ニュース

高血圧予防ダイエットは痛風にも効果がある 高血圧と痛風の両方を改善

 高血圧を予防・改善するために考えられた「DASHダイエット」は、痛風の予防にも効果的だという研究が発表された。痛風の人は高血圧も併せもつことが多く、「両方の疾患を改善するDASHダイエットには一石二鳥の効果がある」と、研究者は胸を張っている。
高血圧を予防するための食事は痛風にも効く
 高血圧を改善するために、米国心臓学会(AHA)などは「DASH(ダッシュ)ダイエット」を推奨している。「DASH」とは、「高血圧を防ぐ食事方法」(Dietary Approaches to Stop Hypertension)の略語。米国立心肺血液研究所(NHLBI)などが中心となり考案された。

 DASHダイエットを実行している人では、死亡リスクの高い脳卒中や心筋梗塞などの深刻な病気の発症が低下することが、米国のメイヨークリニックやミシガン大学などが実施した調査で確かめられている。DASHダイエットは高血圧のある人だけでなく、糖尿病や脂質異常症のある人にとっても効果的な食事法であることも判明している。

 もともと高血圧の予防・改善のために考案されたDASHダイエットだが、血中尿酸値も低下させ、痛風の予防にも効果的であることが、米国のハーバード大学マサチューセッツ総合病院などの研究で明らかになった。
尿酸値が高い状態は「非常にリスクが高い」
 風にふれただけでも激痛が走ることから名付けられた痛風。昔は贅沢な食生活をおくっている一部の富裕層の病気といわれていたが、近年は若年化や、女性患者の増加傾向がみられる。特に女性は閉経後、女性ホルモンの減少の影響で尿酸値が閉経前よりも平均して上昇しやすい。

 痛風は血液中の尿酸(細胞の老廃物)が多くなる「高尿酸血症」が続くことで、関節内にたまった尿酸の結晶により激しい関節炎が起こる病気。尿酸値が7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」と診断され、治療の対象となる。尿酸値の高い状態が続くと、痛風発作を起こす以外に、腎臓病、高血圧、心臓病、尿路結石といった病気も発症しやすくなる。

 痛風の原因となる尿酸は、体内で核酸からつくられる。生成と排出のバランスをとる仕組みが正常に働いていれば、尿酸値は一定に保たれる。ところが、何らかの理由で尿酸が過剰につくられたり、排出される量が減ったりすると、血液中の尿酸量が増え、濃度が高くなる。やがて溶けきれなくなった尿酸が関節の中で結晶化し沈着するようになり、長い年月をかけてたまっていく。

 注意しなければならないのは、高尿酸血症と診断されても、すぐに痛風発作を起こすわけではないということだ。自覚症状がなくても「尿酸の結晶化」が確実に進んでおり、身体に悪影響を及ぼす「非常に高いリスクに侵されている状態」であるのは確かだ。

 「自覚症状が無いから大丈夫だろう」と、そのまま高尿酸血症を放置しておくと、尿酸の結晶は徐々に体内で蓄積され、さまざまな病気を引き起こす原因になる。
DASHダイエットと西洋型ダイエットを比較
 DASHダイエットの痛風を予防する効果を検証するため、米国とカナダの研究者チームはDASHダイエットと西洋型ダイエットの、痛風リスクとの関連を調べた。調査の対象となったのは、痛風を発症していない40~75歳の男性4万4,444人。研究チームは、1986年から2012年まで4年おきに食事アンケートに回答してもらった。

 対象者にはそれぞれDASHダイエットと西洋型ダイエットのそれぞれのスコアを割り当てた。DASHダイエットのスコアは、果物・野菜・ナッツ類・豆類・低脂肪の乳製品・全粒穀物のそれぞれの摂取量の多さや、塩分・高カロリーの飲料・赤身肉・加工肉の摂取量の少なさを反映している。

 一方で、西洋型ダイエットのスコアは、赤肉・加工肉・フライドポテト・精製穀物・菓子・デザート類の摂取量の多さを反映している。

 26年の追跡調査に1,731例が痛風を発症した。DASHダイエットの遵守度によって5つのグループに分けて比べたところ、もっともスコアが高かったグループではもっとも低かったグループに比べ、痛風の発症リスクは32%低下した。

 一方で、西洋型ダイエットの実施度がもっとも高かったグループでは、もっとも低かったグループに比べ、痛風の発症リスクは42%上昇した。

 研究者は「今回行ったのは観察研究であり、確固たる因果関係を示すものではありません」としながらも、「DASHダイエットには痛風のリスクを低下させる魅力的な食事である可能性があります。痛風の患者の多くは高血圧であり、高血圧と痛風の両方を改善するDASHダイエットには、一石二鳥の効果があります」と述べている。
DASHダイエットを実行するのは簡単
 DASHダイエットを実行するのは実はとても簡単だ。毎日の食事で以下のことに気を付ければ、誰でも実行できる。

<< DASHダイエットの実践法 >>

・ 塩分を控える

 食塩のとりすぎは血圧を上げる重大な要因になっており、塩分の摂取量が少ない人には高血圧が少ないことが明らかになっている。「1日の食塩摂取量3.7~5.5g」に抑えるのが目標だ。

 塩分を減らすために「味付けを工夫する」のが効果的だ。塩味以外に「酸味」「香辛料」「香味野菜」「だしのうまみ」を使うことで風味や味をつけることができ、減塩につながる。

・ 食物油で不飽和脂肪酸をとる

 多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含む植物油を十分に摂取すると、血圧が低下するという調査結果がある。大豆油やグレープシードオイル、コーン油などに含まれるリノール酸、アマニ油やクルミなどに含まれるリノレン酸、青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)などが代表的な多価不飽和脂肪酸だ。

 また、オリーブオイルやキャノーラ油(菜種油)には一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸が多く含まれており、脳卒中や心筋梗塞などの発症を減らすという報告がある。

 一方、血圧や悪玉のLDLコレステロールや中性脂肪の値が高い人、内臓脂肪が多い人には、「食べ過ぎを防ぐ」ことと「飽和脂肪酸を摂取し過ぎない」ことが勧められている。飽和脂肪酸は、牛や豚の赤身肉、鶏肉の皮の部分、乳製品など、動物性の脂に多く含まれる。

・ 野菜を毎日、十分に食べる

 「食物繊維を積極的にとる」ことも大切だ。野菜、きのこ、海藻、玄米などに多く含まれる食物繊維は、小腸でのコレステロール吸収や食後高血糖を抑えるので、高血圧の人だけでなく、糖尿病や血糖値が高めの人にも勧められる。

 野菜にはビタミンやミネラルも豊富に含まれており、特にカルシウム、カリウム、マグネシウム、ビタミンKなどの栄養成分は高血圧の予防・改善に役立つ。野菜を1日に3~5サービング以上とるのが目標だ(カット野菜1/2カップが1サービングの目安)。

・ 低脂肪乳を選ぶ

 牛乳には良質なタンパク質やカルシウムなどが含まれる。カルシウムは骨を強くするだけでなく、血圧調整の役にも立つ。ただし、乳製品には飽和脂肪酸も多く含まれるので、カロリーの摂り過ぎや体重増加が気になる人は注意が必要だ。脂肪分が気になる場合は、無脂肪乳や低脂肪乳などを選ぶ方法もある。

・ 玄米や全粒粉を食べる

 玄米や全粒粉など精製度の低い穀物は、普通のパンやご飯よりも食物繊維が豊富に含まれる。こうした穀物を主食に混ぜて食べると、無理なく食物繊維の摂取量を増やすことができる。腹持ちが良いので、食欲を抑え、食べ過ぎを防ぐ効果も得られる。

 米や小麦粉を精製すると高血圧や糖尿病の改善に有用な栄養素が失われてしまうが、玄米や全粒粉であれば有用な栄養素を摂取できる。毎日の食事に取り入れたい食品だ。

・ 糖質を控える

 糖質(炭水化物)を多く含む食品は、食後の血糖値を急激に上昇させる。同じエネルギー量の食事でも、糖質を制限することで血糖値の上昇を抑えられる。菓子類や菓子パンには脂質も糖質も多く含まれていて高カロリーなので、なるべく食べないようにしよう。

 代わりに、主食を全粒粉のパンにし、低脂肪乳を加えればカルシウムも補える。ヨーグルトを食べるときは無糖や低カロリー甘味料を使ったものを選ぼう。

・ ナッツ類を食べる

 アーモンド、クルミ、カシューナッツ、ピスタチオなどのナッツは、健康的な食品として注目されている。最近の研究で、ナッツが心筋梗塞などの心疾患やメタボリックシンドロームの改善に役立ち、がんを予防する効果もあることが分かってきた。

 ナッツ類に含まれる抗酸化作用をもつ栄養素やフィトケミカルが、悪玉のLDLコレステロールを低下させ、善玉と悪玉のコレステロールのバランスを改善すると考えられている。

Diet rich in fruit, vegetables and whole grains may lower risk of gout(BMJ 2017年5月9日)
The Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) diet, Western diet, and risk of gout in men: prospective cohort study(BMJ 2017年5月9日)
DASH diet: Guide to recommended servings(メイヨークリニック 2016年5月17日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2023年08月09日
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年07月28日
2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
2023年07月24日
標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
2023年07月11日
自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
2023年06月20日
肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
2023年06月12日
自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
2023年06月05日
要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年05月19日
令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
2023年05月18日
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶