ニュース
アブラナ科野菜は「台所のドクター」 心疾患、脳卒中、がんのリスクを低下
2018年06月20日
キャベツ、ダイコン、小松菜、ブロッコリー、白菜などの「アブラナ科野菜」を食べている人は、がん、心疾患、脳血管疾患などの死亡リスクが低下するという研究が発表された。
栄養価の高いアブラナ科野菜
キャベツ、ダイコン、小松菜、ブロッコリー、白菜、チンゲンサイ・・・これらはどれも「アブラナ科野菜」だ。アブラナ科野菜は「台所のドクター」と言われるほど栄養価の高い。
そのアブラナ科野菜を多く食べている人は、死亡リスクが低下することが、日本の代表的なコホート研究である「JPHC研究」で明らかになった。
野菜は低カロリーで食物繊維やビタミン・ミネラルが豊富に含まれるだけではない。体に良い作用をするフィトケミカルも含まれている。ぜひ肥満や糖尿病などの生活習慣病の対策に活用したい食品だ。
なかでもアブラナ科野菜には、抗がん、抗炎症、抗酸化活性の作用がある「イソチオシアネート」を多く含まれる。イソチオシアネートは野菜などの辛味成分だ。
関連情報
アブラナ科野菜をよく食べると死亡リスクが低下
「JPHC研究」は日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・2型糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で実施されている多目的コホート研究。
国立がん研究センターなどの研究チームは、岩手、秋田、長野、沖縄、東京、茨城、新潟、高知、長崎、大阪の11保健所管内に、1990年1993年に在住していた45~74歳の男女8万8,184人を対象に、2014年まで追跡して調査した。
食事についての調査では、アブラナ科野菜(キャベツ、ダイコン、小松菜、ブロッコリー、白菜、チンゲンサイ、カラシ菜、フダンソウ、タクアン、野沢菜漬け、白菜漬け)の摂取量を調べた。
16.9年(中央値)の追跡期間中に、1万5,349人が死亡した。アブラナ科野菜の摂取量により5つのグループに分類して比較したところ、全死亡リスクは、アブラナ科野菜の摂取量がもっとも少ないグループと比較して、もっとも多いグループで、男性では14%、女性では11%低いことが明らかになった。
がん、心疾患、脳血管疾患の死亡リスクが低下
さらに、アブラナ科野菜の摂取と疾患別の死亡との関連を調べたところ、男性では摂取量がもっとも多いグループで、死亡リスクはがんが16%低下した。有意差は出なかったものの、心疾患でも17%、脳血管疾患では11%、死亡リスクがそれぞれ低下した。
女性では、アブラナ科野菜摂取量がもっとも多いグループで、死亡リスクは心疾患が27%、外因が40%、それぞれ低下した。有意差は出なかったものの、脳血管疾患でも22%低下した。
個別のアブラナ科野菜と全死亡リスクの関連についても調べてみたところ、男性ではブロッコリー、たくあん摂取量がもっとも多いグループで、女性ではダイコン、ブロッコリー摂取量がもっとも多いグループで死亡リスクが減少した。
アブラナ科野菜のイソチオシアネートの効果
なぜアブラナ科野菜の摂取量が多いと死亡リスクが低下するのか? 研究チームは「アブラナ科野菜にはイソチオシアネートや抗酸化性ビタミンなどが多く含まれている」と指摘している。それらの抗炎症および抗酸化作用が死亡リスクの低下に寄与している可能性がある。
喫煙状況別で調べたところ、男性では喫煙状況に関係なく、アブラナ科野菜摂取量が多いグループで全死亡リスクが低下する傾向がみられた。イソチオシアネートを多く摂取することで、たばこに含まれる発がん物質前駆体の活性化が抑制されているとみられる。
女性では、アブラナ科野菜の摂取量が多いと、心疾患や脳血管疾患の死亡リスクが低下することは、過去の研究でも確かめられている。「イソチオシアネートの抗炎症作用によるものである可能性がある」と、研究者は説明している。
また、アブラナ科野菜を摂取することで、認知機能の改善効果、抑うつの予防効果を得られるという報告もあり、そのことが事故死や自殺予防につながっている可能性もあるという。
厚生労働省の食事ガイドラインでは、野菜摂取の目標量を「1日350g以上、そのうち緑黄色野菜を120g以上」としている。
毎日食べる野菜にアブラナ科野菜を含めると、健康増進の効果を得られそうだ。
Cruciferous vegetable intake and mortality in middle-aged adults: A prospective cohort study(Clinical Nutrition 2018年4月24日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「栄養」に関するニュース
- 2023年08月28日
- 極端な「糖質制限」や「脂質制限」は危険? 日本人に適した食事スタイルは? 8万人超を調査
- 2023年08月28日
- カラフルな野菜を食べている人は認知症の発症が少ない ホウレンソウやブロッコリーを食べて認知症を予防
- 2023年08月28日
- 週末の「寝だめ」では平日の睡眠不足のダメージを回復できない 寝不足が心臓の健康に悪影響
- 2023年08月28日
- 高齢者の「フレイル」の発生リスクを40%低減 「要支援」の高齢者が通所系サービスを利用すると効果
- 2023年08月21日
- 朝食欠食が肥満やメタボのリスクを上昇 朝食を食べない人に共通する生活スタイルは?
- 2023年08月21日
- ストレスを解消する簡単で効果的な方法 「みんなと楽しく食べる」「睡眠を改善する」
- 2023年08月15日
- スマホやゲーム機で遊ぶ時間が長いと睡眠障害に 子供の言語力や認知力の発達が低下 食習慣も大切
- 2023年08月08日
- 若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
- 2023年08月07日
- 【がん予防の経済効果】 がんのリスク要因を減らして1兆円超の経済的負担を軽減 生活スタイルや環境の改善が重要
- 2023年08月01日
- 肥満やメタボになりやすい生活習慣は子供のうちに身についている 子供の頃から保健指導が必要