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妻が肥満だと夫は糖尿病になりやすい 家族対象の保健指導が効果的
2017年10月03日

50~60歳の男性は、妻が過体重や肥満であると、自身が2型糖尿病を発症する可能性が高いという調査結果が、欧州糖尿病学会(EASD)学術集会で発表された。
なお、男性が過体重や肥満である場合は、その妻が糖尿病になりやすいということはないという。
なお、男性が過体重や肥満である場合は、その妻が糖尿病になりやすいということはないという。
家庭の中心にいる女性の影響は大きい
「男性にとって、同居している女性の肥満の度合いが、肥満や2型糖尿病の発症リスクを知るための大きな要因になります。配偶者が肥満であることが分かったら、自身の体重の変化を気にしたほうが良いのです。もちろん糖尿病の発症にもっとも影響するのはご自身の体格指数ですが」と、デンマークのオーフス大学公衆衛生学部のアダム ハルマン氏は言う。
家族は食事スタイルなどの生活習慣を共有しやすい。医師が患者の2型糖尿病のリスクを判定するときに、「両親や兄弟姉妹に糖尿病の人はいるか」という質問をすることが多いが、これは遺伝因子が2型糖尿病の発症に大きく関わるだけでなく、家族は糖尿病を発症しやすい生活スタイルを共有することが多いからだ。
2型糖尿病の危険因子として、運動不足、不健康な食事、肥満、家族歴(遺伝因子)などが知られているが、カップルの男女性が食事や身体活動などの生活スタイルをどのように共有しているかはあまり知られていない。カップルの片方が不健康な生活していれば、もう片方に影響する可能性がある。
「1990年代終わり頃まで、家庭の食生活を決める役目を担っていたのは女性でした。家庭の中心にいる女性の影響はことのほか大きいといえます」と、ハルマン氏は指摘する。
妻のBMIが5増加するごとに夫の糖尿病リスクは21%上昇
現在の糖尿病の治療は個別化が進んでおり、2型糖尿病の場合は患者個人の生活スタイルを重視することが多いが、こうしたアプローチでは患者のソーシャルネットワークを見逃すおそれがある。多くの糖尿病患者は家庭の一員であり、家庭環境にも細心の注意を払う必要がある。
研究チームは英国で実施されている「英国エイジング縦断調査」(ELSA)に登録された、50歳以上で結婚しているか否かに関わらず同居している約3,500組のカップルを対象に、1998~2015年に追跡して調査した。
研究の参加者の調査開始時の体格指数(BMI)の平均は27で、夫の6%、妻の4%が糖尿病と判定された。参加者は2.5年ごとに血液検査を受け、生活習慣についてのアンケートに回答した。
平均11.5年間に新たに2型糖尿病と診断された人を含め男性の14.5%、女性の9.9%が糖尿病と判定された。解析した結果、過体重か肥満の妻をもつ男性は、糖尿病を発症するリスクが高いことが判明した。BMIが30の妻をもつ男性は、BMIが25の妻をもつ男性に比べ、2型糖尿病を発症するリスクが33%上昇していた。
さらに解析した結果、妻のBMIが5増加するごとに、その夫の2型糖尿病の発症リスクは21%上昇することが判明した。一方で、夫のBMIの増加は、その妻の糖尿病の発症リスクに影響しないことも分かった。
パートナーが肥満だと自分も糖尿病になりやすい
「一般的に、夫婦は自分の体格に似た人をパートナーに選ぶ傾向があります。同様に生活スタイルも共有する可能性が高いのです。パートナーが糖尿病になりやすい生活スタイルをもっていると、もう片方も糖尿病の発症リスクが高いのです」と、オーフス大学のオーフス シルバーマン-レタナ氏は言う。
2型糖尿病を予防・改善するための保健指導は、身体的・行動的・社会的特徴を共有しやすいカップルを対象とすると効果が高い可能性がある。
「現在の保健指導の多くは個々の対象者に焦点を当てていますが、これでは情報の層が薄くなってしまうおそれがあります。2型糖尿病の発症に影響しやすいソーシャルネットワークにもっと目を向けるべきです」と、シルバーマン-レタナ氏は言う。
研究グループは、この研究をデンマークの子供とその親、祖父母などに拡大し、糖尿病の発症リスクを高める社会的要因を探る研究を計画している。「家族は社会的な関係の基礎となるものです。家族に着目した保健指導により大きな成果を得られる可能性があります」としている。
Spousal diabetes and obesity as risk factors of incident type 2 diabetes: analysis from the English Longitudinal Study of Ageing(第53回欧州糖尿病学会学術集会 2017年9月13日)Studies on UK couples suggest they share the risk of obesity and type 2 diabetes(Diabetologia 2017年9月11日)
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