズス菌「BB536」は、腸内で酢酸や乳酸などの有機酸や葉酸などのビタミンB群を作り出すのに加え、腸内細菌叢に作用し、酪酸やビオチンといった有用物質を増やしていることが、理化学研究所などの研究で明らかになった。
ビフィズス菌が腸疾患やアレルギーを改善
 ヒトの腸管には500~1,000種類、100兆個以上の腸内細菌が生息し、この腸内細菌が消化液では分解できない食物繊維などを腸内発酵により代謝し、有用な代謝産物に作り替える働きをしている。

 健康な乳児から分離されたビフィズス菌「BB536」に、炎症性腸疾患など腸の疾患を改善する効果や、アレルギーなど改善する効果があることが知られているが、複雑な腸内細菌が相互に作用しあっており、正確な作用機序はよく分かっていない。

 そこで、理化学研究所統合生命医科学研究センターの大野博司グループディレクターなどの研究グループが森永乳業と共同で、「BB536」の生理機能を解明する実験を行った。

 その結果、「BB536」は自らが作り出す酢酸や乳酸などの有機酸や葉酸などのビタミンB群といった有用物質に加え、ヒト腸内細菌叢と相互作用することで、ビフィズス菌以外が作る酪酸やビオチンといった有用物質の量を増加させていることが分かった。
ビフィズス菌が腸内細菌の活動を高める
 研究チームは、15菌種からなるヒト腸内優勢細菌をマウスに定着させ、ヒト腸内細菌叢を有する特殊なマウスを作製。1日10億個の「BB536」を14日間摂取させたグループと摂取させなかったグループに分けた。

 「BB536」の摂取前後の便を回収し、水溶性の腸内代謝産物を核磁気共鳴分光法(NMR法)で解析するとともに、便より抽出したDNAおよびRNAを用いて、腸内細菌の占有率および遺伝子発現を次世代シーケンサーで解析した。

 その結果、ビフィズス菌BB536は、ヒト腸内細菌叢と相互作用することで、ビフィズス菌以外が作る酪酸やビオチンなどの量を増加させていることが分かった。

 つまり、ビフィズス菌である「BB536」を摂ることで腸内細菌の活動が高まり、その結果多量の酪酸が作られ、この酪酸が炎症抑制作用のある制御性T細胞を増やしていると考えられるという。

 また、ビオチンは体内では生合成ができない必須の水溶性ビタミン。食品から摂取するほか、腸内細菌によって合成される。糖新生、脂肪酸合成、エネルギー代謝などに関連する「カルボキシル化反応」を触媒している。

 「ヒトや哺乳動物にとって必須の栄養素であるビオチンや、腸内の免役細胞に大きな影響を与える酪酸は、宿主の腸内環境に影響を与えていると予測される。研究で明らかとなった腸内細菌叢との相互作用は、BB536の生理機能を評価する上で重要な知見となる」と、研究チームは述べている。

ビフィズス菌研究所(森永乳業)
[Terahata]
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