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AI(人工知能)が自治体の保健指導を提案 医療費減へ 筑波大など共同開発

 自治体のデータヘルスの取り組みを支援するために、人工知能(AI)を活用した保健指導施策を提案するシステムの開発が始まる。筑波大学などが常総市や新潟県見附市などと共同で開発する。
 糖尿病などの重症化予防や医療費の削減など、大きな効果が期待されている。
AIにより健康寿命を延ばし医療費の削減をはかる
 住民の健康診断、レセプト(診療報酬明細書)、介護保険などのデータを活用したデータヘルスの取り組みが重要であることは分かっていても、具体的にどのような施策を打ち出せばよいか分からない――そんな自治体は多いのではないだろうか。

 筑波大学は、住民の健康に関する問題点を判定し、地域の実情に合った保健指導施策を提案する人工知能(AI)を、常総市や新潟県見附市などと共同で開発すると発表した。

 開発するシステムは、AIに住民の健診やレセプトの情報を入力すれば、地域の健康課題とその原因が特定され、保健指導の施策を提案してくれるシステム。健康寿命を伸ばし、医療、介護保険などの社会保障費の削減につなげることを目指す。

 共同開発には、筑波大発ベンチャーのつくばウエルネスリサーチやNTTデータ経営研究所などが関わる。AMED(日本医療研究開発機構)の事業に採択されており、3年で開発し、全国でも使えるようにする予定。
自治体の効果的なデータヘルスの利用を促す仕組みが考えられている
75万人超の健康診断やレセプトを学習 保健指導を適正化
 超高齢社会が到来し、どの自治体も医療費の高騰や介護費用の増加に悩まされている。住民の健康寿命を伸ばして費用を抑える必要があるが、単独の自治体ではデータの活用に限界があり、データを分析できる職員も少ないという課題があり、自治体間の格差も生じている。

 開発するシステムには、AIに常総、見附両市の住民を含む75万人以上の健康診断、レセプト(診療報酬明細書)、介護保険などのデータを学習させる。地域の健康課題とその原因が特定され、適正化した保健指導の施策を提案してくれる仕組みだ。

 開発にあたり、自治体の事業推進プロセスにおける、地域診断、施策策定(Plan)、施策実施(Do)、横断・介入評価(Check)、施策見直し(Act)の各段階での活用を想定しシステムを構築する。

 具体的には、「使えるAIシステム」を開発し、(1)地域の課題を発見し・原因を分析する、(2)保健指導のモデル立案を支援する作業をそれぞれ行わせる。

 (1)の「課題発見・原因分析支援エンジン」は、自治体に蓄積されている健診やレセプトデータなどの健康関連のビッグデータを使って、自治体ごとの健康課題を明らかにし、地区別の偏差値ランキングを見える化するというもの。

 たとえば、地域の糖尿病患者の病状を明らかにし、合併症を防ぐために必要な要素を解析する。病気の有無や医療費の高低を分ける要因と条件をデータから学習し、提示することが可能となる。

 (2)の「保健指導のモデル立案エンジン」は、(1)で明らかにした地域の課題を解決するための施策案を提案する。NTTグループが開発したAI技術「コレボ」を活用し、医療論文や健康施策のコンサルティングなどの研究成果を構造化し、データベースに蓄積する。

 それを自治体の課題と照合し、自治体の予算や人材、目標などの条件に最適化した保健指導モデルを提示する。どのくらい医療費が抑制できるかというシミュレーションの作成も可能になる。
AIを活用した保健指導システムの全体像
自治体間の格差是正にもつなげる狙いが
 今回のプロジェクトでは、つくばウェルネスリサーチが持つ「健幸クラウドシステム」に蓄積されている75万人の過去5年間の健康関連データや筑波大学大学院人間総合科学研究科スポーツ医学専攻の久野譜也教授らの過去の研究ノウハウをAIに学習させる。

 つくばウエルネスリサーチは、筑波大学とともに100以上の自治体の健康施策に対してコンサルティングも行っており、そのノウハウを生かす。

 「AIの活用によって健診データを簡単に施策に生かせるようになる。どこの自治体でも現状分析や施策の立案ができるようになり、自治体間の政策力の格差是正にもつなげる狙いもある」と、つくばウェルネスリサーチの塚尾晶子氏は言う。

 新潟県見附市と茨城県常総市に2018年度にシステムを導入し、実証試験を開始するのが目標だ。「システムを完成させ、近いうちに全国の自治体でも使えるようにしていきたい」と筑波大学の久野教授は述べている。

筑波大学大学院人間総合科学研究科スポーツ医学専攻
AIにより健康寿命を延伸し、社会保障費削減をもたらすデータヘルスシステムの研究開発(新潟県見附市 2017年8月31日)
[Terahata]
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