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腰の負担をはかるセンサ内蔵ウェアを開発 介護施設などの負担を軽減
2016年12月22日

北海道大学は、背中の筋肉の活動を計測するセンサを内蔵し、持ち上げる荷物の重さが分からなくても、腰の負担の増減を詳しく知ることができる画期的なセンシング技術を開発したと発表した。介護施設などで蓄積した作業中の腰負荷データを解析することで、腰負荷の軽減や、人員配置の最適化など、業務改善につなげられるという。
介護者の腰の負担をリアルタイムに計測
北海道大学は、ニコンと共同で開発した、着るだけで作業中の腰の負担を可視化できるセンサ内蔵ウェアをさらに進化させたと発表した。この研究は、同大大学院情報科学研究科の田中孝之准教授らの研究チームによるもの。
介護施設などさまざまな職場で、作業員の負担や疲労の軽減、特に腰痛予防が求められている。北海道大学の研究グループは各種作業の「軽労化」に対する取り組みを行っている。
介助労働を軽減する装着型のアシストツールが開発されているが、どれだけ筋力を補助できるかを正確に知るのは難しい。
そこで研究チームは2015年に、ニコンと共同で、いつ、どのような作業で、どの程度の負担が作業者にかかるのかを容易に察知することができるセンサ内蔵ウェア「着るレントゲン」を開発した。
介護現場での実証試験により、介護者の腰の負担をリアルタイムに計測、管理することに成功。センサ内蔵ウェアは腰ベルトやコルセットのように取り付けることができ、姿勢の変化に伴う自重による腰の負担は計測できたが、これまでは患者を抱きかかえたり、荷物を持ち上げたりなど、外部から受ける力による作業の負荷には対応できていなかった。
腰の負担を高精度にはかるセンサ内蔵ウェアを改良
今回新たに開発したウェアは、背中の筋肉の活動を計る「筋硬さセンサ」を内蔵。ウェアを着ると、それらが腰と背筋に密着し、内蔵したマイコンで各種計算、制御、データ保存ができる。内蔵バッテリで8時間駆動でき、バッテリ込みで398gと軽量かつ柔軟素材でできているため、違和感なく装着できる。
装着すると、「加速度センサ」と「曲げセンサ」の情報から、腰の負担(椎間板圧迫力)を計算するために必要な腰仙椎アライメント(脊椎の腰部の位置・姿勢)を、レントゲンと同精度でリアルタイムに推定する。腰部X線画像を撮影した人数を増やし、アライメント推定精度も高まった。
また、「筋硬さセンサ」は、荷物を持ち上げることで増加する背筋の緊張力をリアルタイムに計測することができる。腰の負担の大部分を占める背筋の緊張力を筋硬さセンサで正確に検知することで、荷物の重さを逆に推定し、腰にかかる負担を正確に推定できるという。
荷物持ち上げ実験を行ったところ、従来の姿勢変化に伴う腰の負担推定に比べて、筋硬さセンサを用いることで平均して約3?5割の推定誤差を軽減し、精度良く腰負担を推定することができたという。
将来は、介護施設などで活用できる製品・サービスとしての展開を考えており、作業中の腰負荷データを蓄積し、ビッグデータ解析することで、腰負荷の軽減、人員配置の最適化など、業務改善につながるソリューションの提供を目指している。また、筋力補助スーツなどのアシストツールの補助効果を評価したり、アシストツールのセンサとしても活用が期待できるという。

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