ニュース

肥満や糖尿病の対策はカップルで 健康改善は夫婦に伝染しやすい

 夫婦の片方が体重コントロールに取り組むと、もう片方も体重を減らせる可能性があることが、米国の130組の夫婦を対象とした研究で明らかになった。 夫婦の片方が糖尿病を発症すると、もう片方も糖尿病になりやすいことも分かっている。
 「健康改善の努力をしている人々は、自分自身を助けるだけでなく、他の人を助けることもできる」と、研究者は指摘している。
生活改善は自身を助けるのにとどまらない
 夫婦は家庭で食事などの生活スタイルを共有している。夫妻の片方が生活スタイルを変え、体重コントロールを決意すると、家族にも影響し、双方が健康的になれる可能性がある。

 「体重コントロールは、自分自身を助けるだけのものではありません。家族にとっても有益な影響をもたらします」と、米国のコネチカット大学のエイミー ゴリン教授(行動科学)は言う。ゴリン教授は健康を志向した行動の環境や社会的な側面について研究している。

 ゴリン教授らは、カップルの1人が体重を減らすのに成功すると、もう1人は積極的に介入していないにしても、やはり体重を減らすケースが多いことを発見した。
減量に成功すると、パートナーにも良い影響が
 この研究には、体重管理プログラムを提供する企業「ウェイト ウォッチャー」が資金援助を行った。研究チームは、参加したカップルをウェイト ウォッチャーの減量プログラムに参加するグループ(平均年齢 55.3歳)と、体重を自己管理するグループ(同 52.5歳)にランダムに割り付けて、カップルのうち片方だけに減量を行ってもらい、6ヵ月間追跡した。

 減量プログラムの参加者はオンラインツールで体系的な指導を受け、自己管理をした参加者には減量に関する資料を受け取り体重を自分で管理した。いずれも、健康的な食事、運動、および体重管理戦略(全体のカロリーの管理、脂肪や炭水化物の栄養素、低カロリーの食事についてなど)に関する情報提供が行われた。

 その結果、6ヵ月後に、減量プログラムに参加したグループは平均して4.50キログラム、自己管理をしたグループは3.23キログラムの減量に成功した。また、減量した人のパートナーの32%が6ヵ月後には3%以上の減量を達成していた。
1人が行動を変えると、周囲の人々も変化が起こる
 パートナーが体重を減らす治療に取り組んでいると、自身が未治療で生活改善に参加していないにも関わらず、3分の1が6ヵ月後に体重の3%を減らせるという結果になった。

 肥満や過体重の人が体重を3%減らすと、血糖値や血圧値、脂質値を改善することが多く、健康上の恩恵が大きい。

 「食生活や運動習慣を変えると、肯定的であるにしても否定的であるにしても、他の家族にも影響を与えます。夫婦の片方が健康的になると、もう片方も健康になれることは少なくありません。家族はこうした"波及効果"を共有しやすいのです」と、ゴリン教授は言う。

 「糖尿病や肥満など、生活スタイルを改善する必要のある疾患の治療に家族の1人が取り組むと、他の家族も巻き込んで、双方が健康的になれるケースは少なくありません。1人が行動を変えると、周囲の人々も変化します」と、ゴリン教授は言う。

 体重コントロールに取り組む夫婦の行動は、相互に影響し合う傾向があることも分かった。つまり、パートナーがスムーズに体重を減らすと、もう片方も無理なく体重を減らせるようになり、パートナーが手こずると、片方もなかなか体重を減らせなくなるという。

 「ポジティブな面では、配偶者はパートナーの行動を模倣し、より頻繁に体重を測定し、自分もカロリー計算するようになり、低脂肪食を選ぶようになります」と、ゴリン教授は指摘している。
配偶者が糖尿病の人は注意が必要
 「夫が糖尿病」「妻が糖尿病」という人も注意が必要だ。「配偶者が2型糖尿病であると、自身が糖尿病を発症する可能性が高い」という研究も発表されている。

 肥満や2型糖尿病の発症には「遺伝因子」と「環境因子」が関わっている。家族や肉親が糖尿病だと、糖尿病の家族歴がない人に比べて糖尿病を発症しやすいことが知られている。

 血縁関係のない夫婦であっても、2型糖尿病を発症しやすい生活スタイルを共有している場合が多い。食べ過ぎ、運動不足、肥満、加齢、ストレスなどの環境因子を、夫婦が共通してもっている可能性がある。

 7万5,498組のカップルを対象にした国際的な調査では、配偶者が2型糖尿病であると、自身が糖尿病を発症する割合が26%上昇することが判明した。
夫婦で生活を変えることにチャレンジ
 「もしあなたの配偶者が2型糖尿病であるなら、あなた自身が糖尿病を発症する可能性があります。糖尿病の配偶者をもつ人は、糖尿病を発症する割合が上昇することが、調査で確かめられました」と、カナダのマックギル大学健康センターのカベリ ダスグプタ氏はいう。

 糖尿病の治療には、食事や運動などの生活スタイルの改善が不可欠だ。患者にとっては、日常生活を変えることにチャレンジする必要がある。配偶者が糖尿病に対する理解をもっていれば、治療に取り組みやすくなる。

 「配偶者の糖尿病発症は、夫婦で生活スタイルの改善に参加してもらうきっかけになります。配偶者が糖尿病であるという人は、健診のチャンスを逃さないようにし、定期的に検査を受けることが重要です」と、ダスグプタ氏は強調している。

Scientists Identify Weight Loss Ripple Effect(コネチカット大学 2018年2月1日)
Randomized Controlled Trial Examining the Ripple Effect of a Nationally Available Weight Management Program on Untreated Spouses(Obesity 2018年2月1日)
Diabetes: We are in it together(マックギル大学ヘルスセンター 2014年1月22日)
Spousal diabetes as a diabetes risk factor: A systematic review and meta-analysis(BMC Medicine 2014年1月24日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年06月10日
【アプリ活用で運動不足を解消】1日の歩数を増やすのに効果的 大阪府健康アプリの効果を8万人超で検証
2025年06月09日
【睡眠改善の最新情報】大人も子供も睡眠不足 スマホと専用アプリで睡眠を改善 良い睡眠をとるためのポイントは?
2025年06月09日
健康状態が良好で職場で働きがいがあると仕事のパフォーマンスが向上 労働者の健康を良好に維持する取り組みが必要
2025年06月09日
ヨガは肥満・メタボのある人の体重管理に役立つ ヨガは暑い夏にも涼しい部屋でできる ひざの痛みも軽減
2025年06月05日
【専門職向けアンケート】飲酒量低減・減酒に向けた酒類メーカーの取り組みについての意識調査(第2回)
2025年06月02日
【熱中症予防の最新情報】職場の熱中症対策に取り組む企業が増加 全国の熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
2025年06月02日
【勤労者の長期病休を調査】長期病休の年齢にともなう変化は男女で異なる 産業保健では性差や年齢差を考慮した支援が必要
2025年06月02日
女性の月経不順リスクに職場の心身ストレスが影響 ストレスチェック活用により女性の健康を支援
2025年06月02日
自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善 森が人間の健康とウェルビーイングを高める
2025年05月30日
都民の健康意識は高まるも特定健診の受診率は66% 「都民の健康と医療に関する実態と意識」調査
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶