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がん患者数が最多の86万人 罹患率に地域差 自治体の取組みが影響
2016年07月07日

2012年の1年間に新たにがんと診断された患者は86万5,238人だったとの推計値を、国立がん研究センターがまとめた。前年より約1万4,000人増加し、過去最多となった。全都道府県比較により、がん罹患率には地域差があることもはっきりした。
男性1位は「胃がん」 女性1位は「乳房がん」
国立がん研究センターは、全国の病院から報告を受け、各都道府県が「地域がん登録」として集計したがん患者データを基に全国の患者数を推計した。
その結果、2012年の新規の患者数は男性が50万3,970人、女性は36万1,268人だった。
部位別にみると、男性では(1)胃がん、(2)大腸がん、(3)肺がん、(4)前立腺がん、(5)肝臓がんの順で多く、女性は(1)乳房がん、(2)大腸がん、(3)胃がん、(4)肺がん、(5)子宮がんの順だった。男性では前立腺がんの増加が頭打ちになり、大腸がんが増加しているという。
「地域がん登録」は、都道府県のがん対策を目的に1950年代より一部の県で開始され、研究班が各地域がん登録からデータを収集する活動を開始して以降、年々参加都道府県が増加し、2010年は30県、2011年は40県、そして今回はじめて47全都道府県の登録データが揃った。
がん罹患率に地域差 40歳代後半から罹患率は増加
データから高齢化の影響を除くと、人口10万人当たりの患者数(年齢調整罹患率)は男性447.8人、女性305.0人で男女合計は365.6人。前年より0.2人分減った。
新規患者数が増えて年齢調整罹患率が減ったのは、統計上で高齢化要因を除いて算出したためで、同研究センターは「予防対策に独自に取り組む自治体が増え、増加に歯止めがかかった」としている。
全都道府県比較により、がん罹患率には地域差があることもはっきりした。地域住民の年齢構成の差を調整したうえで、都道府県ごとの発症率を全国平均と比較すると、男性では(1)秋田、(2)和歌山、(3)石川の順で高く、女性では(1)東京、(2)福岡、(3)石川の順で高かった。
がん発症率について全国平均を100とした場合、患者が多い目安の110以上の地域は、胃は男女ともに東北、北陸から山陰地方にかけての日本海側で目立つ。
肝がんは男女ともに山梨県や西日本で、肺がんは女性で北海道、近畿、九州北部で多い。大腸がんは男女ともに北東北、近畿、山陰地方で目立った。
また、性別・部位別・年齢階級別に罹患率をみてみると、男性では部位に関わらず40歳代後半から増加し始め、胃がんは70歳代後半まで増加が続き、大腸がんは年齢とともに罹患率が高まり、前立腺がんは70歳代がピークとなる――といった特徴がある。

東京で女性の乳がんが高い理由
がんになる人は高齢化が進むと増える一方、生活習慣の改善で減らすことも可能とされている。国立がん研究センターによると、発症率は塩分の摂取や飲酒、喫煙といった生活習慣のほか、肝がんにつながる肝炎ウイルスの感染者の多さなどが反映しているという。
乳がんは地域的な傾向はないが、東京都をはじめ高い地域が点在していた。東京で女性の乳がんが高い理由については、「初産年齢が高くなっていることや、リスクが高いとされる出産経験がない女性が多いことなどが影響している可能性がある」と説明している。
女性では部位によって罹患率の上昇カーブが大きく異なり、子宮がんは20歳代から上昇して50歳代でピークを迎え、60歳代以降は横ばいとなる。乳がんは30歳代後半から急増し、60歳代に入ると減少する。大腸がん、胃がん、肺がんは年齢とともに罹患率が高まる。
国立がん研究センター
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