ニュース

「老年医学推進5ヵ年計画」を学会が発表 人生100年時代の高齢者医療

 日本老年医学会は「健康長寿達成を支える老年医学推進5ヵ年計画」を発表した。日本で山積する高齢者医療に関する問題を5つのテーマにまとめ、具体的にどのように対応していくかを示している。
「75歳以上が高齢者」 理解の浸透を目指す
 「5ヵ年計画」は、日本老年医学会とワーキンググループ(代表:国立長寿医療研究センター老年学・社会学センター長/同学会副理事長・荒井秀典氏)が共同で策定したもので、6月に京都で開催された第60回同学会学術集会で発表された。

 同学会は2017年1月に、75歳以上を「高齢者」、65~74歳を「准高齢者」と定義することを提言。日本人の平均寿命が延びるなか、生物学的にみた年齢が10~20年前に比べて5~10歳は若返っていることなどを示した調査報告などを示した。

 医学的な検討をもとに提唱した新たな定義だが、必ずしも十分には理解されていない。そこで市民に対するシンポジウムやアンケートなどに加え、内閣府が実施する意識調査に学会として参加する方針などを掲げた。
「在宅医療介護ガイドライン」を作成
 その上で、この提言と同計画を通じて、超高齢化社会における医療や介護・福祉の在り方について、学会や行政にとどまらない国民的な議論を喚起していく重要性を強調している。

 日本老年医学会が掲げた柱は次の5つ。(1)老年医学・高齢者医療の普及・啓発、(2)フレイル予防・対策による健康長寿の達成、(3)認知症への効果的な早期介入と社会的施策の推進、(4)高齢者の定義に関する研究の推進と国民的議論の喚起、(5)基礎老化研究の育成・支援。

 計画では、医療関係者に加えて、行政、国民に対する老年医学の教育・啓発活動を推進していく方針。「在宅医療介護ガイドライン」などの作成・整備も推進していく。
フレイル・サルコペニア・認知症に対策
 教育・研究・臨床に取り組む老年医学センターの設置を目指すほか、将来的には医学以外の分野とも共同して全国の総合大学に学部横断的な老年学研究所を設置するよう働きかけていくという。

 専門医の育成の推進や、高齢者医療研修の標準化を行って非専門医への啓発にも取り組む。

 フレイル・サルコペニアについては、大規模コホート研究を計画しエビデンスを集めるほか、各地の活動における担い手として指導士などを養成したり、レジストリの構築し、実地での活動と組み合わせて質の向上や効率化などを進める体制を作る。

 認知症については、社会全体の理解を深め、認知症の人や家族の社会参加を促す取り組みを始める。予防に関するエビデンスなどを保健師などの専門職に周知するとともに、老年病専門医が認知症サポーターの育成に寄与し、そのスキルアップにも役割を果たすためのガイドを示す。
終末医療の社会的コンセンサスも形成
 ほかに、同学会が作成した「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を日本医師会と連携して普及させるほか、ポリファーマシー対策や減薬のエビデンスづくりに着手する。

 人生の最終段階などに受けたい治療やケアを家族や医療者と話し合う「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」を促進する仕組みづくりも進める。

 ロボット技術やAI(人工知能)を使った認知症支援の研究も推進する。老年医学会と関連学会が共同して、ICT、IoT、ロボット技術、AIに関する最新情報を交換する機会を設ける。

 理事長で大阪大学大学院内科学講座教授の楽木宏実氏は「日本では高齢者医療のさまざまな課題とともに、国民皆保険の危機、貧困高齢者の激増など多くの複雑な社会的課題が提示されている。その問題に具体的にどのような対応をすべきか、長期的な視野を持ちつつ、直近5年間に絞り込み計画を策定した」と述べている。

日本老年医学会
日本老年医学会「健康長寿達成を支える老年医学推進5か年計画」の始動
[Terahata]
side_メルマガバナー

「地域保健」に関するニュース

2025年06月10日
【アプリ活用で運動不足を解消】1日の歩数を増やすのに効果的 大阪府健康アプリの効果を8万人超で検証
2025年06月09日
【睡眠改善の最新情報】大人も子供も睡眠不足 スマホと専用アプリで睡眠を改善 良い睡眠をとるためのポイントは?
2025年06月09日
健康状態が良好で職場で働きがいがあると仕事のパフォーマンスが向上 労働者の健康を良好に維持する取り組みが必要
2025年06月09日
ヨガは肥満・メタボのある人の体重管理に役立つ ヨガは暑い夏にも涼しい部屋でできる ひざの痛みも軽減
2025年06月05日
【専門職向けアンケート】飲酒量低減・減酒に向けた酒類メーカーの取り組みについての意識調査(第2回)
2025年06月02日
【熱中症予防の最新情報】職場の熱中症対策に取り組む企業が増加 全国の熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
2025年06月02日
【勤労者の長期病休を調査】長期病休の年齢にともなう変化は男女で異なる 産業保健では性差や年齢差を考慮した支援が必要
2025年06月02日
女性の月経不順リスクに職場の心身ストレスが影響 ストレスチェック活用により女性の健康を支援
2025年06月02日
自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善 森が人間の健康とウェルビーイングを高める
2025年05月27日
スマホアプリを活用し社会人のメンタルヘルスを改善 スマホで学ぶ認知行動スキルがうつ状態を改善 睡眠改善を支援するアプリも
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶