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女性に多い「鉄欠乏性貧血」 女性の半数は鉄欠乏の「隠れ貧血」
2017年03月08日
女性の症状として多いものに貧血がある。貧血の多くは、食事で予防・改善することが可能だが、薬での治療が難しいケースがある。貧血の原因を解明する研究が進められている。
女性に多い「鉄欠乏性貧血」 薬での治療が難しいケースも
貧血では、体内に十分な酸素がめぐらず、低酸素状態となるため、「軽い動作でも動悸や息切れがする」「疲れやすい」「頭が重い」「集中力がなくなる」などの症状が起こる。
貧血の中でもっとも頻度が高いのは、体内の鉄が不足して起こる「鉄欠乏性貧血」だ。
日本人女性ではおよそ10%が「鉄欠乏性貧血」を発症するとされている。女性には妊娠・出産、月経など貧血になりやすい条件が多く揃っている。また、若い女性に多くみられるダイエットや偏食なども貧血を助長している。
貧血まで至らない鉄欠乏状態(隠れ貧血)まで含めると、月経のある女性の約半数は何らかの鉄欠乏状態にあるともされている。
赤血球は酸素を体中の細胞へ運ぶ役割を持つ重要な細胞で、体の中でもっとも多い細胞だ。赤血球は体の総細胞数の7割を占め、1日あたり約2,000億個もの赤血球が新しく産生されている。
貧血を予防する食事
赤血球の中で酸素と結合するのがヘモグロビンという鉄を含むタンパク質で、生体内の鉄の約70%はこの赤血球のヘモグロビン産生に利用されている。
貧血を予防するために、栄養バランスの良い食事を摂ることが大切だ。特にタンパク質は、血液中の赤血球やヘモグロビンの材料となる大切な栄養素だ。
鉄分は良質なタンパク質やビタミンCを多く含む食品と一緒に摂取することで、体内への吸収率がアップする。良質のタンパク質を含む食品として、魚介類、肉類、卵、大豆製品、乳製品などがある。毎日の食事に取り入れて食べるようにしたい。
また、鉄分を十分に摂取することも必要だ。鉄分はレバーや赤身の肉類、あさり、かき、魚、大豆製品、緑黄色野菜、海藻などに多く含まれている。特に、吸収率の良いヘム鉄は、レバーやマグロやカツオなどの魚類に多く含まれる。
朝食を食べないなどの偏食や極端なダイエットなどで、鉄分の摂取量は不足しやすい。また女性では、妊娠、出産、授乳期など鉄分の必要量が増加しているときにも不足しやすいので注意が必要だ。
鉄不足による貧血のメカニズムを解明
鉄欠乏性貧血の治療としては、不足している鉄を効率よく補うために、鉄剤を内服する。しかし、鉄剤の投与によっても改善しない場合がある。
東北大学の研究チームは、そうした場合の新たな治療の手かがりとなる発見をした。
貧血の原因は、鉄が欠乏した状態になり、血液中の赤血球の数やヘモグロビンの濃度が低くなることだ。ヘモグロビンは、鉄を含むヘムという赤い色素と、グロビンというタンパク質からできている複合タンパク質だ。
ヘムとグロビンは、一方が異常に多く産生されると、余った分子が細胞内に蓄積して毒性を生じる。
研究グループは、鉄欠乏性貧血モデルマウスから採取した赤芽球を使って、網羅的DNAメチル化解析および遺伝子発現解析を実施。その結果、鉄欠乏状態に応じてヘムとグロビンのバランスを遺伝子発現レベルで調整する因子があることを明らかにした。
ヘムに応答する転写因子が、鉄欠乏により合成が低下するヘムの量に対応してグロビンの合成を低下させることで、ヘムとグロビンのバランスを調整しているという。
赤血球のもととなる細胞の遺伝子発現変動が鉄欠乏を引き起こしているという。この発見は「鉄欠乏性貧血」の新たな治療法の開発につながると考えられている。
東北大学大学院医学系研究科生物化学分野
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