ニュース

魚をよく食べる人ほど認知症の発症が少ない 日本食に認知症の予防効果 日本人1万3000人を調査

 魚をよく食べる人ほど認知症を発症するリスクが低いことが、日本人の高齢者約1万3000人を対象とした「大崎コホート研究」で明らかになった。
 同研究では日本食を多く摂っている人では認知症の発症が少ないことも明らかになっている。
魚を食べる日本食は優れている
 魚をよく食べる食事スタイルは健康的とする研究が世界中で発表されている。魚をよく食べる日本の食事スタイルは優れていると、世界的に評価が高い。

 青魚(イワシ、サバ、ニシン、サンマ)やマグロなどに多く含まれるn-3系不飽和脂肪酸には、体に良い効果があると注目されている。魚のn-3系不飽和脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)は、中性脂肪を下げ、血栓(血のかたまり)ができるのを防ぎ、動脈硬化を予防する働きをする。

 魚には、n-3系不飽和脂肪酸だけではなく、良質なタンパク質、ビタミンDやビタミンB、ミネラルも含まれている。日本が世界でトップの長寿国を誇る秘訣のひとつは、魚を中心とした健康的な日本食にあると考えられている。

 魚をよく食べる人ほど認知症を発症するリスクが低いことが、日本人の高齢者約1万3000人を対象とした研究で明らかになった。

関連情報
魚に認知症予防の効果が
 日本食を多く摂っている人では認知症の発症が少ないことは、東北大学の過去の研究で明らかになっている。日本食の特徴のひとつは、魚を豊富に食べることだ。

 魚を習慣的に食べることが、認知症の発生リスクを低下させる可能性が考えられるが、魚の摂取と認知症発生の関連を調査した前向きコホート研究はほとんどない。

 そこで東北大学の研究チームは、65歳以上の日本人を対象に、魚の摂取量とその後の認知症発症の関係を調べた。

 「大崎コホート研究」は、宮城県大崎保健所管内1市13町に居住する40~79歳の国民健康保険加入者を対象とした、1994年に開始されたコホート研究。東北大学が生活習慣に関する調査と、死亡やがんなどの罹患の状況に加えて、医療費などを追跡して調査している。

 研究チームは、「大崎コホート研究」に参加した65歳以上の市民のうち、条件を満たした1万3,102人を対象に調査した。
魚の摂取量が多いと認知症が16%減少
 「新鮮な魚介類(刺身・煮魚・焼き魚などで食べる)」と「かまぼこ・ちくわ」を「魚」と定義し、魚摂取頻度について調べた。

 魚を食べる頻度を「ほとんど食べない」から「ほぼ毎日」まで5段階に振り分けた。各群の1日当たりの魚の摂取量の平均はそれぞれ、20.4g、44.3g、57.7g、96.9gだった。

 5.7年間の追跡期間に1,118人が認知症を発症した。解析した結果、魚の摂取量が多いほど認知症リスクは低いことが明らかになった。

 魚の摂取量がもっとも少ない群に比べ、摂取量が増えるにつれ、認知症発症リスクは0.90倍、0.85倍、0.84倍と低下していった。

 こうした傾向は、追跡開始から2年以内という早い段階で認知症と診断された患者や、研究に参加した時点で認知機能が低下していた患者を除外しても変わらなかった。

 「魚を日常的に摂取することで、認知症の予防効果を得られる可能性がある」と、研究者は述べている。
日本食に認知症の予防効果 認知症が20%減少
 「大崎コホート研究」の過去の研究では、日本食を多く摂っている人では認知症の発症が少ないことも明らかになっている。

 東北大学の研究チームは、大崎コホート研究に参加した65歳以上の高齢者1万4,402人を5.7年間追跡して調査した。期間中に9.0%が認知症を発症した。

 研究チームは、食物の摂取頻度について39項目の質問をして、食事を「日本食」「動物性食品」「高乳製品」の3つのパターンに分けた。

 日本食パターンは、魚・野菜・海草・漬物・大豆製品・きのこ・いも・果物などを多く摂取しており、動物性食品パターンは肉類を多く摂取していた。それぞれの食事パターンを点数化し、4分位によって4グループに分け、認知症発生との関連を調べた。

 その結果、日本食パターンの度合いが高い高齢者では認知症発生リスクが20%低下していた。一方、動物性食品パターンと高乳製品パターンでは、認知症発生との有意な関連がみられなかった。

 日本食の特徴は、▼野菜・果物・豆類などの植物性食品をよく食べる、▼新鮮な魚介類をよく食べることなど。日本食には、高血圧、糖尿病、脂質異常症の予防・改善の効果もあることが報告されている。どんな食事をすると認知症を予防できる可能性があるか、今後の研究に期待がかかる。

東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野

Fish consumption and risk of incident dementia in elderly Japanese: the Ohsaki cohort 2006 study(British Journal of Nutrition 2019年9月3日)

Dietary Patterns and Incident Dementia in Elderly Japanese: The Ohsaki Cohort 2006 Study(journals of gerontology 2016年6月29日)
[Terahata]

「健診・検診」に関するニュース

2023年02月24日
がん検診発見例が減り早期がんも減少傾向だが、現時点での評価は困難
国立がん研究センター「院内がん登録全国集計」速報値より
2023年01月20日
保健師など保健衛生に関わる方必携の手帳「2023年版保健指導ノート」
2023年01月17日
【特定健診】40歳以上の半数は生活習慣病かその予備群 健診受診率の引き上げと、働く人のヘルスリテラシーを向上することが課題に
2023年01月16日
わずか「1分間の運動」でも健康効果が 忙しい人も仕事や家事の合間に簡単な運動を行うと寿命を延ばせる
2023年01月05日
特定保健指導は効果があった! 肥満指標はわずかに改善 血糖や中性脂肪も 582万人のデータを解析
2023年01月04日
【もっとも読まれたニュース トップ10】変化の年だった2022年 保健指導リソースガイド
2022年12月20日
健診で「腎臓病」を指摘されても、医療機関で診断を受けたのは5年以上も後 理解促進と対話の場が必要
2022年12月15日
日本産業保健師会が「新任期産業保健師養成研修」「産業保健師リーダー養成研修」を開催 
参加型研修を重視し、キャリアラダーに基づいた産業保健師のための研修会
2022年12月12日
13種類のがんを1回の血液検査で発見できる次世代診断システム 「がんの種類」を高精度で区別 がん研究センターなど
2022年12月06日
40歳未満の健診情報もマイナポータルで確認・閲覧可能へ
若年世代からの生活習慣病予防・健康づくりを
アルコールと保健指導

トピックス・レポート

無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(毎週木曜日・約11,000通)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶