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科学的根拠に基づく「産業保健における復職ガイダンス2017」を公開
2017年12月14日
EBM普及推進事業Minds(マインズ)はこのほど、『科学的根拠に基づく「産業保健における復職ガイダンス2017」』(編集/発行:日本産業衛生学会 関東地方会)をホームページで公開した。同ガイダンスは、がんや筋骨格系障害、メンタル不調などからの復職を総論的に取り上げ、エビデンス評価と推奨作成を行うことで、休職、復職に関する産業保健活動介入について推奨を提示する国内では初めての試み。
近年は休職者数が急激に増加し、特にメンタルヘルス疾患による休職期間の長期化が顕著になっている。そのため、健保組合における傷病手当金の負担増加や、職場における不公平感が社会問題になっているが、日本の主治医や産業医は休職者に復職を急がせない風潮にある。
一方、海外では早期の復職を推奨することが一般的。そこで日本でも可能な限り休職期間を短くするための介入と、適正な復職判断、復職時の合理的配慮についてエビデンスをまとめ、科学的根拠に基づく推奨を提示しようと、2017年5月、同ガイダンスが作成、発行された。対象は産業医はもちろん、産業医が未選任または十分に機能していない中小事業場を含めた、衛生管理者、保健職、人事担当者などの産業保健スタッフ。
内容によると、会社の産業保健スタッフなどが休職開始から4週間をめどに最初の照会を行う。主治医からの診断書で医療的ケアの見通しを確認し、合意が得られた場合は、産業医などの医療スタッフの協力を得て、以下のような介入を行うよう推奨している。
リワークなど、認知行動療法(CBT)などを活用した復職支援プログラム
リハビリテーションを含む通常の医療措置に加えて、復職支援プログラム(リワーク)を条件付きで推奨する。特に、筋骨格系障害、メンタルヘルス不調による休職者に対して推奨。復職支援プログラムは、リワークとして医療機関が医療保険で提供する医療リワーク、障害者職業センターの作業リワーク、民間Employee Assistance Program (EAP)や会社独自のプログラムなど民間で行われるもの、の3種類が提供されている。産業医や会社はこれらへの参加を強制することはできないが、積極的に休職者に情報を提供し、医療機関などと連携しながら、復職支援プログラムで段階的に復職準備性を確認することが推奨される。
主治医など臨床との連携
メンタルヘルス不調において、臨床との連携強化は早期復職に関して効果がある可能性が高い。筋骨格系障害において、臨床との連携強化は、特に休業が長期化した場合の早期復職に関して効果のある可能性がある。本人の同意があれば、産業医等が不在な中小企業においても人事労務担当者が主治医などと連携することが可能。
ソーシャルサポートによる介入
休職中の労働者に対して、ソーシャルサポートはBest practiceとして提案する。本人の希望と会社の風土によっては、上司・同僚による介入も選択肢となる。ただし家族関係、職場の人間関係によって有用性が異なるため、関わる人の人選、実施の時期、頻度は、慎重に考慮する必要がある。
時短勤務など復職時の配慮
軽減作業や時短勤務など復職時の配慮についても推奨。
ガイダンスでは、エビデンスに基づく推奨に至った経緯や、各推奨の費用対効果や実行可能性について詳しく解説。画一的な産業保健活動を強制するものではないが、働き方の多様性への柔軟な対応が求められる中、「復職時の就業の合理的配慮について、社内の規則等を見直す良い機会と捉えていただきたい」としている。 科学的根拠に基づく「産業保健における復職ガイダンス2017」(EBM普及推進事業Minds)
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