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自殺予防を地域で強化 自治体向け「自殺対策計画」ガイドライン策定

 厚生労働省は自治体が自殺対策計画を策定する際のガイドラインを作成した。都道府県に「いのち支える自殺対策推進本部」(仮称)を設置し、幅広い職員が自殺予防に参加することを求めている。
 日本は先進国で自殺が多く、減少させるため地域の取り組みを強化する必要がある。全ての人がかけがえのない個人として尊重される社会、「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現を目指すという。
2026年までに自殺死亡率を30%以上減少させるのが目標
 厚生労働省は自治体が自殺対策計画を策定する際のガイドラインを作成した。

 国は2016年の「自殺対策基本法」の改正で、自殺対策の地域間格差の解消を目指し、すべての都道府県と市区町村に「自殺対策計画」の策定を義務付けた。改正法では策定する期限は設けていないが、厚労省は都道府県に対して2017年度中、市区町村には2018年度までの作成を呼びかけている。

 2006年に「自殺対策基本法」が制定されて以来、それまで「個人の問題」とされてきた自殺は「社会の問題」として認知されるようになってきた。その成果により、自殺者数の年次推移は減少傾向にあり、2016年が2万1,897人(男性 1万5,121人、女性 6,776人)と7年連続で減少している。
 しかし、日本の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺による死亡率)は、主要先進7ヵ国の中でもっとも高く、2014年は19.5人だった。フランスは15.1人、米国は13.4人、カナダは11.3人にとどまる。
 政府は2017年に、国の指針となる「自殺総合対策大綱」を閣議決定した。大綱では自殺死亡率を2026年までに30%以上減少させ、他の先進国と同水準まで引き下げることを目標としている。
地域の自殺対策を強化「幅広い職員が対応を」
 ガイドラインでは、自治体のさまざまな事業に自殺対策の視点を入れるべきだと指摘。

 自治体内の関係者間で「地域自殺実態プロファイル」を共有し、どういった年代や性別、職業の住民の自殺が多いのか(たとえば「40~59歳の男性の無職者で独居の人」「60歳代以上の女性で同居人がいる人」「20~39歳の男性の無職者で独居の人」など)、また全国平均と比べどんな特徴があるのかなど、地域の自殺実態の情報を共有することを求めている。

 自殺対策が「生きることの包括的な支援」として実施されるべきことなどを基本理念として、自殺対策の地域間格差を解消し、誰もが「生きることの包括的な支援」としての自殺対策の支援を受けられるようするのが目標だ。

 自殺対策についてはとりわけ、地域共生社会の実現に向けた取組や、生活困窮者の自立支援制度などとの連携を推進することを重視。自殺の要因となり得る生活困窮、児童虐待、性暴力被害、ひきこもり、性的マイノリティなど、関連の分野での連携の取組みを求めている。
「いのち支える自殺対策推進本部」を設置
 さらに、都道府県知事などを責任者とする「いのち支える自殺対策推進本部」(仮称)を設置し、「自殺対策計画」を策定することを求めている。

 精神保健福祉センターや保健所とも連携し、自殺総合対策推進センターの協力を得ながら、行政全体として自殺対策を推進する体制を整える。庁内の関係部局が幅広く参画し、行政全体として体制をつくることが必要だ。

 都道府県のレベルで対応しようとすると、地域的な特徴が埋もれてしまう可能性があるので、二次医療圏や市町村の単位で把握することを促している。「地域自殺実態プロファイル」を使って、都道府県内の地域ごとの実態を把握することを求めている。
多くの関係者が当事者意識をもって計画に参加
 地域の自殺対策では、計画策定のプロセスにできるだけ多くの関係者に関わってもらい、「これは自分たちが関わって作った計画だ」という当事者意識をもつ人の輪を広げていき、地域の自殺対策の担い手を増やしていくことが重要だとしている。

 ▽精神科医療、▽保健、▽福祉、▽教育、▽労働などの各施策の連動性を高めて、相談機関のネットワークを機能させることが必要で、社会全体の自殺リスクを低下させるために、「対人支援のレベル」「地域連携のレベル」「社会制度のレベル」のそれぞれで総合的に推進することが重要としている。

 自殺に対応できる地域のセーフティーネットを整備するためには、行政トップのリーダーシップが欠かせないとして、2016年度から「地域自殺対策トップセミナー」を都道府県単位で順次開催。行政トップが関わる庁内横断的な体制を整えることを求めている。

 さらに、5年後までの自治体職員(管理職と一般職)の自殺対策研修受講率を70%以上に引き上げ、国・民間団体が主催する「過労死等防止対策推進シンポジウム」の後援などを通じて、過労自殺を含む過労死の防止に向けた啓発も行う。小中学校でも自殺予防の教育の実施率など数値目標を定めることを求めている。
4人に1人が「本気で自殺したいと思ったことがある」
 厚生労働省が2017年に公表した意識調査では、「本気で自殺したいと思ったことがある」という人は成人の4人に1人に上るという。過去に実施した調査と比べて高い割合だ。

 調査は、2016年に全国の20歳以上の男女3,000人を対象に実施し、回収率は67.3%(2,019人)だった。

 調査によると、自殺を考えた経験がある人は、男性で21.4%、女性で25.6%に上った。女性が男性を上回っており、特に女性の30歳代(32.3%)、50歳代(31.0%)が高い傾向にある。

 また、自殺を考えた時、どのように乗り越えたかを複数回答で聞いたところ、「趣味や仕事などで気を紛らわせるように努めた」(36.7%)でもっとも多く、次いで「家族や友人、職場の同僚ら身近な人に悩みを聞いてもらった」(32.1%)だった。

 今後の自殺対策について、児童生徒が自殺予防について学ぶ機会があった方が良いと思うか聞いたところ、「そう思う」と答えた人の割合は83.1%に上った。

 自殺予防のためどのようなことを学ぶべきかという質問では、「周囲の人に助けを求めることが恥ずかしくないこと」(71.2%)という回答が多く、次いで「ストレスへの対処方法を知ること」(51.4%)が続いた。

 一方、自殺防止の対策として自治体が実施している電話相談「心の健康相談統一ダイヤル」について、内容を知っていると答えた人は6.9%にとどまった。
地域自殺対策計画策定ガイドライン(厚生労働省2017年12月4日)
自殺対策(厚生労働省)
平成28年度自殺対策に関する意識調査(厚生労働省)
[Terahata]
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