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麻しん患者が増加 首都圏や関西で相次ぐ 集団感染なぜ起こったか

 厚労省や国立国際医療研究センターなどが、麻しん(はしか)の広域発生のおそれがあることを8月24日に発表して以降、各地で麻しん患者が報告されている。全国の今年の患者報告数(8月28日時点)は41人で、昨年の35人を超えた。厚生労働省は医療機関に対して、「必ず麻しんを鑑別に入れて、早期診断ならびに感染拡大の予防策を講じる」よう、注意を呼び掛けている。
成人の麻しんの発症が増えている
 麻しんの患者数は、過去5年の推移をみると、2008年より5年間、中学1年相当、高校3年相当の年代に2回目の麻しんワクチン接種を受ける機会を設けたことで、2009年以降は10~20代では激減した。

 しかし、そもそも予防接種は、一度で十分な免疫が獲得できるとは限らず、麻しんワクチンを1回接種しても、数%程度の人には十分な免疫がつかないことが知られている。そのうえ、10代から20代の人たちの中には、今まで一度も麻しんの予防接種を受けていない人がいる。

 さらに、麻しんワクチンの接種率の上昇に伴い、麻しんの患者数が減り、麻しんウイルスにさらされる機会が減少した。そのため、幼少時にワクチンを1回のみ接種していた当時の10代から20代の人は免疫が強化されておらず、時間の経過とともに免疫が徐々に弱まってきている人がいることも、麻しん流行の原因のひとつだ。
海外渡航者が行き来する空港はもっとも感染リスクの高い場所
 厚労省や国立国際医療研究センター、千葉市などは、2016年8月14日に幕張メッセで開催されていた米人気歌手のコンサートに麻しん患者が参加しており、兵庫県西宮市から首都圏に移動していることから、広い地域で麻しん患者が発生するおそれがあると発表した。

 また、8月31日には、東京都立川市で26日に開催されたコンサートの参加者に麻しん患者がいたことが判明。東京都多摩立川保健所が、麻しんと思われる症状があった場合、速やかに医療機関に電話をし、受診するよう呼びかけている。

 大阪の関西国際空港では従業員の集団感染が確認され、9月5日までに37人が発症。今後も拡大が心配されている。大阪府泉佐野保健所など関係機関は8月17日以降、空港を利用した人は体調の変化に注意するよう発表した。

 麻しんは麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症だ。麻しんウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染で、その感染力は非常に強い。免疫をもっていない人が感染するとほぼ100%発症する。

 感染すると約10日後に発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状があらわれる。2~3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と発疹が出現する。肺炎、中耳炎を合併しやすく、患者1,000人に1人の割合で脳炎が発症するといわれている。死亡する割合も、先進国であっても1,000人に1人とされる。

 麻しんの1人の患者が平均何人の人に感染させるかを表す数字は12~18と極めて高く、コンサート会場や体育館など広い場所では、免疫がなければ同じ空間にいるだけで感染し発症する危険性が高くなる。

 今回の空港における麻しんの集団発生に驚いた人も多いだろう。しかし、麻しんは国内では排除状態となっていたため、その後の発生は成人の輸入感染が中心となっており、空港での感染は十分に予測できることだった。

 多くの海外渡航者が行き来する空港は、もっとも感染リスクの高い場所のひとつだ。今年は特にインドネシアやモンゴルなどアジアに渡航歴のある患者の届出報告が目立っているという。
麻しん患者と接触した人が受診するとさらに感染が拡大
 厚生労働省は、医療機関に対して、特に、内科、小児科、皮膚科、救急など麻しん患者が最初に受診する可能性のある診療科では「必ず麻しんを鑑別に入れて、早期診断ならびに感染拡大予防策を講じる」よう対応を求めている。

 また。早期診断につながるとして問診項目の中に「麻しん含有ワクチンの接種歴、最近の渡航歴、最近の国内旅行歴、最近国際空港や人が多く集まる場所に行ったことがないか」を含めるよう促している。

 日本環境感染学会も広域で麻しん症例が発生していることをふまえ、「職員に対しては、必要な感染対策を再確認し、ワクチン接種についても接種歴や抗体価などをふまえて必要性に応じて検討する」よう呼び掛けている。

 発熱や発疹など麻しんが疑われる患者への対応として、▽予防接種歴や行動歴、渡航歴などを聴取し、早期診断に努める、▽疑った患者の隔離や空気感染予防策を実施する、▽保健所へ報告し、接触者対応やその後の対応について助言を求める――ことを挙げている。
風しんの予防接種も必要 先天性風しん症候群の抗体検査を全国で実施

 麻しんは、年齢を問わず命に関わる重篤な疾患で、その感染拡大防止には、MR(麻しん・風しん混合)ワクチンの定期接種による予防が重要だ。東京都の2013年度における予防接種率の全国平均は、麻しん風しんともに第1期は95.5%、第2期は93.0%だった。

 麻しん第1期の接種率が高い都道府県は、宮城県(98.6%)、鳥取県(98.6%)、秋田県(97.4%)など。低い都道府県は、京都府(91.0%)、長崎県(91.3%)、沖縄県(92.3%)など。第2期では熊本県(97.3%)や秋田県、新潟県(いずれも96.3%)などが高く、鹿児島県(88.5%)、沖縄県(88.9%)、東京都(89.7%)などが低くなっている。

 麻しんの予防接種として、MRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)が推奨されている。風しんは麻しんと同様に、予防接種により予防が可能だが、過去に流行が確認されている疾患だ。2014年度の感染症流行予測調査によると、30代前半~50代前半の成人男性の5人に1人は風しんの免疫をもっていなかった。20代の男性は10人に1人、30代後半の男性では5人に1人だ。

 この男女比および世代比の差は、風しんの定期予防摂取制度の変遷によるもので、成人になって風しんにかかる人の多くは、子どもの頃に予防接種の機会がなかったためだ。風しんの予防接種は、以前は女子中学生のみを対象としてきたが、1995年より生後12ヵ月から90ヵ月未満の男女小児、および、中学生男女となった。

 厚生労働省は、これまで風しんの予防接種を受けたことがない人に、男女関係なくMRワクチンを接種するよう呼び掛けている。免疫のない女性が妊娠初期に風しんに罹患すると、風しんウイルスが胎児に感染して、出生児に先天性風しん症候群 (CRS)と総称される障がいを引き起こすことがあるので、特に注意が必要だ。

 現在、多くの自治体では先天性風しん症候群の予防のために、主として妊娠を希望する女性を対象に、風しんの抗体検査(免疫の状態を調べるための血液検査)を無料で実施している。

 厚生労働省は、特にこれから妊娠を希望する女性で、予防接種を受けているか不明な人、風しんにかかったことが確実でない人は、風しんの抗体検査を受けるよう呼び掛けている。

 全国自治体や保健所は、先天性風しん症候群の予防のため、主として妊娠を希望する女性を対象に無料の抗体検査を行っている。厚生労働省のホームページでは、抗体検査を受けられる保健所のリストが公開されている。

風しんの感染予防の普及・啓発事業 お住まいの地域の保健所検索(厚生労働省)
麻しん・風しん(厚生労働省)
麻しん はしかにならない!はしかにさせない!(国立感染症研究所)
麻しんの流行に関する注意喚起について(日本環境感染学会 2016年9月2日)
[Terahata]

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