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夫が高血圧や脂質異常症だと、妻も同じ生活習慣病になりやすい 日本人の夫婦8万7,000組を調査
2020年08月04日

夫が高血圧、2型糖尿病、脂質異常症で治療を受けている妻は、同じ病気で治療を受けるようになる割合が1.5~2.6倍高いことが、筑波大学の研究で明らかになった。夫婦は同じ生活習慣病を共有しやすいことが示された。
「家族が一緒に生活を改善したり、健康診断を受けることが重要です」と、研究者は述べている。
「家族が一緒に生活を改善したり、健康診断を受けることが重要です」と、研究者は述べている。
夫婦は同じ生活スタイルを共有している
研究は、筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野/ヘルスサービス開発研究センターの田宮菜奈子教授、杉山雄大准教授、渡邊多永子元助教(現厚生労働省)らによるの。研究成果は、「BMJ Open」でオンライン公開された。
多くの夫婦は遺伝的つながりがないが、同居して同じ食事をとるなど、飲酒や飲食、喫煙、運動など、互いの生活スタイルに影響を与え合う。
このように生活が似通うことで、配偶者が生活習慣病をもつ人は、そうでない人と比べて、配偶者と同じ生活習慣病を発症するリスクが高いと考えられる。
そこで筑波大学の研究グループは、2016年国民生活基礎調査のデータを2次利用し、ともに40歳以上の8万6,941組の夫婦を対象に分析した。
夫婦の居住場所や経済状況、妻の年齢・学歴・飲酒・喫煙・他の疾患での治療の有無の影響を調整した上で比較した。
夫婦は同じ生活習慣病になりやすい
それぞれの疾患(高血圧、2型糖尿病、脂質異常症)について、夫の各疾患の治療の有無別に、妻が同じ病気で治療を受けている割合を算出し、カイ二乗検定を使用して割合に違いがあるかを検討した。
その結果、夫が高血圧、糖尿病、脂質異常症で治療を受けている妻は、夫がその病気で治療を受けていない妻と比べて、同じ病気で治療を受けている割合が高いことが示された。
さらに、多変量ロジスティック回帰分析を実施し、夫婦の居住場所や経済状況、妻の年齢・学歴・飲酒・喫煙・他の疾患での治療の有無の影響を調整した上で、夫が各疾患で治療を受けている場合に、妻が同じ病気で治療を受ける相対リスクを推定した。
その結果、夫が高血圧、糖尿病、脂質異常症で治療を受けていると、妻が同じ病気で治療を受けるリスクは、それぞれ1.8倍、1.5倍、2.6倍に上昇することが明らかになった。
夫の治療の有無別にみた、妻が治療を受けている割合

夫が各疾患で治療を受けている場合の、妻が同じ病気で治療を受ける相対リスク

出典:筑波大学、2020年
家族がいっしょに食事や運動を改善し、健診を受けることが大切
「臨床現場で、家族歴として患者の血縁者の疾患について聴取することの重要性は知られています。しかし、この研究から、生活習慣病の予防、早期発見、悪化防止のためには、血縁のない家族にも気を配る必要性が示されました」と、研究者を述べている。
「生活習慣病の予防、早期発見、悪化防止のためには、患者に加え、患者の家族にも気を配る必要性があります。さらに、家族がともに健康でいるために、いっしょに食事や運動などの生活を改善したり、健康診断を受けたりすることは、多くの人々にとって重要と思われます」と、指摘している。
筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野Concordance of Hypertension, Diabetes, and Dyslipidemia in Married Couples: Cross Sectional Study using Nationwide Survey Data in Japan(BMJ Open 2020年7月28日)
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