ニュース

身近な薬局が大きく変わる 厚労省が「患者のための薬局ビジョン」を策定

 厚生労働省は、患者本位の医薬分業の実現に向けて、かかりつけ薬剤師・薬局の今後の姿を示すとともに、中長期的視野に立った薬局再編の道筋を提示した「患者のための薬局ビジョン ~『門前』から『かかりつけ』、そして『地域』へ~」を発表した。
「かかりつけ薬局」が地域医療を変える
 団塊の世代が75歳を超える2025年、さらには2035年を見据えて地域包括ケア実現に向けて、かかりつけ薬剤師、薬局の姿を明確に打ち出したものとなっている。薬剤師・薬局の基本理念などについては日本薬剤師会や関係学会が見解を示しているが、厚労省が文書で示したのはこれがはじめて。

 厚労省はビジョンにおける基本的な考え方として、(1)立地から機能へ、(2)対物業務から対人業務へ、(3)バラバラから1つへ――の3点を挙げた。

(1)立地から機能へ

 薬局における後発医薬品の使用割合は2015年に58.4%上昇しており、患者が後発医薬品に変更したきっかけは7割が薬剤師からの説明となっている。後発医薬品の普及が進めば、約4,000億円の医療費を節減できる。また、在宅医療での残薬管理により、後期高齢者で約400億円の薬剤費を削減できると見込まれている。

 そうした医療の効率化に貢献できると目されているが「かかりつけ薬局」だ。現在、薬局は全国に5万7,000あるが、2025年までにすべての薬局がかかりつけ薬局としての機能をもつようにし、2035年までに日常生活圏域でのかかりつけ機能を発揮できるよう、再編を促す。

(2)対物業務から対人業務へ

 薬剤師の職能も、これまでの薬中心の対物業務から、患者中心の"対人業務"へとシフトすることを盛り込んだ。これまでの薬剤の調整などの業務から、丁寧な服薬指導や在宅訪問、副作用・服薬状況のフィードバック、処方提案などへとシフトすることで、患者から選ばれる薬剤師・薬局となることを目指す。

 現在は多くの患者は門前薬局で薬を受け取っているが、今後はどの医療機関を受診しても、身近なかかりつけ薬局で受け取るような仕組みにする。かかりつけ薬局が、患者の服薬情報を1元的・継続的に把握することで、多剤・重複投薬の防止も期待でき、医療費の抑制につなげることができる。

(3)バラバラから1つへ

 患者・住民がかかりつけ薬剤師・薬局を選択することにより、服薬情報がひとつにまとまり、飲み合わせの確認や残薬管理など安心できる薬物療法を受けることができるようになる。

 かかりつけ薬局には――
(1)電子お薬手帳や医療ICTなどを通じ、すべての医療機関やOTCなども含めて服用薬の一元的管理・継続的把握、
(2)開局時間外での電話相談など、24時間対応・在宅対応、
(3)医療機関等との連携、
の3つの機能を求める。

 再編において、かかりつけ薬局としての機能に加えて、地域住民による主体的な健康の維持・増進を支援するための健康サポート機能をもつ薬局は、「健康サポート薬局」として住民に公表する仕組みを設け、薬局の取り組みを後押ししていく。

 24時間調剤や在宅対応では、単独で実施するのが困難な場合には、地域の薬剤師会が主導的な役割を発揮して、近隣薬局との連携構築や、地域の特性に応じた適切な連携体制を構築していく。
「高度薬学管理機能」で患者にニーズにきめ細かく対応
 さらに、患者ニーズに応じて強化・充実すべき機能として、「高度薬学管理機能」を挙げた。

 現状では門前薬局を中心に調剤に偏重し、要指導医薬品や衛生材料などを扱わない薬局が多いが、現実には併用薬との相互作用を含む副作用や効果の発現状況に注意が必要な患者に対して、専門的な薬物療法を提供可能な体制づくりが求められる状況になっている。

 かかりつけ薬局は、地域住民による主体的な健康維持・増進を支援する健康サポート機能をもつことが期待されているが、癌やHIV、難病のような疾患を持つ患者に対しても、専門的な薬物療法が提供する薬局も必要とした。

 具体的には、がんやHIV、難病のような疾患のある患者に対して、あらかじめ医療機関との間で対応要領を定め、「抗がん剤服用時に副作用が生じた際に、担当医への受診などの対応について助言する」「抗HIV薬服用患者の場合に、他の併用薬等の情報をもとに、適切な抗HIV療法を選択できるよう支援する」といった対応ができるようにする。

患者のための薬局ビジョン~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~(厚生労働省 2015年10月23日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2025年08月21日
歯の本数が働き世代の栄養摂取に影響 広島大学が新知見を報告
2025年07月07日
子供や若者の生活習慣行動とウェルビーイングの関連を調査 小学校の独自の取り組みを通じた共同研究を開始 立教大学と東京都昭島市
2025年06月27日
2023年度 特定健診の実施率は59.9%、保健指導は27.6%
過去最高を更新するが、目標値と依然大きく乖離【厚労省調査】
2025年06月17日
【厚労省】職域がん検診も市町村が一体管理へ
対策型検診の新項目はモデル事業で導入判断
2025年06月02日
肺がん検診ガイドライン19年ぶり改訂 重喫煙者に年1回の低線量CTを推奨【国立がん研究センター】
2025年05月20日
【調査報告】国民健康保険の保健事業を見直すロジックモデルを構築
―特定健診・特定保健指導を起点にアウトカムを可視化
2025年05月16日
高齢者がスマホなどのデジタル技術を利用すると認知症予防に 高齢者がネットを使うと健診の受診率も改善
2025年05月16日
【高血圧の日】運輸業はとく高血圧や肥満が多い 健康増進を推進し検査値が改善 二次健診者数も減少
2025年05月12日
メタボとロコモの深い関係を3万人超の健診データで解明 運動機能の低下は50代から進行 メタボとロコモの同時健診が必要
2025年05月01日
ホルモン分泌は年齢とともに変化 バランスが乱れると不調や病気が 肥満を引き起こすホルモンも【ホルモンを健康にする10の方法】
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶