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10月は「乳がん啓発月間」 定期的なマンモグラフィ検診は効果的

 毎年10月の「乳がん啓発月間」に、乳がんの早期発見を呼びかける「ピンクリボン運動」が全国的に行われている。乳がんの発症数は増加しているが、適切な知識を持っていれば、早期発見・治療が可能だ。
 がんの中で、日本の女性がもっとも多くかかるのが乳がんだ。乳がんにかかる女性は年々増加しており、年間8万人以上が新たに発症している。乳がんの早期発見のために行われている主な検査は、マンモグラフィと超音波検査で、それぞれに特徴がある。
年に1回のマンモグラフィ検診を受けると死亡リスクが低下
 自治体の乳がん検診で40歳以上の女性を対象に2年に1回行われているのはマンモグラフィ検診だ。マンモグラフィではX線検査で、腫瘤(がん)や石灰化が確認できる。

 日本乳癌検診学会によると、現在のところ、乳がんの死亡率を低下させる効果が証明されている検査方法はマンモグラフィのみだ。

 しかし、2013年に実施された「国民生活基礎調査」によると、日本の女性の乳がん検診の受診率は43.4%と低い。がん検診の国際比較をみても、日本の乳がん検診は、OECD(経済協力開発機構)加盟国30ヵ国の中で最低レベルに位置している。例えば、米国では8割以上の女性がマンモグラフィー検診を受診している。

 米国のコロラド大学医学部の研究で、40歳を過ぎた女性は、年に1回のマンモグラフィの乳がん検診を受けると、死亡リスクを40%減らせることが分かった。この研究は、米国がん学会が発行する医学誌「Cancer」に発表された。

 「40~84歳の女性は年1回のマンモグラフィ検診」を受けることで、「2年に1回」の場合に比べ、乳がんによる死亡をもっとも多く低減できることが明らかになった。乳がんを早期発見するために、マンモグラフィ検診を定期的に受けることが欠かせない。
「高濃度乳房」の女性は乳がんを見つけにくい
 しかし、注意しなければならないのはマンモグラフィの乳がん検診ですべての乳がんを発見できるわけではないことだ。特に若い女性は「高濃度乳房」である場合が多く、全体に白く写り、がんを見つけにくくなる。

 乳房の土台を作っている「乳腺実質」は、乳汁を作る乳腺と、乳汁を乳頭に運ぶ管から形成されている。その周りを脂肪組織が囲むように覆っている。このうち高濃度乳房とは、乳腺実質の割合が多い乳房のことだ。

 乳房にX線を照射すると、乳腺実質は白く、脂肪組織は黒く写し出される。高濃度乳房の患者では、乳腺の割合が多いため、乳房の大部分が白く、そして濃く写る。

 マンモグラフィで撮影すると腫瘍(乳がん)の部分が白く映るが、高濃度乳房の方の場合、乳房の多くの部分が強い白色で映し出されるため、腫瘍が検出されにくくなってしまう。そのため、高濃度乳房の女性では、乳がんなどの異常が発見されにくくなる。

 日本乳癌学会によると、日本人女性のおよそ4割は乳腺の密度が高い高濃度乳房だと推定されている。
乳がん検診を受診した女性に高濃度乳房を伝える仕組みが必要
 これを受けて、厚生労働省の「がん検診のあり方に関する検討会」は、「高濃度乳房」の実態を把握するための調査などを実施する研究班を立ち上げることを決めた。

 乳がんの発症率が高くなる40歳代の女性は、高齢者と比較して、高濃度乳房の比率が高いことが分かっている。また、日本人を含むアジアの女性では、欧米の女性と比べ、高濃度乳房の比率が高いとされている。

 高濃度乳房の場合、脂肪性乳房よりもマンモグラフィの診断精度が落ちてしまうが、日本では高濃度乳房であるかどうかを検診受診者に通知していないケースが多い。

 乳がん検診を受診した女性に高濃度乳房のことを十分理解できるよう説明を行い、通知後に適切な行動をとれるよう指導できる体制の整備が必要だという。

 高濃度乳房の告知を行う動きは海外でも広がっている。米国では半数以上の州で高濃度乳房の告知を行っている。米国では2009年から8年間で27州において告知を行うようになった。
超音波検査を加えるとメリットがある
 受診者への高濃度乳房の通知について問題提起されたことで、乳がん検診ではマンモグラフィに追加して、超音波検査も行うべきではないかという議論もされており、日本乳癌検診学会のワーキンググループで対応策を検討している。

 超音波検査は、「高濃度乳房」の若い女性の乳がんを発見するのに適している。人間ドックなどで任意で行う検査だが、乳がん検診で精密検査が必要と診断された人は保険診療で受けられる。

 厚生労働省が立ち上げた「J-START」試験では、超音波検査を併用する検診と併用しない検診(マンモグラフィのみ)を比較する試験を世界ではじめて実施し、超音波検査が有効かどうかを検証している。対象となっているのは40歳代の女性だ。

 その結果、マンモグラフィと超音波検査の両方を行う検診で、早期乳がんの発見率は約1.5倍に上昇した。
月に1度のセルフチェックも効果的
 乳がんは体表にできるため、自分で発見できる数少ないがんのひとつだ。そのため、マンモグラフィや超音波の検査に加え、月に1度はセルフチェックを行って、乳房に変形やしこりがないかチェックすると効果的だ。

 日本乳癌学会もウェブサイトの一般向けページで、「一部の乳がんはマンモグラフィで写し出せない場合があることも知られており、マンモグラフィ検診を受けていれば万全ということではありません。マンモグラフィ検診を受けて『異常なし』と判定されていても、自己検診でご自分の乳房に何か気になることがあれば医療機関を受診してください」と説明している。

 自分の胸の正常な状態を知っておくことで、ほんの少しの違和感に気づくことができる。早期のがんである非浸潤がんはがん細胞が乳管の中だけにとどまっている状態だが、ごく早期にはまだしこりとして感じることはできない。触ってみて「何か違う」と感じたらすぐに受診することが大切だ。こうして自分の乳がんを早期発見した人も多い。

 しこりや変形がないかどうかは、以下の手順で確認していく。

・ 鏡に向かって腕を上げて両腕を上げて、乳房に変形や左右差がないかチェックする。

・ 放射線状、または渦を描くように手を動かしてしこりの有無をチェックする。入浴時は石けんをつけるとすべりがよくなり、調べやすくなる。

・ 仰向けになってあまり高くない枕、あるいはタオルを折り、背中の下に入れる。乳房の外側から内側へ指をまんべんなく滑らせ、しこりの有無をチェックする。

日本乳癌学会
対策型乳がん検診における「高濃度乳房」問題の対応に関する提言(日本乳癌検診学会)
がん検診のあり方に関する検討会(厚生労働省)
Comparison of recommendations for screening mammography using CISNET models(Cancer 2017年8月21日)
[Terahata]

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