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うつ病が生産性を低下 半数がメンタルケアの必要を認識していない
2015年10月22日
うつ病を治療する支援を必要としている従業員の半数が治療の必要性を認知しておらず、生産性の低下につながっているという調査結果がカナダで発表された。「うつ病を改善すれば生産性の向上に貢献できます」と研究者は述べている。
うつ病を治療しないと生産性は33%低下
企業のメンタルヘルス対策の必要性は最近になって注目されている。うつ病が企業の生産性を下げており、うつ病の従業員をケアすることで生産性を回復できることが、カナダ・トロントの「依存症・メンタルヘルス研究センター」(CAMH)のキャロリン デワ氏らの研究で明らかになった。
研究チームは、オンタリオの企業に勤める18~65歳の従業員2,219人を対象に、電話アンケートやウェブによるメンタルヘルスの調査をした。その結果、従業員のおよそ40%は深刻なうつ状態を経験していることが判明した。
うつ病は適切なケアをすれば病状を改善できる。しかし、うつ病の従業員の52.8%は医療者の専門的な支援を求める必要性を認識していないことが示された。
「少なくない数の労働者がうつ状態を経験していますが、医療機関などの専門家の助けを得れば改善できることを知っている割合が低いことが示されました。支援を必要としている多くの人は、うつ病であることをスティグマ(否定的なレッテル)と認識していることも分かりました」と、デワ氏は言う。
うつ病を治療しないで放置すると労働者の健康状態が悪化するだけでなく、企業の生産性にも悪影響をもたらす。デワ氏が試算したところ、適切なメンタルヘルスのケアを行わないでいると、生産性は33%も低下することが明らかになった。
「うつ病を生産性を低下させることは明らかですが、どのようにケアを行えば良いかは難しい問題です」と、デワ氏は言う。調査によると、うつ病と判定させ、治療が必要であることを雇用者に知られることを恐れる従業員が多かったという。また、治療の効果を疑問視する従業員も多かった。
うつ病の治療を妨げる障害が取り除かれた場合、企業の生産性の減少は50%抑えられることも判明した。「企業におけるメンタルヘルスの介入の難しさを考慮しながら、包括的な方法で対応することが、結果として企業と従業員の双方に利益をもたらします」と、デワ氏は指摘している。
研究の詳細は医学誌「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に発表された。
CAMH survey shows over half of workers with depression do not recognize need for treatment(Centre for Addiction and Mental Health 2015年10月7日)Barriers to Mental Health Service Use Among Workers With Depression and Work Productivity(Journal of Occupational and Environmental Medicine 2015年10月7日)
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