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「健康寿命をのばそう!アワード」最優秀賞決定~介護予防・高齢者生活支援分野/母子保健分野~

 厚生労働省はこのほど、「第7回 健康寿命をのばそう!アワード」表彰式を開催。「生活習慣病予防分野」、「介護予防・高齢者生活支援分野」、「母子保健分野」のそれぞれで表彰を行った。
 このうち「介護予防・高齢者生活支援分野」の厚生労働大臣 最優秀賞では、長崎県佐々町の「地域力を生かした住民主体の地域づくり ~ 可能性を見いだし、可能性にかけた関わり~」が選ばれ、母子保健分野では静岡県「小さく生まれた赤ちゃんとママ・パパのための手帳による育児支援 しずおかリトルベビーハンドブック」が厚生労働大臣 最優秀賞に選ばれた。
 同アワードは生活習慣を改善し、健康寿命の延伸を目的に厚生労働省が行っている国民運動「スマート・ライフ・プロジェクト」の一環で、健康増進に優れた取り組みを行っている企業や団体、自治体を表彰する制度で、今年で7回目になる。

「介護予防・高齢者生活支援分野」厚生労働大臣 最優秀賞受賞 長崎県佐々町の取り組み
 「介護予防・高齢者生活支援分野」で最優秀賞となった長崎県佐々町は高齢化が進行。平成18年に地域包括支援センターを設置したが、要介護認定率の上昇には歯止めがかからず、介護保険料が県内で一番高い状況にあった。

 この状況を打開するため、『「住み慣れた地域でいつまでも暮らし続けたい!」そんな願いを地域で支えることによって安心して過ごせる佐々町』というビジョンを掲げ、介護保険サービスの在り方や利用について、地域住民と共に考えながら見直しを推進。

 介護保険の給付だけでは高齢者が安心して生活するのは難しいと考え、地域の支え合いから介護予防へつながる「地域支援事業」の拡大と、全体を包む「地域力」の引き出しを行った。

 具体的には、「介護給付の適正な利用」と「介護予防を含む地域支援体制の確立」の二つを取り組みの柱とし、高齢者の自立支援を目指して住民主体の地域づくりを展開。それぞれ以下のような内容で取り組みを行った。

▼介護給付の適正な利用
①要介護認定新規申請時の事前点検の徹底
②要介護認定者でサービス利用のない方への訪問活動
③地域ケア会議における自立支援型ケアマネジメント支援・生活行為評価導入

▼介護予防を含む地域支援体制の確立
①75歳以前からの介護予防(身体機能維持・認知症予防・閉じこもり予防など)
・佐々町の介護保険制度の現状とビジョンを伝える出前講座の開催
・地区集会所を活用した介護予防活動の推進、介護予防ボランティアの育成
・団塊の世代を対象とした『地域デビュー講座』の開催
・総合福祉センターを活用した介護予防事業のメニューの拡大
②インフォーマルサービスの確立・推進
・「こんな支援があれば、まだ在宅でのひとり暮らし大丈夫!」というような支援体制の確立(見守り・生活支援など)
③認知症になっても安心して過ごせる地域づくり
・認知症サポーター養成、全町内会への展開
・町立診療所(もの忘れ外来)との密接な連携
④地域力の向上
・高齢者見守りネットワーク情報交換会(毎年全32 町内会で開催)
・地区割り担当制の導入
・住民主体の通いの場づくり

要介護認定率の減少、介護保険料の引き下げを達成
 このような取り組みを行った結果、医療・介護・福祉の各サービスが有機的に連携し、必要なときに必要なサービスが受けられる地域包括ケアシステムの構築ができている町として、県が定める「長崎県版地域包括ケアシステム構築評価基準」において評価を得た。

 また、平成22年からの取り組み開始以来、要介護認定率が21.5%から13.4%に減少し、平成30 年度からは介護保険料を6,070 円から5,726 円に引き下げることに成功した。

 報告書によると、介護保険制度に依存せず、住民と共に地域づくりを行ったおかげで、高齢者が明るく楽しく、生きがいを持って生活できる環境づくりが実現したという。このような成果が評価され、全国55の自治体、企業、団体の中から佐々町が最優秀賞に選ばれた。

「母子保健分野」厚生労働大臣 最優秀賞受賞 静岡県の取り組み
 厚生労働省は平成27年度から「健やか親子21(第2次)」を始め、すべての子どもが健やかに育つ社会の実現を目指し、取り組みを推進している。

 これに関連し、同年度から「健康寿命をのばそう!アワード」に「母子保健分野」を創設。妊産婦、子育て、思春期の子どもの健康に関わる活動を実施している企業や団体、自治体の各部門で募集を行ってきた。

 今回、最優秀に選ばれた「しずおかリトルベビーハンドブック」は静岡県内で、早産などによって小さく生まれた赤ちゃんと家族のための手帳として平成30年3月に製作。配布対象は出生体重が1,500g未満、もしくは体重に関わらず支援が必要な低出生体重児としている。

sizuoka handbook.jpg

 通常の母子手帳は満産期を前提に「成長の記録」のページなどが構成されているため、小さく生まれた赤ちゃんにとっては記録しづらい項目があるだけではなく、保護者の心理的な不安をあおる心配もあった。

 そのため静岡県では、支援団体「ポコアポコ」などの当事者団体と総合周産期母子医療センターの医師や看護師、行政機関が協力しあって、小さく生まれた赤ちゃんのための手帳を製作。母親目線で作成した、全国で初めての手帳となっている。

母親目線の工夫が好評
 例えば、月例単位で成長を記録するのではなく、子どもの細かな表情や動作を捉えた日を記録し、保護者が成長を喜べるように工夫したり、NICUでの様子や退院時に在宅ケアを必要とする場合の情報を記録したりしておくページなどを用意。出生体重が1500g未満だった子どものための発育曲線も掲載している。

 また、経験者のメッセージや家族会の情報を紹介するなどして、保護者の心理的不安に寄り添う配慮も行っている。

 同ブックは、県内の総合周産期母子医療センターや地域周産期母子医療センターなどで配布しているほか、電子ブックでも閲覧できる。

 利用者からは好評で、県外からも問い合わせが増加。今後は、市町の乳幼児健診や地域のかかりつけの小児科などでも当たり前のツールとして活用されることを目指し、さらなる普及と活用支援に取り組んでいくという。

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