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人工知能(AI)を使い乳がんを早期発見 グーグルが医師をサポートするAIの開発に成功

 米国のグーグルは、乳がん検診で使われるマンモグラフィーの画像で、人工知能(AI)のシステムが、専門家より高い精度で乳がんを識別できたと発表した。医師による乳がんの早期発見をサポートするプログラムの早期実現を目指している。
マンモグラフィ検査の欠点を克服
 世界中の多くの女性が乳がんを発症している。米国では女性の8人に1人が生涯に乳がんを発症し、英国では英国では毎年5万5,000人以上が乳がんと診断されている。

 乳がんのスクリーニング検査としてもっとも一般的なのはマンモグラフィ検査だ。マンモグラフィは乳房専用のX線撮影装置のことで、乳がんの早期発見に欠かすことのできない画像診断法だ。

 しかし、マンモグラフィでは、脂肪が多いほど全体に黒っぽく写り、乳腺組織が多いほど白っぽく塊のように写る。そのため、高濃度乳腺では発見が難しくなるという欠点がある。

 米国と英国を合わせて毎年4,200万件以上の検査が実施され、マンモグラフィが広く使用されているにもかかわらず、乳がんの早期発見と診断は依然として課題となっている。

 マンモグラフィのX線画像を正確に判定するのは、専門家でも難しいケースがあり、偽陽性と偽陰性がもたらすおそれがある。そのため、乳がんの発見が遅れ、患者にも不必要なストレスを強い、数が限られている放射線科医の負担も大きい。
乳がんを早期発見 AIの判定精度が人を上回る
 そこでグーグルは、英国のインペリアル カレッジ ロンドンがん研究所およびロイヤル サリー カウンティー病院、米国のノースウェスタン大学と協力し、マンモグラフィ画像を正確に読みとり、乳がんを早期発見するAI(人工知能)の開発に取り組んでいる。

 このほど、開発した新しいAIにより、高い精度で、偽陽性や偽陰性も少なく、乳がんを発見するのに成功した。これにより、乳がん検診を行う放射線科医を潜在的にサポートするプログラムの実現が視野に入ってきた。

 AIモデルに、英国の7万6000人以上の女性と、米国の1万5000人以上の女性から、匿名化されたマンモグラフィ画像で構成されるデータセットにもとづくトレーニングにより、画像から乳がんの兆候を成果に発見する方法を学習させた。

 英国の2万5,000人以上の女性と米国の3,000人以上の女性のデータを用いて評価したところ、偽陽性が米国で5.7%、英国で1.2%、それぞれ減少することが明らかになった。偽陰性も米国で9.4%の、英国で2.7%、それぞれ減少した。
AIによる乳がんのスクリーニング検査に期待
 さらに、このAIモデルを医療システムにも適用できるかを確かめる試験も実施した。英国女性のデータのみでAIモデルをトレーニングし、米国女性のデータセットで評価した。その結果、偽陽性が3.5%、偽陰性が8.1%減少し、人間の専門家よりも優れており、一般の臨床にも適用できる可能性が示された。

 AIモデルに、患者の病歴や過去のマンモグラフィ検査の結果などのデータを与えなかった場合にも、人間の専門家よりも正確に画像を読み取ることが明らかになった。

 AIが放射線科医や他の医師にとってかわるわけではなく、最終的な診断は人間の医師が行うことに変わりはないが、新しいAIの技術の開発により、医師と患者の負担を大きく減らせると考えられている。

 AIモデルを使用した乳がんのスクリーニング検査は、精度と効率が高いだけでなく、患者の待ち時間やストレスも減らせると期待されている。

 グーグルは2017年には、リンパ節標本から転移性乳がんを正確に発見する研究の最初の成果を発表した。昨年は医師が病理スライドから乳がんをより迅速・正確に発見するのに役立つディープラーニングのアルゴリズムも開発した。

 近い将来に、AIにより乳がんを早期・正確に発見する新しい検査が行われるようになる可能性がある。開発のスピードは加速しており、そう遠くない未来に実現しそうだ。

Using AI to improve breast cancer screening(グーグル 2020年1月1日)
International evaluation of an AI system for breast cancer screening(Nature 2020年1月1日)
[Terahata]
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