ニュース
「2時間の飲み会」の危険 アルコールのイッキ飲み・アルハラを防止
2018年04月11日

短時間の大量飲酒は、アルコール中毒だけでなく、事故や怪我の原因になる。若者のイッキ飲みやアルコールハラスメントについて注意を呼び掛けるキャンペーンが開始された。
アルコール過剰摂取は、急性中毒には至らなくても、外傷を負う危険が高いことが明らかになっている。
アルコール過剰摂取は、急性中毒には至らなくても、外傷を負う危険が高いことが明らかになっている。
短時間の多量飲酒でリスクが上昇
4月はあちこちで歓送迎会などが開かれる季節だ。アルコール依存や飲酒運転防止などに取り組む市民団体「ASK」(アルコール薬物問題全国市民協会)などがつくる「イッキ飲み防止連絡協議会」は毎年この時期、「イッキ飲み・アルハラ防止キャンペーン」を展開している。
イッキ飲み・アルハラ防止キャンペーン
今年のテーマは「2時間の飲み会、『死』という結末を迎えないために」だ。同協議会はポスターやチラシを全国の大学に配布し、飲酒時の怪我や外傷の事例などをイラストで説明した啓発用レジャーシートも作製した。
イッキ飲みやアルハラというと、アルコール中毒の問題にばかり注目しがちだが、イッキ飲みやアルコールハラスメント(アルハラ)による深刻な被害についても注意したい。

2時間以内の大量飲酒が危険
同協議会によると、2008年から10年間で27人の大学生が飲酒で命を落としているという。また、アルコールによって健康を損なった若者の多くは、飲み会開始2時間以内に、急激かつ大量に飲酒していた傾向がある。
ASK代表の今成知美氏は、「飲酒の強要、イッキ飲ませ、飲めない人への配慮を欠くことなどは、アルハラに相当する。飲酒の強要をやめたり、飲めない人に配慮することが必要」と指摘する。
キャンペーンでは、SNSを通じて飲み会でのトラブル、アルコールの知識や問題に関するニュースを配信するとともに、Youtubeで動画を公開、大量飲酒やアルハラの防止のための工夫などの投稿も募集している。投稿や検索は、ハッシュタグ(#)を加えた「#こわい飲み会」で行える。
「空気」を読めと、飲まされて。(イッキ飲み防止連絡協議会)
アルコール中毒だけでなく事故も発生 筑波大学が調査
若年者におけるアルコール過剰摂取を原因とする死亡は世界で年間32万人に達しており、その死亡原因の多くを外傷が占めている。
筑波大学の研究グループは、3大学の学生2,177人を対象とした調査により、アルコール過剰摂取は、急性中毒には至らなくても外傷を負う危険が高いことが分かった。
アルコール過剰摂取は世界的な問題で、2010年に世界保健機構(WHO)が「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を発表し、2013年にはWHOが各国に以下の4つの選択肢を提示した――(1)人口1人当たりの総アルコール消費量の削減、(2)一時的な大量飲酒(ビンジ飲酒など)傾向の削減、(3)飲酒に起因する罹病率・死亡率の削減、(4)その他加盟国の実情に合うもの。
日本でも2013年に「アルコール健康障害対策基本法」が策定され、国の方針である「アルコール健康障害対策推進基本計画」が2016年に策定されている。
短時間での多量飲酒はビンジ飲酒(Binge drinking)と呼ばれるが、国の基本計画などではビンジ飲酒に関する基準は明らかにされていない。

大学生の半数がビンジ飲酒を経験
そこで、研究グループは日本の大学生2177人を対象に、アルコールの過剰摂取とアルコール関連外傷(酔いによる事故や怪我)との関連性を調べた。今回の研究では、男性2時間で純アルコール50g(5ドリンク)以上、女性2時間で純アルコール40g(4ドリンク)以上摂取した場合とした。
純アルコール20gの目安は、ビール(アルコール度数 5%)500ml、日本酒(15%)1合180ml、ウイスキー(43%)ダブル1杯60ml、ワイン(12%)小グラス2杯200ml、チューハイ(7%)350ml缶、焼酎(25%)小コップ半分100ml。
その結果、ビンジ飲酒を過去1年間に1回以上経験したのは男性 56.8%、女性 47.8%だった。アルコール関連外傷を過去1年間に経験したのは4.9%で、そのうち97.2%がビンジ飲酒を過去1年間に1回以上経験していた。
ビンジ飲酒でアルコール関連の外傷が25.6倍に
解析したところ、年1回以上ビンジ飲酒を行っていた学生は、そうではない学生と比べて過去1年間のアルコール関連外傷の経験が25.6倍であることが分かった。
アメリカやノルウェー、スペインの研究では月1回以上のビンジ飲酒で関連外傷は3.9~8.9倍に増加すると報告されており、日本では頻度は少ないが、外傷のリスクはきわめて高いことが示された。「日本人の体格や体形、アルコール代謝などが影響している」と考えられるという。
多くの大学でアルコール摂取に関する指導が新入生オリエンテーションなどで行われているが、未成年飲酒や急性アルコール中毒だけでなく、ビンジ飲酒の教育も行う必要があることが示された。
特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)イッキ飲み・アルハラ防止キャンペーン2018
アルコール健康障害対策基本法推進ネットワーク
Association between Excessive Alcohol Use and Alcohol-Related Injuries in College Students: A Multi-Center Cross-Sectional Study in Japan(Tohoku Journal of Experimental Medicine 2017年6月30日)
アルコール健康障害対策基本法
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2023 SOSHINSHA All Rights Reserved.

「アルコール」に関するニュース
- 2022年10月24日
- 【新型コロナ】不安やうつを予防するのに「健康的な食事」が効果 ストレスになるニュースを遮断するのも有効
- 2022年10月24日
- 「超加工食品」の食べ過ぎで大腸がんリスクが上昇 不健康な食事は肥満・メタボの原因にも
- 2022年10月20日
- 改善が見られたものは約5割に 課題は次期プランへー健康日本21(第二次)最終評価報告書
- 2022年10月17日
- 【新型コロナ】重症化リスクを高める要因は高齢・タバコ・糖尿病・肥満 危険因子を減らす対策が必要
- 2022年10月03日
- 「痩せ」と「朝食抜き」の人でタンパク尿が増加 タンパク尿は腎臓病のリスクを知らせるSOS
- 2022年09月26日
- 【特定健診】健診の無償化に受診促進の効果が 「若年層や低所得層への受診促進策も必要」
- 2022年09月26日
- 保健指導では規則正しい生活リズムを重視 活動的な高齢者は幸福を感じやすく認知能力も高い
- 2022年09月12日
- 【新型コロナ】うつ・不安・ストレスなど「精神的苦痛」が新型コロナ長期化のリスクを46%高める
- 2022年09月12日
- 趣味をもつことが認知症の予防になる 楽しみのための活動はアルツハイマー病リスクを減少
- 2022年09月12日
- 慢性腎臓病(CKD)の検査や治療も男女で性差が 女性は腎臓病の検査を適切に受けられていない
最新ニュース
- 2023年01月31日
- 【新型コロナ】休校中に生活リズムが乱れた子供は睡眠時間が減少 夜型の生活をしている子供は要注意
- 2023年01月30日
- 【職場の保健指導】生活改善プログラムでは職場の雰囲気を変えることも必要 健康支援も個別化を
- 2023年01月30日
- 男性が育児に参加すると子供の成長に良い影響が メンタルヘルス不調が減少 男性の育児参画が必要
- 2023年01月30日
- 肥満者へのオンライン生活指導は効果がある 個別化した情報提供と専門家の助言が重要
- 2023年01月30日
- 患者を介護する「家族介護者」にも医療・介護の専門職のケアが必要 健康行動の適切な助言も専門職の役割