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コンニャクの「セラミド」でアルツハイマー病を予防 原因物質が減少し認知機能が改善

 コンニャクに含まれる「セラミド」と呼ばれる脂質を摂取すると、脳内のアルツハイマー病の原因物質が減少し、認知機能が改善するという研究を、北海道大学が発表した。
 植物セラミドは、アルツハイマー病の原因物質を除去する神経細胞由来の「エクソソーム」の産生を促進するという。
アルツハイマー病の原因はアミロイドßペプチド
 アルツハイマー病は認知症の半数以上を占める神経変性疾患で、決定的な治療法はみつかっていない。認知症患者数は国内で500万人以上とされ、今後さらに増加するのは確実とみられている。

 「アミロイドßペプチド」は、アミロイドß前駆体タンパク質から切断されて産生される約40アミノ酸からなる生理的ペプチド。アルツハイマー病の発症原因のひとつは、アミロイドβペプチドが脳内に過剰に蓄積することだと考えられている。

 また最近の研究では、アミロイドβペプチドの蓄積はアルツハイマー病の発症の15年以上前から始まることが明らかになっている。その蓄積を抑制することが、アルツハイマー病の予防のための戦略のひとつとなっている。
アミロイドβペプチドの蓄積を抑制
 北海道大学の研究グループはこれまでに、アミロイドβペプチドが「エクソソーム」と呼ばれる細胞外小胞と結合することによって分解除去されることを明らかにしてきた。

 エクソソームは、さまざまな細胞から分泌される細胞外小胞。その大きさは、直径50~150ナノメートル程度(1ナノメートルは1メートルの10億分の1)。

 エクソソームは特定の分子を包含し、細胞間で受け渡すキャリアーの役割を担う。神経細胞由来のエクソソームは、表面膜の糖脂質でアミロイドβペプチドを捕捉し、グリア細胞に運搬することでその分解を促進させる。

 エクソソームの分泌を促進すれば、アルツハイマー病の原因になるアミロイドβペプチドの蓄積を抑制できる可能性がある。
コンニャクのセラミドがエクソソームの分泌を促進
 そこで研究グループは、エクソソームの分泌を促進させる分子の探索を行い、コンニャク芋に含まれる「セラミド」がその分泌を促進する作用をもつことを発見した。

 セラミドは脂質成分の一種で、細胞間にも含まれている。植物性セラミドは、水分子と結合する性質をもち、皮膚バリアの改善作用をもつことから、化粧品や美肌目的のサプリメント、飲料などに機能性食品素材としてよく利用されている。

 コンニャクは植物性セラミドが多く含まれる食品だ。研究チームは、脳内でアミロイドβペプチドが過剰発現するアルツハイマー病のマウスに、コンニャク芋から精製したセラミド(グルコシルセラミド)を1日1ミリグラムずつ、2週間続けて経口投与する実験を行った。
機能性食品や新薬の開発へ
 その結果、マウスの脳内の大脳皮質や海馬領域で、アミロイドβペプチドの濃度が低下することが分かった。また、セラミドを投与したマウスでは、炎症やシナプス障害の軽減も観察され、認知行動試験では短期記憶の回復もみられた。

 研究グループは「認知症予防を目的とした機能性食品や新薬の開発につながる可能性がある」と期待している。研究成果は英科学誌「サイエンティフィック リポーツ」に掲載された。

 研究は、北海道大学大学院先端生命科学研究院産業創出部門の五十嵐靖之招聘客員教授、湯山耕平特任准教授らの研究グループによるもの。
北海道大学大学院先端生命科学研究院
Plant sphingolipids promote extracellular vesicle release and alleviate amyloid-β pathologies in a mouse model of Alzheimer's disease(Scientific Reports 2019年11月15日)
[Terahata]
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