ニュース
メタボや肥満の人が「睡眠不足」を感じたら放置してはいけない理由
2018年06月20日
十分に眠れないことは、小さな問題ではない。単なる「睡眠不足」だと思って油断していると、心身の不調につながりやすい。睡眠不足を解消するとメタボや糖尿病が改善するという研究も発表されている。
睡眠不足が慢性化すると血糖値が上昇
睡眠不足に悩まされている人は多い。日本人は、特に就労者の睡眠時間が世界でもっとも短いと言われる。
就労者の睡眠時間を比較した経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本人の平均睡眠時間は7.5時間程度で、先進国でも群を抜いて短い。
睡眠不足が続いて、気力も体力も思考能力も著しく低下してしまうのを実感する人は多いが、睡眠不足の影響はそれだけではない。
睡眠不足が慢性化すると、空腹時血糖値が上昇し、基礎インスリン分泌能が低下するなど、メタボリックシンドロームや2型糖尿病のリスクが上昇するという調査結果がある。
多くの人の場合、睡眠時間が7時間を切ると、睡眠の負債が発生しはじめる。早く返済すればさほど問題はないが、睡眠不足が続いているという人は、睡眠を改善するための対策をするべきだ。
関連情報睡眠時間が7~8時間の人はメタボのリスクが低い
睡眠不足を解消すると糖質の摂取量を減らせる
慢性的な睡眠不足は、体内のホルモン分泌や自律神経機能にも大きな影響を及ぼすことが知られている。
睡眠不足がたった2日間続けただけで、食欲を抑えるホルモンであるレプチン分泌は減少し、逆に食欲を高めるホルモンであるグレリン分泌が亢進するため、食欲が増大することが分かっている。
英国のキングス コレッジ ロンドンの研究では、睡眠不足が続くと、とくに糖質を過剰に摂取したくなる傾向があることが分かった。睡眠不足を解消すると、糖質の摂取量を減らせるという。
研究チームは、睡眠時間が1日7時間未満の18~64歳の21人の男女を対象に、睡眠時間をあと1.5時間増やすことを目標に、睡眠改善のためのコンサルティングを行った。
その結果、平均して就眠時間が約1時間早まり、睡眠時間は約30分増え、86%で睡眠が改善した。睡眠が改善した人では1日の糖質の摂取量が平均9.6g減少した。
「睡眠不足によって、私たちの食行動までも影響を受けます。睡眠不足の人は、睡眠時間を1時間増やしただけで、食生活を改善し、健康的な食品を選べるようになることが分かりました」と、研究者は述べている。
睡眠不足の人は摂取カロリーが385kcal増える
キングス コレッジ ロンドンによる172人を対象とした別の研究では、睡眠不足の人は、1日の摂取カロリーが平均385kcal多くなるという。これは、カップ麺1杯分ほどの量に相当する。
「1日に摂取カロリーが1日に385kcal増えてしまうのは深刻です。慢性化すると、確実に体重増加につながります。肥満の原因は、摂取カロリーと消費カロリーのアンバランスです。睡眠不足が慢性化するとことで、摂取カロリーが増え、バランスが崩れやすくなります」と、研究者は述べている。
睡眠不足は、2型糖尿病やメタボリックシンドロームだけでなく、心筋梗塞や狭心症などの命に係わる深刻な疾患のリスクも上昇させる。冠動脈疾患といった生活習慣病にかかりやすくなることも明らかになっている。
「睡眠は簡単なアドバイスによって改善できます。食べ過ぎが気になっている人は、ご自分の睡眠を見直してみることをお勧めします」と、強調している。
日々の生活の中で睡眠時間はともすれば犠牲になりがちだ。しかし、睡眠問題は静かにしかし着実に心身の健康を蝕む。
睡眠習慣の問題や睡眠障害を放置せず、自分の睡眠状態に疑問を感じたら、かかりつけ医に相談をしてみよう。
Sleeping too much or not enough may have bad effects on health(BMC Public Health 2018年6月12日)Association between sleep duration and metabolic syndrome: a cross-sectional study(BMC Public Health 2018年6月13日)
Sleeping for longer leads to a healthier diet(キングス コレッジ ロンドン 2018年1月10日)
Sleep extension is a feasible lifestyle intervention in free-living adults who are habitually short sleepers: a potential strategy for decreasing intake of free sugars? A randomized controlled pilot study(American Journal of Clinical Nutrition 2018年1月10日)
Sleep deprivation may cause people to eat more calories(キングス コレッジ ロンドン 2016年11月2日)
The effects of partial sleep deprivation on energy balance: a systematic review and meta-analysis(European Journal of Clinical Nutrition 2016年11月2日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「特定保健指導」に関するニュース
- 2024年04月30日
- タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が
- 2024年04月25日
-
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠 - 2024年04月23日
- 生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
- 2024年04月22日
- 運動が心血管疾患リスクを23%低下 ストレス耐性も高められる 毎日11分間のウォーキングでも効果が
- 2024年04月22日
- 職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
- 2024年04月22日
- 【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
- 2024年04月22日
- 【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
- 2024年04月16日
- 塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
- 2024年04月16日
- 座ったままの時間が長いと肥満や死亡のリスクが上昇 ウォーキングなどの運動は夕方に行うと効果的
- 2024年04月15日
- 血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要