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低脂肪の食事で女性の「乳がん」リスクが低下 死亡リスクも低下
2018年06月20日

低脂肪食を続けた女性は、脂肪の多い食事を摂っていた患者に比べ、乳がんの死亡リスクが低下することが新たな研究で明らかになった。
低脂肪食が乳がんリスクを低下させる
発表されたのは、米国で実施されている「女性健康イニシアチブ」(WHI)研究の成果。この研究では、食事の改善が女性の健康にどのように影響するかを調べている。詳細は6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された。
同研究ではすでに、低脂肪食を摂っている女性は侵襲性の高いタイプの乳がんを発症する確率が低いことが明らかにされている。
「今回の試験では、乳がんの死亡リスクにおいても、脂肪が少なく果物や野菜の多い食事が良い効果をもたらすことが明らかになりました」と、研究を主導した米国のシティ オブ ホープ病院のローワン クレボウスキー氏は言う。
関連情報
低脂肪食で乳がんの死亡リスクが15%低下
研究チームは、乳がん診断後の生存率に対する低脂肪食の効果を明らかにするため、1993~1998年に米国40ヵ所の施設で行われているWHI研究のデータを解析した。
50〜79歳の閉経後の女性4万8,835人を無作為に、低脂肪食を摂る女性と、脂肪の多い食事を摂る女性に割り付けた。
低脂肪食を摂る女性グループ(1万9,541人)は、管理栄養士による食事のアドバイスを受け、脂肪摂取量を1日の摂取カロリーの20%未満に減らし、果物や野菜、未精製の穀物を多く摂った。
対照のグループ(2万9,294人)は、健康的な食事についてアドバイスを受けたが、食事スタイルを変えることは強く求められなかった。
低脂肪食を摂った女性のグループは、管理栄養士の継続的なアドバイスを受けながら8.5年(中央値)、食事の管理を続けた。
その結果、食事による脂肪摂取量が少ない女性は、乳がん発症後の死亡リスクが0.85倍に減少した(95%信頼区間 0.74-0.99)。
腹囲周囲径が88cm以上で、内臓脂肪の多かった女性ほど、乳がんの死亡リスク低下の効果は大きかった。
女性ホルモンの「プロゲスチン」が影響か
「脂肪を摂り過ぎている女性に、食事療法により介入し、脂肪の摂取量を減らすことで、乳がんの死亡リスクが低下しました。そうした女性では、体重も平均して2.3kg減少しました」と、クレボウスキー氏は言う。
なぜ低脂肪リスクが乳がんのリスクを低下させるのか。クレボウスキー氏は「プロゲスチンが影響している可能性があります」と述べている。
乳がんの多くは、女性ホルモンである「エストロゲン」(卵胞ホルモン)または「プロゲステロン」(黄体ホルモン)よって、がん細胞が増えることで発症する。
プロゲステロンは妊娠に関わるホルモンだ。子宮内膜や子宮筋の働きを調整したり、乳腺の発達などを促している。
脂肪のコントロールが大きな利点をもたらす
現代の女性たちに乳がんの発症が増えているのは、生涯の月経回数が増え、乳腺に強く作用するエストロゲンの分泌も長期間にわたっていることが影響していると考えられている。
プロゲステロンが少ないと相対的にエストロゲンが優位の状態となり、乳がんの発症リスクが上昇する。
低脂肪食を摂ることで、エストロゲンとプロゲステロンのバランスが整えられ、結果として乳がんのリスクが低下すると考えられる。乳がんのリスクが肥満傾向にある人の方が高くなるのも、ホルモンの作用によるものだ。
さらに、低脂肪食を摂った女性は、心血管疾患をはじめとする他の原因による死亡率も低かった。
「食事の脂肪をコントロールすることは、多くの女性に実行可能で、生涯のどの時点においても、健康に極めて大きなベネフィットをもたらします」と、クレボウスキー氏は指摘している。
City Of Hope/Women's Health Initiative Study Shows Low-Fat Diet Significantly Reduced Risk Of Death After Breast Cancer But Same Effect Was Not Seen For Other Cancers(シティ オブ ホープ病院 2018年6月1日)
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