ニュース
日本人がメタボになりやすい職業とは? 業務内容を考慮した保健指導
2017年04月13日

メタボリックシンドローム(メタボ)の有病率は職業によって異なり、「建設業」「運送業・郵便業」「金融業」に就いている人は注意が必要――12万人を対象とした分析結果を、福島県立医科大学医学部医学科衛生学・予防医学講座の研究チームが公表した。
職業や業務内容も考慮した保健指導が求められる
研究は、福島県立医科大学医学部医学科衛生学・予防医学講座の日高友郎助手、福島哲仁教授らと、全国健康保険協会(協会けんぽ)福島支部による共同研究チームによるもの。
全ての健康保険組合に対し、レセプトなどのデータの分析し、それにもとづく加入者の健康保持増進をはかる「データヘルス計画」の実施が、行政により推奨されている。研究チームは、健康情報ビッグデータの活用・解析を進めている。
「メタボの有病率は日本では男性で8~25%、女性で2~22%で、職業によって異なる。保健指導を行う際には、職業や業務内容も考慮に入れた指導が求められる」と、研究チームはコメントしている。
研究チームは、12万人の会社員を対象に、メタボリックシンドロームの有病率を業種別に比較し、それぞれの特徴を調べる大規模な横断研究を行った。
協会けんぽのデータベースを用いて、2012年に福島県内で健康診断を受診し、ウエスト周囲径、血圧、血糖、脂質、メタボの判定に関するデータが得られた35~75歳の会社員男女約12万人のデータを収集。
研究は「ビッグデータにもとづいた、業態別のメタボリックシンドロームの健康予測を可能とする研究」として、米国科学誌「PLOS ONE」(2016年4月16日)に発表された。
「運送業・郵便業」「建設業」「鉱業・採石業」でメタボが多い
調査票への回答内容をもとに、統計の産業分類である「日本標準産業分類」による18業種に分類した。
その結果、男性会社員では5人に1人以上(有病率22.2%)がメタボを保有していたが、女性の有病率は4.4%だった。
男女を合わせた全体のメタボの有病率を業種別にみると、▽運送業・郵便業(25.7%)、▽建設業(21.0%)、▽鉱業・採石業(20.5%)が高く、▽医療・介護(8.7%)、▽公務(11.4%)、▽娯楽業、飲食店・宿泊業(12.1%)が低かった。
なかでも「運送業・郵便業」の男性はメタボリックシンドロームに加えて、ウエスト周囲径、高血圧、耐糖能異常、脂質異常症の全てで異常値が多かった。
男性では▽製造業、▽運輸業、▽金融業、▽協同組合、女性では▽鉱業、▽運輸業、▽金融業、宿泊業、▽協同組合で、メタボ有病率が高いことが実証的に明らかにされた。
メタボの標準化有病比(SPR)を業種別に比較したところ、男性では「製造業」「運輸業」「学術研究、専門・技術」「協同組合」の4つの業種で高く、女性では「医療・介護」「協同組合」で高かった。
データヘルス計画では、国民の健康寿命の延伸が大きな目標のひとつとして定められており、メタボリックシンドロームをはじめとした生活習慣病対策は、その重要課題となっている。
「今回の研究はデータヘルス計画の成果のひとつ。日本人のメタボリックシンドローム有病率を業態の面から明らかにした、はじめての研究として位置付けられる」と、研究者は述べている。
福島県立医科大学医学部医学科衛生学・予防医学講座Prevalence of Metabolic Syndrome and Its Components among Japanese Workers by Clustered Business Category(PLOS ONE 2016年4月15日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「健診・検診」に関するニュース
- 2025年08月21日
- 歯の本数が働き世代の栄養摂取に影響 広島大学が新知見を報告
- 2025年07月07日
- 子供や若者の生活習慣行動とウェルビーイングの関連を調査 小学校の独自の取り組みを通じた共同研究を開始 立教大学と東京都昭島市
- 2025年06月27日
-
2023年度 特定健診の実施率は59.9%、保健指導は27.6%
過去最高を更新するが、目標値と依然大きく乖離【厚労省調査】 - 2025年06月17日
-
【厚労省】職域がん検診も市町村が一体管理へ
対策型検診の新項目はモデル事業で導入判断 - 2025年06月02日
- 肺がん検診ガイドライン19年ぶり改訂 重喫煙者に年1回の低線量CTを推奨【国立がん研究センター】
- 2025年05月20日
-
【調査報告】国民健康保険の保健事業を見直すロジックモデルを構築
―特定健診・特定保健指導を起点にアウトカムを可視化 - 2025年05月16日
- 高齢者がスマホなどのデジタル技術を利用すると認知症予防に 高齢者がネットを使うと健診の受診率も改善
- 2025年05月16日
- 【高血圧の日】運輸業はとく高血圧や肥満が多い 健康増進を推進し検査値が改善 二次健診者数も減少
- 2025年05月12日
- メタボとロコモの深い関係を3万人超の健診データで解明 運動機能の低下は50代から進行 メタボとロコモの同時健診が必要
- 2025年05月01日
- ホルモン分泌は年齢とともに変化 バランスが乱れると不調や病気が 肥満を引き起こすホルモンも【ホルモンを健康にする10の方法】